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2006年環境重大ニュース
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No. 2006年環境重大ニュース
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Issued: 2006.12.28
2006年環境重大ニュース(国内編)
 海外編とともに、2006年の環境重大ニュース(十大ニュース?)の国内編をお届けします。独断と偏見で決めています。
 振り返ってみると06年は、容器・包装、バイオマス燃料、木材製品、マグロなど、身近なモノの扱いに変化を及ぼす動きが目立ったように思います。
第1位:温暖化防止、2013年以降の枠組みについての検討スケジュール決まる
 11月にケニアのナイロビで開催された「第12回気候変動枠組条約締約国会議・第2回京都議定書締約国会合(COP12・COP/MOP2)」で、「2013年以降の気候変動対策の枠組み」決定に向けた議定書見直しの検討スケジュールが決まりました。
 先進国・経済移行国の温室効果ガス削減目標を定めた「京都議定書」が想定しているのは2012年までの気候変動対策。「2013年以降」については、削減の責任が課せられることを警戒する途上国の反発もあって話し合いが進んでいませんでしたが、ようやく交渉が具体化してきました。
 なお日本は公式会議以外に南アジア、東南アジア、東アジア(中韓モンゴル)、EU各国との対話を開催したほか、京都議定書を補完する技術移転の取り組み「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)」の活動、英国との共同研究「脱温暖化2050プロジェクト」など、国際交渉を後押しする活動を多角的に展開しました。
 しかし05年度時点の日本の温室効果ガス総排出量(速報値)は90年度の総排出量を8.1%上回る13億6,400万トン(二酸化炭素換算)。日本が約束した「90年比マイナス6%」達成はあいかわらず厳しい状況です。

温暖化で崩壊が懸念される南極棚氷(提供:環境省、撮影:06年2月)南太平洋に浮かぶ島国ツバル 海面上昇によって浸食される砂浜(提供:環境省、撮影:06年8月)
温暖化で崩壊が懸念される南極棚氷(提供:環境省、撮影:06年2月)南太平洋に浮かぶ島国ツバル 海面上昇によって浸食される砂浜(提供:環境省、撮影:06年8月)



第2位:モノを買う側の姿勢も問われる 容器包装リサイクル法改正
 「容器包装リサイクル法」の大幅改正が6月に成立し、07年4月1日から完全施行されることになりました。
 この改正は、容リ法の中に施行(97年)から10年後の見直しが規定されていることを踏まえて策定されたもので、(1)容器包装を一定量以上利用する事業者に対する排出抑制取り組み状況報告の義務付けと、不十分な取り組みに対する勧告・公表・命令の実施、(2)市町村の分別収集・選別保管費用の一部を事業者が負担する仕組みの創設、(3)再商品化の義務を果たさない「ただ乗り事業者」への罰則強化──などの内容が盛り込まれたほか、施行令の改正内容には、小売9業種を容器包装の使用合理化が特に必要な業種として定めることが規定されました。
 街の小売店の中には早くも、改正に対応し、レジ袋削減などの取り組みを開始したところを見かけるようになりました。こういった取り組みにどう対応するかは、モノを買う側の姿勢も問われることになります。

ポリ袋削減の方針を示す本屋のプレート。ビニール袋使用をお店に頼むのか、客側の行動も問われます
ポリ袋削減の方針を示す本屋のプレート。ビニール袋使用をお店に頼むのか、客側の行動も問われます
ファーストフードチェーンのモスフードサービスは、プラ製容器包装の50%を非石油系製品に転換する内容などを盛り込んだ自主協定を環境省と締結しています(写真はテイクアウト用の紙製包装とマイバック販売のお知らせ)
ファーストフードチェーンのモスフードサービスは、プラ製容器包装の50%を非石油系製品に転換する内容などを盛り込んだ自主協定を環境省と締結しています(写真はテイクアウト用の紙製包装とマイバック販売のお知らせ)



第3位:国家エネルギー大綱、運輸エネルギーの次世代化など提唱
 資源エネルギー庁は、原油価格高騰や温暖化防止などの課題に応えて、エネルギー安全保障強化策の方向性を示す「新・国家エネルギー戦略」を5月にまとめました。
 この「戦略」の取り組み内容には、「2020年頃までにガソリンのバイオエタノール混合率上限を現在の3%から10%に引き上げる」ことを提言した総合資源エネルギー調査会石油政策小委員会報告書を受けて、「バイオ燃料導入率向上など運輸エネルギー次世代化(数値目標:2030年の石油依存度80%程度の実現など)」などの内容が盛り込まれました。
 バイオ燃料については、コストの安さなどから、海外からの輸入をあてにする動きがすでにあるそうですが、輸入に頼った場合、リスクは原油とあまり変わらないことにもなりかねません。また輸入時の長距離輸送で化石燃料を大量消費したら、意味が半減する可能性もあります。国内のバイオマス資源の効果的な利用など足下を見つめた施策が必要と思います。


第4位:アスベスト救済法が施行 500件を救済対象として認定
 時効により労災補償の対象とならないアスベスト健康被害認定患者に医療費などの救済給付金を支払うとした「アスベスト救済法」が3月27日から施行され、12月12日までに500件(中皮腫401件、肺がん99件)の事例が救済対象として認定されました。
 救済事業費(19〜22年度までの1年度につき約90億5,000万円)には、政府や自治体からの資金、全労災保険適用事業主から徴収した「一般拠出金」、アスベストとの関連が深い事業者から徴収した「特別拠出金」によって構成される基金が充てられます。
 06年にはこの法律以外にも、工作物解体作業によるアスベスト飛散防止、アスベスト添加建材の使用制限、アスベスト含有廃棄物の無害化処理促進──などを内容とする「4法(大防法、地方財政法、建築基準法、廃棄物処理法)一括改正法」や、0.1%を超えてアスベストを含有する製剤・製品を製造禁止にするとした「改正・労働安全衛生法施行令」が公布・施行され、アスベスト対策に関する法令整備が進みました。


