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環境を巡る最新の動きや特定のテーマを取り上げ(ピックアップ)て、取材を行い記事としてわかりやすくご紹介しています。

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目次
国立公園局と野生生物局
国際協力プログラム
予算について
ブルーカラーの役割
妻のボランティア参加
【3】勤務の義務
これまでの2回の国立公園での研修では、ボランティアハウスに滞在する人1人あたり週40時間の勤務が義務付けられていた。

No.203

アメリカ横断ボランティア紀行(第33話)
ドンさんとの出会い

Issued: 2012.01.26

ドンさんとの出会い[2]

国立公園局と野生生物局

 「国立公園局というところは、一言で言えば、『あまり本当のことを話さない役所』です。いろいろと政策を打ち出しますが、実際に何をやっているかはわかりにくいんです。『話すが実行しない(talk but not act)』役所です」
 例えば、科学分野に使うということで予算を獲得しても、そのほとんどは科学分野に配分されないという。
 「『科学に基づいて管理をしています』とはいいますが、本音は違います。やっぱり、公園に人を呼びたいんです」
 国立公園局の公園には、現在でも科学者が1人もいない公園ユニットが100以上あるという。
 「魚類野生生物局は違います。科学が尊重され、科学に基づいた管理が行われてきたという歴史があります」
 ところが、最近、野生生物局の科学者が本当のことを言うことをためらうようになってきたという。
 「政治的な圧力のためです」

国際協力プログラム

 「国立公園局と野生生物局とでは、国際協力プログラムにも大きな違いがあります。魚類野生生物局の国際協力事業は米国でもっとも優れていると思います」
 一方、国立公園局の事業は対照的だという。
 「国立公園局は、組織として国際関係業務を毛嫌いしているのではないかという印象さえ受けます。まず、国立公園局の職員は現地にほとんど出向きません。行く場合でも、他の政府機関を同行させず、国立公園局だけで動きます」
 他の政府機関は連携による国際協力を進めるため、国立公園局職員の同行を求める。
 「その場合、国立公園局の分の旅費も負担することを条件に職員の派遣を認めます。ところが、国立公園局は公園内の現場作業を優先するため、有能な職員を派遣することを嫌います」
 このため国立公園局の職員派遣を依頼する場合、ドンさんを通じて推薦の依頼が入るようになったという。
 「国際協力でもっとも大切なことは、その分野でもっとも優秀な職員を派遣するということだと思っています。魚類野生生物局は、これまでに1,000人以上の専門家を派遣してきていますが、派遣する専門家の人選をとても大切にしています。現在、ある財団に勤務する国立公園局の職員が国際協力の専門家として派遣され活躍したことがありますが、国立公園局からではなく、野生生物局のプログラムによる派遣でした。国立公園局は閉鎖的(close minded)な組織で、国際関係業務も組織内で抱え込んでしまっているような印象を受けます」

 国立公園局の国際プログラムは研修生からはどのような目で見られているのだろうか。
 「コスタリカから来た研修生に話を聞いたことがありますが、その研修生は『国立公園局を見習ってもだめだ。これだけの予算があればもっといいやり方がある』といっていました」
 国立公園局の本業は国内の国立公園管理であることは間違いのないが、ある意味でこの組織の閉鎖性を象徴しているエピソードといえる。

予算について

 魚類野生生物局と国立公園局では、管理面積では前者が若干大きいにもかかわらず、関係する職員数と予算規模は国立公園局の方がはるかに大きい。

【図3】国立公園、国立野生生物保護区面積比較
【図3】国立公園、国立野生生物保護区面積比較
※国立公園と国立野生生物保護区の面積を比較すると、前者の方が若干小さい。なお、日本の国土面積と比較すると、それぞれの保護区システムの規模の大きさがわかる。

【図4】職員数比較
【図4】職員数比較
※国立公園局については全ての職員数を計上している。魚類野生生物局については野生生物保護区関係職員数のみを計上しているが、メンテナンス職員数は予算書に計上されていないため、実際の職員数より少なく見積もられているおそれがある。

