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環境Q&A

焼畑農業とマングローブ 

登録日: 2007年01月16日 最終回答日:2007年01月22日 地球環境 森林の減少

No.20447 2007-01-16 02:25:56 マングローブ

初心者の質問で申し訳ありません。
今、東南アジアの焼畑農業とマングローブの関係について調べています。
私は、焼き畑農業によって荒廃地ができ、陸からNやPなどの栄養塩が川を介してマングローブ域に以前より多く供給されるのではないかと考えており、その影響でマングローブがどのように変化するかを知りたいのです。
マングローブの成長には栄養塩が必要でありますが、海からの供給量としてはかなり少ない、つまり焼畑の影響から、陸からの供給が多くなり、その結果マングローブは増加すると考えております(かなり初心者的な考えで申し訳ありません。)。
この初心者の私に、どうかアドバイス、もしくは論文などの情報をいただけませんでしょうか。
よろしくお願いいたします。

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No.20451 【A-1】

Re:焼畑農業とマングローブ

2007-01-16 16:32:00 きら

 きらです。
 私はマングローブや生態系の専門家では、ありませんが、一時期、沖縄に住み、実際に多くのマングローブ林を見てきました。
 私のつたない経験からすると、次のように考えます。

 ご推察のように、焼き畑農業を行うことにより荒廃地からNやPなどの栄養塩が川を介してマングローブ域に運ばれることは起こりえるであろうと思います。

 ただしそこから先の「マングローブが増加する」というのは、考えにくいのではないかと思います。

 理由−1
 荒廃地から運ばれてきたNやPを100%マングローブが吸収できるわけではなく、海へ流出してしまいます。
 東南アジアでは、スコールや台風のように、一度に大量の雨が降り、表土を瞬時に海へ押し流してしまいます。(沖縄の赤土汚染を思い浮かべてみてください)
 
 理由−2
 マングローブの生育している土壌は、上流の森林から運ばれてきた朽ち木や枯れ枝・枯れ葉が堆積し、これらが徐々に分解され、土中のNやPとなったもので、表土中に含まれているNやPが沈降したものは少ないと思います。
 上流の森林を開拓したことにより、逆に、朽ち木や枯れ枝・枯れ葉が少なくなるのではないでしょうか。

 理由−3
 マングローブは比較的、水深の浅い場所に生育します。マングローブが生育するためには、NやPの量よりも、水深の方が重要度が高いといえるのではないでしょうか。
 森林を伐採した裸地の表土が、降雨で海岸に運ばれ、そこで堆積すると水深が浅くなり、マングローブの生育に適した場所となります。
 その結果、マングローブが増加するというのは、あり得るかもしれません。

 最後に、沖縄にある国際マングローブ生態系協会のホームページを紹介しておきます。
 http://www.jaicaf.or.jp/ngo/database/k07.htm

 以上、ご参考までに


回答に対するお礼・補足

貴重なご意見を頂きありがとうございます。
土砂の移入に伴って栄養塩が流れるというよりも、海に流れ込むと考えたほうが一般的であると私も思いました。また、水深の件は何も考えていなかったので、ぜひ参考にさせていただき、論文などを探して生きたいと思います。
初心者の私に貴重なご意見を頂き、ありがとうございました。

No.20478 【A-2】

Re:焼畑農業とマングローブ

2007-01-17 13:40:13 環くん

あなたの考えておられる理論には、2つの問題点があると思います。

1つは、野外での現象は、原因1つに対して結果が1つ生じる、というような実験系の考え方は通用しないということです。野外での現象、そしてそれが生じる原因をとらえる難しさはここにあります。つまり、
@ある河川では焼き畑によって栄養塩の流出が増えていた
A実験室では栄養塩を増やすとマングローブの成長量は増加していた
ということが確かめられていたとしても、現実のマングローブ林は、その他にも伐採、温暖化、水質汚染などの影響を受けているわけです。これらの負の影響が、栄養塩の増加による成長量を上回っていた場合、現実のマングローブ林を観察しても、栄養塩の増加とマングローブ林の増加の相関は見られないことになります。

2つめの問題は、現象のスケール(あるいはレベル)がごっちゃになっていることです。あるマングローブの一種(マングローブとは特定の種を指すものではなく、熱帯の汽水域に生える植物種の総称であることはご承知ですね?)は、もしかすると焼き畑で流出した栄養塩によって成長量が増加しているかもしれません。しかし、このことと、「マングローブ林」という群落のバイオマスや面積が増えるかどうかは、全く別のレベルの現象です。

こうしたことを踏まえ、自分の仮説をもっと整理すれば、どういう論文や書籍を探せばよいか見えてくると思います。

回答に対するお礼・補足

問題点を指摘してくださり、ありがとうございます。
自然現象を把握しようとする場合、結果1つに対して原因がいくつもあることがほとんどであります。伐採などの負の影響と栄養塩の正の影響のバランスの上に成り立っていることも考えておりました。
しかし、伐採や温暖化が起こっていないだろうとされている1800年代のことを推察する場合は、正の影響の方が強いと安易に考えてしまっていた自分も恥じなければと感じております。
また、マングローブは汽水域に生える植物群のことなのは知っておりますが、1つの地域に生える種はそんなに異なるのでしょうか?恥ずかしいことながら、水質などの環境がそこまで変わらない海域にいくつもの種が混在していない(もしくは混在していても、ほとんどが同じ種になる)と考えておりました。どうかご教授のほどよろしくお願いいたします。

No.20596 【A-3】

Re:焼畑農業とマングローブ

2007-01-22 11:16:27 きらです

 再び、きらです。

 私の持っている資料には、「日本のマングローブ湿地では、オヒルギ、ヤエヤマヒルギ、メヒルギ、ヒルギダマシ、ニッパヤシ、ヒルギモドキ、マヤプシキの7種類」とあります。(南の島の自然観察 沖縄の身近な生き物と友達になろう 東海大学出版)

 また、同じ汽水域でも、海に近い側(塩分濃度が高い側)から陸地側(塩分濃度が低い側)に向かって、ヒルギダマシ→マヤプシキ→ヤエヤマヒルギ→メヒルギの順にマングローブ林を構成することが多いようです。
 さらにこの樹林の内陸側にサキスマスオウノキ、アダン等があります。
 
 したがって、「海域にいくつもの種が混在」しているわけではなく、「1つの地域に生える種」が異なるのは、「水質などの環境」というよりも、塩分濃度の微妙な違いにより、生育場所が分かれています。

 実際に現地を見れば簡単なことですが、いきなり、東南アジアまで行くのが大変だというのであれば、一度、沖縄のマングローブ林を見に行ってみてはどうでしょうか?
 その気になれば、日帰りでも、できないことはないでしょうが、1泊2日すれば充分に可能かと思います。

回答に対するお礼・補足

再び、貴重な情報を頂きありがとうございます。
実は、東南アジアには海洋調査のため行ったことがあります。しかし、そのときは海底調査であったために、マングローブにあまり注目しておりませんでした。本当に恥ずかしい話なのですが、今となってどのような種があるのかを見ておけばよかったと後悔しております。
きら様のおかげで色々調べているうちに塩分によって分布が異なるということを知りました。ということは、環様が言っているように陸から海までの間に様々な種の群があるということになり、一概に栄養塩とマングローブの関係を表すのが難しいことがわかりました。
本当に色々調べるきっかけを頂きありがとうございました。
今後、一度沖縄のマングローブを見に行くなど、更に調べていくことにします。また、質問するかもしれませんが、そのときもどうぞよろしくお願いいたします。

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