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No.256

Issued: 2016.10.12

PCB特別措置法の改正による高濃度PCB廃棄物の確実な処分に向けて(環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課)

目次
PCB特別措置法の制定経緯
PCB特別措置法の改正の必要性
PCB特別措置法の改正のポイント

【図1】ポリ塩化ビフェニル(PCB)使用製品及びPCB廃棄物の期限内処理に向けて
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 人の健康及び生活環境に被害を生ずるおそれがあるポリ塩化ビフェニル(PCB)。PCBが含まれているPCB廃棄物の処理は、一日も早く完了させなければならない喫緊の課題です。現在、高濃度PCB廃棄物は、全国5カ所の中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)の処理施設で処理が進められていますが、定められた期限を遵守して、一日も早く高濃度PCB廃棄物の処理を完了させるため、PCB特別措置法を改正して、制度的な措置を講じることとしました。

PCB特別措置法の制定経緯

 ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、化学的に安定している、熱により分解しにくい、絶縁性が良い等の性質を有する物質であり、我が国では、熱媒体、変圧器及びコンデンサー用の絶縁油、感圧複写紙等幅広い分野で使用されていました。しかし、昭和43年に、製造過程において熱媒体として使用されたPCBが食用油に混入し、健康被害を発生させた「カネミ油症事件」が起き、社会問題となりました。これを受けて、昭和47年からは、PCBの新たな製造はなくなり、さらに、昭和48年10月に制定された化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づき、昭和49年6月からは、その製造、輸入等が事実上禁止となりました。
 その後、通商産業省(当時)の指導の下、(財)電機ピーシービー処理協会(後に(財)電気絶縁物処理協会に改称、平成13年11月解散)が中心となってPCB廃棄物の処理体制を構築すべく努力がなされましたが、処理施設建設候補地の地方公共団体、周辺住民の理解が得られないなどの理由で、約30年間にわたり処理体制の構築はできませんでした。処分の目途が立たないまま長期にわたる保管が継続する中で、廃棄物の紛失等が発生し、環境汚染の進行が懸念される状況となってしまいました。
 このような状況において、PCBによる環境汚染を防止し、将来にわたって国民の健康を保護し、生活環境の保全を図るため、平成13年7月にポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(以下「PCB特別措置法」という。)が制定されました。PCB特別措置法の下で、環境省は、環境事業団(当時。現・中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)。)を活用して高濃度PCB廃棄物の処理施設の整備に着手し、地元地方公共団体等の協力や地域住民の理解を得て、平成16年の北九州事業を皮切りに、豊田事業(平成17年)、東京事業(平成17年)、大阪事業(平成18年)、北海道事業(平成20年)の操業を開始し、順次処理を進めてきました。また、蛍光灯安定器等の処理も、平成21年に北九州事業、平成25年に北海道事業において開始されました。

PCB(ポリ塩化ビフェニル)とは
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PCB廃棄物の経緯(1)
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PCB廃棄物の経緯(2)
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JESCOが設置している拠点的広域処理施設
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PCB特別措置法の改正の必要性

計画的処理完了期限
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 当初、処理に係る事業の完了は平成28年までと予定されていました。しかしながら、世界でも類を見ない大規模な化学処理方式による高濃度PCB廃棄物の処理は、作業者に係る安全対策等、処理開始後に明らかとなった課題への対応等により、当初予定していた期限までの事業完了が困難となってしまいました。
 そこで、平成24年12月にPCB特別措置法施行令が改正され、PCB廃棄物の保管事業者にPCB廃棄物の処理を義務付けた期間が平成39年3月末日までに延長されました。その上で、平成26年6月にはPCB特別措置法に基づき環境大臣が定めるPCB廃棄物処理基本計画が改正され、保管事業者がJESCOに対し処分委託を行う期限として、計画的処理完了期限が設けられました。計画的処理完了期限は、最も早いもので平成30年度末、最も遅いものでも平成35年度末とされています。
 この期限は、立地地域の関係者の御理解と御協力を得て設定されたものであり、必ず遵守しなければならないものですが、残された時間は長くありません。しかしながら、高濃度PCB廃棄物の処分をJESCOにまだ委託していない事業者や、現在もなお高濃度PCB使用製品を使用している事業者も存在し、期限内処理の達成はこのままでは容易ではありません。このため、この期限を遵守して一日でも早く確実に処理を完了するために必要な制度的措置を講ずることとしたのが、今回のPCB特別措置法改正です。


PCB特別措置法の改正のポイント

 まず、PCB廃棄物の確実かつ適正な処理に向けて、政府一丸となって取り組むため、従来環境大臣が定めることとしていたPCB廃棄物処理基本計画を閣議決定により定めることとしました。
 次に、高濃度PCB廃棄物の保管事業者に対し、計画的処理完了期限より前にその高濃度PCB廃棄物を処分することを義務付け、義務違反者に対しては、都道府県知事がその処分を命ずることができることとしました。さらに、現在もなお使用中の高濃度PCB使用製品について、その所有事業者に対し、計画的処理完了期限よりも前に廃棄することを義務付けることとしました。
 また、未だ都道府県知事に保管の届出がなされていない高濃度PCB廃棄物や、使用中の高濃度PCB使用製品について、その全容を把握するため、都道府県知事による報告徴収や立入検査の対象に、これらを保管又は所有している疑いのある事業者を加えることとしました。
 そして、高濃度PCB廃棄物の処分の義務を負う事業者が不明である等の場合に、都道府県知事が、高濃度PCB廃棄物の処分の代執行ができることとしました。
 PCB特別措置法の改正法案は、平成28年3月1日に閣議決定され、国会審議を経て、同年5月2日に公布されました。改正法は、同年8月1日に施行されました。

改正法の措置のフローまとめ(赤字が今回の追加的措置)
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期限内の処理完了に向けて必要なステップと主な改正事項
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期限内の処理完了に向けて必要なステップと主な改正事項
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(記事・図版:環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課)

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