【図5】予算額比較(一般会計 2005年当時)
【図5】予算額比較(一般会計 2005年当時)

 「国立公園局は、その巨大な予算を湯水のように使っています。それも、外部から見るとばかげたようなことに驚くようなお金をかけます。また、職員数も膨大です。予算確保のためには、政治家に従順に従うのが同局の流儀です」
 これに対し、魚類野生生物局は政治家の無茶な横やりには抵抗することがよくある。それがさらに予算の削減につながる。
 「国立公園局は、一度手にした予算は、自分たちの好きなように使いたいという考え方を持っています。予算書は一見わかりやすいのですが、実はなかなか解読できないように作られています。内務次官補としての業務を行うために、国立公園局の予算に詳しい専門家を雇わなければならなかったほどです」
 対照的に魚類野生生物局の予算書は単純でわかりやすいという。
 「国立公園局は、面倒な案件やおかしな予算をうまく滑り込ませてきますが、それらを見つけるのは至難の業です。また、連邦議会議員ともしっかりと連携しています。地元の政治家と各国立公園ユニットの所長は常に連絡を取り合っているのです」
 各国立公園の施設整備は、地元選出の政治家にとって効果的でわかりやすい地元貢献策のひとつだから、関連の予算を獲得することは、当局にとっても政治家にとっても共通の利益となる。
 「例えば、ある国立公園のトイレ建設費用は1棟あたり43万ドル(約4,000万円)でした。」
 これに対し、同時期に訪問した野生生物保護区では、トイレの建設費用はだいたい1棟あたり1万ドルだったという。それらは外注したものではなく、予算がないため職員が自ら作ったので材料費だけの実費だった。
 「それでも自然地域には十分な質のものでした。国立公園局の施設は一般的に質が高すぎる傾向があるのですが、国立公園局はそのような施設を『公園品質(Park Quality)』などと呼んで誇らしげにしています。でも私からすると予算の無駄遣いとしか思えません」
 ところが、国の公共投資を地元に誘導し観光施設を充実したいという地元選出議員の意向と、国立公園整備予算を確保したい国立公園局との利害は一致する。これがゆがみとなって施設整備への過剰投資となって表れたのだろう。

マウントレーニエ国立公園のパラダイス地区にあった巨大なビジターセンター。施設維持のために1日約2000リットルものディーゼル油を必要とした
マウントレーニエ国立公園のパラダイス地区にあった巨大なビジターセンター。施設維持のために1日約2000リットルものディーゼル油を必要とした

セントキャサリンクリーク国立野生生物保護区のビジターセンター。管理事務所と併設された簡素な建物で、建設費用と管理費が抑制されている
セントキャサリンクリーク国立野生生物保護区のビジターセンター。管理事務所と併設された簡素な建物で、建設費用と管理費が抑制されている

同保護区のビジターセンター内部。展示の質は国立公園のビジターセンターとは比較にならないが、利用者数や保護区の目的に見合った質と規模といえる
同保護区のビジターセンター内部。展示の質は国立公園のビジターセンターとは比較にならないが、利用者数や保護区の目的に見合った質と規模といえる

同保護区の入口標識。使用されている木材も細く簡素なつくりだ。路肩に設置されている。
同保護区の入口標識。使用されている木材も細く簡素なつくりだ。路肩に設置されている。

国立公園の入口標識の例(レッドウッド国立州立公園)。標識が大きく、立派な木材がふんだんに使用されている。標識の前には広々とした駐車スペースが整備されており、車をとめてゆったりと記念撮影ができる。これも、国立公園のイメージを維持するための効果的なビジターサービスのひとつであるが、そのためには相当なコストがかけられている
国立公園の入口標識の例(レッドウッド国立州立公園)。標識が大きく、立派な木材がふんだんに使用されている。標識の前には広々とした駐車スペースが整備されており、車をとめてゆったりと記念撮影ができる。これも、国立公園のイメージを維持するための効果的なビジターサービスのひとつであるが、そのためには相当なコストがかけられている

