環境庁(当時)の職員から大学教授へと華麗な転身を果たしたH教授が、環境にかかわる内外のタイムリーなできごとを、環境行政マンとして過ごしてきた経験に即して解説します。
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第5講 脱ダム、自然再生、環境教育 三題噺
第4講「或る港湾埋立の教訓」
第3講「Hキョージュ、水フォーラムを論じ、
ダイオキシンを語る」
第2講「Hキョージュ、循環型社会形成推進基本計画案を論じ、
環境アセスメントの意味を問う」
第1講「環境行政、2002年の総括と2003年の展望」
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No. 第4講「或る港湾埋立の教訓」
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Issued: 2003.05.01
H教授の環境行政時評 (第4講 その3)
或る港湾埋立の教訓

H教授―わかった、じゃ、今回はひとつだけ。
数年前のことだけど、瀬戸内海で、ある県が港湾の拡張で大規模な埋立計画を構想した。そこは国立公園のすぐそばなんだけど、国立公園には入っていない。でも、万葉集でも知られた国立公園内の展望台からの景観は台無しになっちゃうんだ。
県は地元住民をツンボ桟敷に置いたまま計画を進め、港湾計画の変更を地方港湾審議会で通しちゃった。その時点ではじめて計画を公表。それを知った地元住民は怒って激しい反対運動が起きた。

Aさん―その県の環境部局はなにしてたんですか。

H教授―計画の初期の段階で港湾部局と大喧嘩したらしい。で、最後は環境部局は一切責任を持てないから勝手にしろって、投げ出しちゃったという話だ。
もっとも埋め立て材が建設廃材で、処分場不足に悩む環境部局の廃棄物担当課は賛成という内部事情もあったらしいんだけど。結局、港湾部局が知事を説得してゴーサインが出されたらしいよ。

Aさん―へえ、で、それから?

H教授―港湾計画変更は地方港湾審議会のあと国の港湾審議会に諮られる。環境庁、つまり、現・環境省はそのメンバーなんだ。この話は環境庁時代の話だから環境庁で以下統一するよ。
通常、こういう案件は地方港湾審議会に諮られる前に、環境庁と非公式の事前調整を行うんだけど、このケースの場合一切なしで突っ走った。しかも、場所が瀬戸内海だから「埋立ての基本方針」に適合するかどうかっていう問題がある【4】

Aさん―話の腰を折るようですが、「埋立ての基本方針」ってなんですか?

H教授―瀬戸内海環境保全特別措置法では、埋め立てに関して瀬戸内海の特殊性に配慮しなければならないとし、具体的なことは審議会で審議されるとしているんだ。
これを受けて、審議会が「埋立ての基本方針」というのを定めているんだが、これには前文で「埋立ては厳に抑制すべきであり」と埋立抑制の理念を謳い、本文で「やむをえず埋立てを認める場合の方針」がごちゃごちゃと書いてある。もっともやむをえず認める場合ってどんな場合かってのは一言も書いてないんだけど。
【4】 瀬戸内海環境保全特別措置法と埋立の基本方針
瀬戸内海環境保全特別措置法は、1973(昭和48)年に制定された「瀬戸内海環境保全臨時措置法」(議員立法)が、1978(昭和53)年に恒久法化されたもの。
瀬戸内海の環境保全上有効な施策を推進するために、国による瀬戸内海環境保全基本計画とそれに基づく関係府県による府県保全計画の策定、特定施設の設置及び変更にかかわる規制、水質汚濁防止法に基づく総量削減基本方針の策定による汚濁負荷量の総量の削減、関係府県のよる自然海浜保全地区の指定による対策の促進、また埋立てについての特別の配慮 などを定めている。
関係府県は、瀬戸内海沿岸の京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、福岡県、大分県(2府11県)。
埋立てについての特別の配慮事項として、府県知事は公有水面埋立免許に当たり、「埋立ての基本方針」(昭和49年5月瀬戸内海環境保全審議会答申)に照らし、環境保全上から特別の配慮をしなければならないとされている。
「埋立の基本方針」の概要(財団法人国際エメックスセンターHPより)
せとうちねっと 瀬戸内海環境保全特別措置法に基づく対策
旧運輸省審議会「港湾審議会」
  法施行後の埋立状況
昭和48年に施行された瀬戸内海環境保全特別措置法を契機に、埋立事業の許認可面積の伸びが鈍ってきていることが、各年面積の棒グラフの伸びや、累積面積の折れ線の傾きなどから読みとれる。
  Internet Explorer5.0以上では、グラフの上にマウスを乗せると期間ごとの免許事業の場所・年度・面積が表示される(ただし、法の施行後、かつ50ha以上の埋立事業)。
昭和50年〜52年免許の埋立事業 昭和53年〜59年免許の埋立事業 昭和60年〜63年免許の埋立事業 平成元年〜8年免許の埋立事業 平成9年〜13年免許の埋立事業

Aさん―なんですか、そんなのおかしいじゃないですか。

H教授―おかしいたって、そうなっているんだから、仕方がない。
だから瀬戸内海では、まずこの前文の「やむをえず埋立てを認める場合」かどうかで開発部局と環境部局、場合によっては環境庁とのチャンチャンバラバラがはじまる。それを無視して突っ走ったもんだから環境庁は怒った。
反対運動の激化のなかで、環境庁は港湾審議会の場で瀬戸内海環境保全特別措置法に違背する疑いがあり、景観保全の観点から問題ありって発言。
港湾計画の変更は埋立計画だけじゃなかったから、結局、「おおむね適当である。ただし、埋立てに関しては景観保全の点からさらに検討されたい」ってなっちゃった。で、県は急遽「景観検討委員会」なるものを設置することにした。

Aさん―ふーん、で、センセイはどういう立場でかかわってたんですか?

H教授―ぼくは、当時すでに役所を辞して、大学に籍を置いていた。で、その検討会の委員として委嘱されたんだ。どうだい、ぼくも学識者の一人ということになったんだぜ、エヘン。

Aさん―へえ、センセイが学識者ねえ。楽色者のまちがいじゃないんですか。

H教授―え?

Aさん―いや、なんでもないです。
でも、どうしてセンセイがねえ。ひょっとして環境庁から県に圧力でもかかったんじゃないですか?

H教授―(答えずに)外部評価、内部評価って聞いたことあるだろう?
外部評価がいいというのが当たり前になってるし、そのとおりだと思うけど、外部評価ったって、その外部評価をやるメンバーをだれがどうして選ぶのかが問題だよねえ。
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