Aさん―ふうん、この講義でも何度か淀川流域委員会の話を取り上げていますけど【6】、足元でも似たような話があったんだ。
H教授―それだけじゃないんだ。河川法改正で環境重視と住民参加を強調したんだけど、M川の場合は「河川整備基本方針」がまだできていないから、具体的な整備のための「河川整備計画」がつくれないんだ。でも予算もあるし必要な整備はしなきゃいけない。
Aさん―河川整備計画ができるまでの間は今まで通り、河川管理者が勝手に決めて整備するんですね。
H教授―いや、それがM川のS市区間を管理する県のS土木事務所は、「M川上流ルネサンス懇談会」という、NGOや川に関心のある住民を集めた組織を立ち上げたんだ。そこの意見を踏まえて、ちょっとした工夫とアイデアで親水性と環境保全に資する事業を実施するという。ミニ自然再生事業もこの懇談会の意見を取り入れてやりたいと言っている。その懇談会は公開するし、傍聴者も自由に意見が言えるようにすると言う。
つまり法定の河川整備基本方針や河川整備計画ができる前に、市域レベルで有識者と関係住民の意見を集約して、事実上の河川整備計画的なものをつくっちゃって、それにより整備を実施しようとするものなんだ。
Aさん―へえ、随分先進的な試みなんですね。S土木事務所の独断でやったんですか。
H教授―上の指示のもとでやったかどうかは知らないが、少なくとも上の了解を取り付けてはいると思うよ。
そして、この背後には若い熱心な研究者の働きかけがあったんだ。
こういう試みがどこでもなされるようになると、随分風通しはよくなると思うよ。
Aさん―S市役所はその懇談会に参加してないんですか。