 グランドキャニオンでは、シャトルバスのバス停のベンチに、原生林から切り出された正目の一枚板が使われているという。
 「国立公園の言い分は、質の高い経験をしてもらうために必要ということです。ただ、こうした努力が市民の絶大な公園支持につながっていることは見逃せません」
 すばらしい施設があり、自然の中をどこでも好きなように車で走り回ることができて、大きな駐車場もある。ビジターサービスが充実していてビジターの満足度は非常に高い。
 「1995年に、連邦議会の反発で政府予算が成立せずに予算危機が発生し、政府機関が業務閉鎖に追い込まれたことがありました。国立公園も閉鎖されたのですが、市民がこれに猛反発し、結局予算が承認されただけでなく、その後、予算案件だけは必ず期限内に合意されるようになったのです」
 アメリカでは国立公園は人気が高い。ただの公園ではなく、市民共有の財産とみなされている。市民に愛されている国立公園といっても誤りではないだろう。
 「国立公園局は巨大な予算を持ち、素晴らしく上質な施設を整備しています。その上、余裕のある人員により利用者に対して充実したサービスを提供しています。これによって、ほとんどの市民を味方につけてしまっています。対照的に国立野生生物保護区は利用客に向けた施設整備やサービス提供にあまり力を入れていません。そのため利用者数は少なく、予算も伸びないという悪循環があります。これが両者の間の差になって現れているのではないでしょうか」
 この話が本当であれば、国立公園局は国立公園の質の向上を通じて、国民の支持だけではなく、予算、さらには地元政治家を中心とした政治的な力を得ることに成功しているといえる。民主主義の国であるだけに、「利用者数」は「有権者数=票」とみなすことができる。だから利用者数は政治的な力とも考えることができるのだ。利用者数を確保しようとする国立公園と、あくまで野生生物の保護を優先する国立野生生物保護区とではその差が開いていくのも当然といえる。

【図6】利用者数比較
【図6】利用者数比較
※国立公園と国立野生生物保護区の利用者数を比較するとその差は歴然としている。

【図7】利用者一人あたり予算額比較
【図7】利用者一人あたり予算額比較
※予算額を利用者一人当たりに換算すると、若干国立野生生物保護区の方が多いが、ほぼ同程度といえる。

【図8】職員一人あたり利用者数比較
【図8】職員一人あたり利用者数比較
※職員一人当たりの利用者数を比較しても、やはりほぼ同程度となった。民主主義の国では、利用者数が有権者数と直結しているということなのかもしれない。

ブルーカラーの役割

 そんな国立公園局にも革新的な動きがあるという。
 「イエローストーン国立公園から発信された『公園のグリーン化(greening parks)』という政策があります」
 公園内での化学薬品の使用を減らし、ゴミをリサイクルすることなどにより環境への悪影響を低減するという試みだ。賛同する公園内のホテルでもタオルのリユースなどが行われている。
 「この取り組みは、イエローストーンのメンテナンス部門の部長が中心的な役割を果たしています。メンテナンス部門で働いているのは、いわゆるブルーカラーの現業職員で、公園の現場を熟知しています。本部組織や公園管理事務所にいるホワイトカラーとは対照的に、公園に必要なことを着実に実行しています」
 これは、実際に国立公園で働いてみるとよくわかることだ。ブルーカラー職員が実際の公園管理に果たす役割は大きい。にもかかわらず、メンテナンスとそれ以外の職員との間には厳然とした「区別」が存在する。それはまるでインドやネパールのカースト制度のようだ。一般的に、アメリカはヨーロッパの階級制度から開放された自由な国というイメージがあるが、制度的には日本に比べ様々な面で「再チャレンジ」の難しい国といえるのかもしれない。そのような目で見ると、ドンさんのような政府職員が政府の要職を務め、そして大きな変化を政府にもたらしたことは、私のような外部の人間からみても画期的なことだったろう。
 いずれにしても、今回のドンさんのお話から、これまでのアメリカの国立公園管理に関するいくつもの疑問が氷解するとともに、魚類野生生物局を比較の対象にするというアイデアが浮かんできた。日本の環境省を加えれば3者比較になる。これで、研修のレポートの骨格がようやくできそうな気がしてきた。研修も残り数ヶ月になって、はじめて出口が見えた気がした。
 例えば、面積としては直接比較できない日米の保護区どうしであっても、職員一人当たりに換算してしまえば比較は可能だ。試しに、それぞれの保護区の面積を職員数で割ってみると、職員1人が担当する面積がでてくる。そうしてみると、興味深い事実が浮かんでくる。

