Aさん―センセイは、何かご意見はありますか。
H教授―さっき、「気候変動は待ったなし、しかもその影響はまず途上国に現れる」と言っただろう。一方じゃ、中国やインドなどが豊かになりたいと思うのは当然だし、そのために1人当たりのGHG(温室効果ガス)排出量を先進国と同レベルにしたっていいじゃないかと思うのも、これまた当然だろう。
たとえ先進国がGHG排出量を減らしたとしても、それ以上に中国やインドなどがGHG排出量を増やして、トータルではGHG排出量が増えるのも、当面は仕方がない。
Aさん―そんなあ。じゃあ、どうすればいいと言うんですか。
H教授―だからこそ、将来ビジョンが必要なんだ。途上国の目標は現在の先進国だ。現在の先進国は化石燃料起源のエネルギーをじゃぶじゃぶ消費して、豊かな社会を形成している。
だから途上国の目標とする先進国像をなんとしてでも変える。50年先には先進国では人口も減少するんだから、国全体では化石燃料起源のものは3分の1にすることを目標とし、エネルギーそのものの需要も大幅に減らすことを明言する。
つまり、将来の目標の上位概念はエネルギー総需要抑制社会にする。その具体化が低炭素社会であり、自然共生社会であり、循環型社会ということになる。
Aさん―そのビジョンを実現させるための政策はどうなるんですか。全体主義国家はいやですよ。
H教授―「毎年対前年比X%の化石燃料起源エネルギーのカット」という国家の大枠だけを決める。全体主義国家じゃないんだから、その制約内で思いっきり各自が豊かさを追求すればいいんだ。そうすれば50年先には2℃上昇で食い止め、安定化させることができるんじゃないかな。
Aさん―でもそんなことができるんですか。
H教授―直接的なカットがムリなら、それと同じ効果を生み出すような環境税なり、キャップを設けることを考えりゃいいんだ。2050年はGHG排出半減とか3分の1を大原則として打ち出す。そうしてこそ、本当のコーゾーカイカクだと思うけどなあ。