EICネット
前のページへ戻る

環境さんぽ道

様々な分野でご活躍されている方々の環境にまつわるエッセイコーナーです。
4人のエッセイスト(草田照子、幡野保裕、中澤弥子、下田明宏)が1年間、毎月交替して登場します。

トップページへ

グローバルメニュー
  • 国内ニュース
  • 海外ニュース
  • イベント情報
  • 環境Q&A
  • 機関情報
  • 環境リンク集
  • 環境用語集
  • ライブラリ
  • 森づくり

環境さんぽ道

様々な分野でご活躍されている方々の環境にまつわるエッセイをご紹介するコーナーです。

No.054

Issued: 2016.06.10

ミッドウェー環礁で見たもの

幡野 保裕(はたの やすひろ)さん

幡野 保裕(はたの やすひろ)さん
 1944年 北京生まれ。
 東京、横浜で幼年時代を過ごし、その後尼崎へ。高校時代は信州・長野で柔道の県代表インターハイ選手として活躍。
 東京商船大学卒業後、'68年日本郵船(株)へ入社。以来14年間の海上勤務ではコンテナ船、オイルタンカー、バルカー船の経験を積む。また13年間の陸上勤務では主に船員の教育、労働管理、人事管理を担当。'89年に船長に昇進。飛鳥には、'95年4月より副船長として乗船後、'95年6月より2003年3月まで飛鳥船長を務める。
 その間、4回の世界一周クルーズを指揮した。

 船乗りである私は海が大好きです。
 世界中の美しい海を見て、なんども魅了されました。
 希望や安らぎをもらった、凪の海。不屈の精神や負けじ魂を育ててくれたのは、時化の海でした。

 温室効果ガスによる地球温暖化、プラスチックによる海洋汚染が話題になる昨今ですが、海が好きな故に、綺麗な海を守らなければの思いは人一倍です。
 地球に海が無くなり、クルーズと言うと宇宙空間をシャトルで旅するしかない、そんな時代になっては貰いたくはない。宇宙クルーズの時代になってもシャトルの窓から青い綺麗な水の惑星地球を眺めたいものであり、水の惑星地球の海を航くクルーズは何時までも残って居て欲しのです。

 自分の見た海の中で一番気掛かりになったのは、海を漂うプラスチックや発泡スチロール、ビニール袋です。
 日本の沿岸も彼方此方の海岸で、漂着したプラスチック類が散見されます。夏なのに雪が降った様な海岸。発泡スチロールの残骸が流れ着いているのです。潮流の関係で、堆積する場所には溜まってしまうのでしょう。
 リゾート地や観光名所の海岸では、商業的にまたはボランテア活動による清掃で美観が保たれますが、人手の入りにくい海岸線では、漂流する塵で汚された岩場や砂浜が散見されます。

 世界の海を周って一番衝撃的だったのは、幸運にも入港できたミッドウェー環礁に漂着するプラスチック製品。流れ着くその量と、そこに生息する生き物に与える影響に息を呑みました。
 ミッドウェー環礁が一般に公開された期間の1997年から2002年の僅かな間に、幸運にも2度、1990年7月10日と2001年6月17日、1回目はハワイグランドクルーズで、2回目は北太平洋グランドクルーズで寄港地として入港できたのです。
 この環礁に、奇跡的にも飛鳥が2度も入港できた経緯をお話しすると長くなるのでまたの機会にしますが、戦後この環礁に入港できた客船は飛鳥だけで、飛鳥伝説の一つになっています。
 この機会を作って下さった、関係者の皆様(FWS(米国魚類野生生物局)、MPC(ミッドウェー・フェニックス・カンパニー)、NPO法人OWS(オセアニック・ワイルドライフ・ソサイアティー))に改めて感謝いたします。
 もちろんご乗船頂いたお客様にも!

ミッドウェー環礁に接近する飛鳥(撮影 中村庸夫氏)
ミッドウェー環礁に接近する飛鳥(撮影 中村庸夫氏)

ミッドウェー環礁に入る飛鳥(撮影 中村庸夫氏)
ミッドウェー環礁に入る飛鳥(撮影 中村庸夫氏)


 現在は環境保護のために空港も港も一般には開放されていません。
 塵整理のボランティアや生態調査の為にオープンされる事はある様です。
 別世界のように美しい青い海と白い砂浜、海岸にはハワイアンモンクシールがのんびりと寝そべり、海にはウミガメやイルカが泳いでいます。
 環礁内の陸地は小アホードリのサンクチャリーで、約80万羽がここで子育てをします。白アジサシや熱帯赤尾鳥、グンカン鳥で溢れています。
 海鳥17種類、渡り鳥約50種、植物260種、465種、魚類250種、ウミガメ2種、まさに生き物たちの楽園です。

 この太平洋の真っただ中の環礁は、太平洋を漂うゴミの最終的な集積場になっているのです。そのゴミ量は年間20トンになり、孤立した環境下で処理する費用は莫大と聞いています。
 レンジャーが案内してくれるイースタン島のエコツアーでは、食品チューブのキャップや使い捨てライター等々沢山のプラスチック製品を飲み込んで死んでしまったアホードリの雛の無残な死骸を、胃に残るプラスチック類を見せてくれます。
 これら海を漂流するプラスチック類は自然の力では浄化できません。永遠に地球上に存在し続けるのです。最近の調査では自然の外圧で細かく砕けたマイクロ・プラスチックが魚や海洋生物の体内に、巡り巡って人類の体内に入り、地球の生態系に悪影響を及ぼす事が判ってきたようです。

 この綺麗な水の惑星を、海を大切に守って行くのは人類の使命です。プラスチックがゴミとして地球を汚さないために、人間一人一人が努力することが必要です。
 まずは、商店やスパーマーケットで簡単に手渡されるビニール袋、便利だからと言って簡単に消費するのはやめましょう。商品は紙で包んで、紙袋や、マイバックに。
 そんな出来ることから皆で始め、地球上から無駄なプラスチックの使用をなくしたいと考えます。
 キャップは器から外れないように、使い捨てのライターは使用しない様にしたいものです。

ミッドウェー環礁空撮
ミッドウェー環礁空撮

巣立ち前の小アホードリの雛達
巣立ち前の小アホードリの雛達


小アホードリの親鳥と雛
小アホードリの親鳥と雛

ビーチに寝そべるハワイアンモンクシール
ビーチに寝そべるハワイアンモンクシール


ミッドウェー環礁内を泳ぐイルカの群れ
ミッドウェー環礁内を泳ぐイルカの群れ

白アジサシの雛
白アジサシの雛

小アホードリの死骸を説明するレンジャー
小アホードリの死骸を説明するレンジャー

海流に乗ってミッドウェー環礁に漂着する塵
海流に乗ってミッドウェー環礁に漂着する塵



(記事:幡野 保裕、写真のクレジットのないものは筆者撮影)