【図9】職員一人あたり保護区面積
【図9】職員一人あたり保護区面積

 これまで日本の国立公園の多くは、アメリカの国立公園、それも有名なイエローストーン、グランドキャニオン、ヨセミテなどの大国立公園を「お手本」としてきた。ところが、このデータを見ると、むしろ国立野生生物保護区のそれに近いのだ。もちろん、保護区と国立公園とでは管理目的なども異なるが、予算や人員の規模などからすれば、国立野生生物保護区の方が参考になるのかもしれない。また、国立公園と一言でいっても、規模は実に様々だ。日本ではあまり知られていない国立公園の中にも参考になる事例は隠されているのではないか。
 予算を湯水のように使い、豊富な職員を抱える国立公園局は、国立公園の管理体制としてはむしろ特殊な部類に入るだろう。日本が身の丈にあった国立公園の管理を行うためには、もう少し視野を広げることも大切なことではないだろうか。

妻のボランティア参加

 「個室とパソコンが空いていますよ」
 ピーターさんの何気ない一言で妻のボランティア参加が決まった。荷物の整理などが落ち着いた12月、妻にもボランティアポストのオファーがあったのだ。魚類野生生物局の国際課では国立公園のような勤務の義務【3】がないため、週に3日程度ボランティアを行うことにした。

 私が依頼されていたことのひとつに、関係者名簿のデータベース化というものがあった。名簿といってもメールの署名欄などをランダムにコピーペーストしてきたワードファイルだ。名簿に含まれるデータは数万件にのぼると見られるが、テキストデータのため、全体のボリュームはページ数でしかわからない。検索機能を使って特定しているようだが、同じ人が何度も登場し、新旧のデータが混在している。それも、「リスト」は国ごとに存在している。これらを一つのデータベースファイルにまとめるという指示だ。
 こんな初歩的な方法でリストを管理していることに驚かされるが、それ以上にピーターさんが持つ国際的なネットワークの広さに驚かされる。日本の環境省職員で、これに匹敵するネットワークを持ち、有効に機能させている人間がいるだろうか?
 仕事自体はつまらない作業だったが、これが完成すればすごい財産になるはずだ。
 テキストデータのままではデータベース化は難しい。かといっていきなりデータベースソフトに移行できるような状態ではない。そこで、アメリカではあまり使われていないエクセル形式にデータを属性ごとにまとめることにした。ワードからエクセルへのデータ移行の時に少し工夫して、氏名、役職以外に検索できる共通のキーをいくつか設定し、後に重複や新旧を特定することとした。当然ながらアメリカのソフトはいずれも英語での操作になるので、ヘルプ機能などの説明も英語だ。何日もこれと格闘していると、帰ってからもまぶたに文字列が残る。寝ようとする瞬間に急にいいアイデアが思いついたりする。こうして2週間程度かかって、ようやくデータ移行と統合、分析に目処がたった。
 この情報が局内で知られるようになったらしい。
 「中南米諸国のカウンターパートナーの情報をデータベース化してもらえないだろうか」
 そんな相談がピーターさんに持ち込まれた。国際課内の中年米プログラム担当からの依頼だった。関係者のデータは、なぜかまたワードファイルで管理されている。ここでもものすごいネットワークの規模だ。中南米とアメリカの関係は非常に強い。地理的にみると、アラスカとロシアの関係が中心の極東アジア地域よりも密接だ。魚類野生生物局の国際協力プログラムの主軸のひとつなのだ。
 ワードファイルからの変換手法は大体確立できていた。ワード上でできるだけデータをきれいにして、少し工夫してエクセルに貼り付ける。あとはエクセルの機能を使ってデータを整理していく。それがわかっていても、毎日8時間、計40時間程度の時間がかかった。作業を終えたとき、妻は目をすっかり充血させていた。
 担当からは、エクセルをさらにアクセスにしてほしい、という相談もあったが、お断りすることにした。誰にでもその作業は自分でやらないとデータベース全体の性格が理解できない。
 この作業を通じてわかったのは、一般的にアメリカ人のデータ管理は「保存すること」が主体だ。それを情報として整理して管理することは苦手なようだ。
 これまでの国立公園でのボランティアでも、膨大な野外調査が行われているにもかかわらず、調査票の整理ができていない、デジタル情報として入力されていない、それを解析できる人間がいない、などの原因で、データがうまく活用できていなかった。ただ、データさえ蓄積しておけば、情報処理の得意な人間がいれば活用が進むし、新たなデータ解析技術が開発されれば新たな発見につながるかも知れない。
 私たちはどうしても「今」の段階でいろいろ考えてしまい、「これでは無理だ」と考えてしまうことが多いが、ここの人たちはそうではない。とりあえずできる範囲でできることをやる。データはとりあえず保存しておく。そうすると、将来どこかでブレークスルーが起きる。だからこそ、画期的な成果が得られるのだろう。
 「レッドウッドでの森の中での調査が懐かしいね」
 妻のこの一言が私たちの率直な感想だった。もうフィールドに戻ることはない。FWSでのボランティア勤務は、これまでの研修とはまったく異なる。しかし一日中パソコンと格闘する生活は、日本に帰ってからの私の姿と重なる。私にとっては帰国に向けたいい「リハビリ」になった。
 また、1年半もアメリカにいて、ろくに英語が上達していなかった。ここでの電話応対はつらかったが、おそらく2年間の研修の中で最も英会話能力が鍛えられた期間だった。これも、ここでの「成果」といえるかもしれない。

妻のひとこと

事務所までの通勤風景。雪が降る日もあって凍えるようでした
事務所までの通勤風景。雪が降る日もあって凍えるようでした

 私たちが滞在していたアパートは、地下鉄やショッピングモールからも近く、廊下まで空調が効いていて快適でした。レッドウッドでは、一番近いスーパーまで片道50キロ以上ありましたので、徒歩で買い物に行けるのはとても便利でした。
 ところが、この徒歩生活にも思わぬ落とし穴がありました。ワシントンDCの冬は予想よりも寒かったのです。それも、時々やってくる寒波の時などは、マイナス10度を下回る日も少なくなく、本当に凍えるようでした。私も途中から週に何日か魚類野生生物局に通うことになったのですが、この通勤が大変でした。
 これまでも、国立公園での野外調査用にかなりの防寒具を用意していましたが、それを一番使ったのも実はDCでの通勤時でした。国立公園の現場では、天候が悪いときは無理に仕事はしませんし、現場の仕事なので身体を動かすことが多く、分厚い服はかえってじゃまになってしまいます。ところが通勤の方は違います。徒歩で片道十分程度なのですが、毎日同じ時刻に外に出なければなりません。これまでの自動車通勤にすっかり慣れてしまっていました。
 毎日、天気予報を確認し、温度計で気温を測ります。そしてロシア風の綿入りの帽子、ゴアテックスのダウンの上着、スキーウェアのような厚手のズボン、そして防寒ブーツと手袋を身につけて雪だるまのようになって家をでます。
 これでも事務所に着く頃にはすっかり体が芯から冷えてしまっています。それでも、途中目にする通勤の光景はこれまでになかった経験でした。大勢のアメリカ人が歩道を歩いているのは、これまでの田舎暮らしでは見られなかったことです。それにしても、みな寒いのに薄着なのには驚かされました。

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記事・写真:鈴木渉(→プロフィール

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