第5位:水俣公式確認から50年
 1956年、水俣保健所に「原因不明の中枢神経症患者が発生」という報告が寄せられ、水俣病が公式確認されてから、5月1日で50年が経過しました。
 小泉首相と小池環境大臣(ともに当時)がそれぞれ、被害拡大を防げなかった政府の責任を謝罪する談話、祈りの言葉を発表したほか、環境省は06年版環境白書の特集テーマとして「人口減少」と並び「水俣病」を取り上げました。
 また、環境大臣の私的懇談会「水俣病問題に係る懇談会」は、国民1人1人のいのちの安全を守るための危機管理体制を確立すること、水俣病被害者すべてを包括できる救済・補償の枠組みの必要性を提言した「提言書」を9月までにまとめ、小池環境大臣に手渡しました。


第6位:RoHSに対応し、「資源有効利用促進法」の判断基準省令改正
 EUでは、7月1日から、「電気電子機器中の特定有害物質使用制限指令(RoHS)」指令」に基づき、電気・電子機器にカドミウム、水銀などの有害6物質の使用が禁止されましたが、日本でも、7製品(パソコン、ユニット形エアコン、テレビ受像機、電気冷蔵庫、電気洗濯機、電子レンジ、衣類乾燥機)に含まれるRoHS規制対象6物質について、対象事業者が管理措置、含有情報表示・提供を行う必要があることを規定した「資源有効利用促進法」の判断基準省令の改正が4月に公布され、7月1日から施行されました。
 なお日本は産業界の事業活動にとって問題となる各国の貿易政策・措置の改善・撤廃を相手国に促すことを目的とした資料「不公正貿易報告書」06年版には、EUの新化学品規制「REACH」案廃電気電子機器指令(WEEE)、「RoHS」、中国の「輸出入制限有毒化学品リスト」について、その貿易制限的効果への懸念を示す内容を掲載しています。


第7位:条約に対応し海洋防止法改正 日本周辺海域では漂流・漂着ゴミ深刻化
 海洋投棄できる廃棄物の範囲をロンドン条約より制限する「同条約96年議定書」批准、油流出事故発生時の応急対応について定めた「OPRC条約」の対象を有害危険物質に拡大する「OPRC-HNS議定書」(07年6月14日発効予定)や、有害液体物質をばら積輸送する船舶の海洋汚染防止規定を定める「MARPOL条約附属書2」改正などに対応するために、「海洋汚染防止法」や「廃棄物処理法」の関係法令改正が06年に行われ、一般廃棄物の海洋投入処分禁止などの措置が法的に整備されました。
 日本周辺の海域では、05年に海洋汚染が計360件確認されており、うち油による汚染は229件、廃棄物による汚染は94件、有害液体物質による汚染は3件。また05、06年と2年続けて2万点以上の医療系廃棄物が日本海沿岸地域に漂着する事件も発生しています。深刻化する漂流・漂着ゴミ問題に対応するために、法整備以外に9府省庁による関係省庁会議も3月に設置されています。

日本沿岸への漂着ゴミ(提供:環境省、撮影:06年8月)
日本沿岸への漂着ゴミ(提供:環境省、撮影:06年8月)



第8位:税制改正大綱「道路特定財源の見直し」示す、20年度税制改正で実現へ
 12月14日にまとまった政府与党の「19年度税制改正大綱」に、一般財源化を前提にした道路特定財源の見直し内容を20年度税制改正で実現することが示されました。
 道路特定財源とは、受益負担の考え方に基づき、自動車利用者が道路整備費を負担する制度。財源は揮発油税や自動車重量税などの国税と、軽油引取税など地方税で構成され、従来は道路建設や周辺施設の整備など使いみちが限定されていました。
 なお今回の見直しに先立ち、中央環境審議会の地球温暖化対策税制専門委員会が02年にまとめた温暖化対策税制についての中間報告には、道路特定財源などの特定財源を温暖化対策の観点から積極的に見直し「税制グリーン化」を推進すべきと指摘しており、国土交通省でも道路特定財源の使途にNOx・PM排出抑制車購入助成や自動車由来CO2抑制のための調査事業などを追加するようになっていました。
 一般財源化が実現した場合、使途の制限はなくなりますが、環境問題の解決にも役立つ使われ方をしてほしいものだと思います。


第9位:グリーン購入法で木材の合法性証明を製品判断基準に追記
 グリーン購入法にもとづく「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」の変更案が2月28日に閣議決定され、紙や木を使った製品のグリーン購入法適合品としての判断要件に、「伐採の合法性」あるいは「持続可能な森林経営が営まれている森林で育てられたこと」が林野庁ガイドラインにもとづいて証明された製品であることが追記されました。
 林野庁ガイドラインは、木材・木材製品供給者が製品の合法性・持続可能性を証明する方法などを示したもので、2月15日付けで公表されています。
 温暖化防止面からも注目される循環型資源、木材。林野庁では日本の森林を守ることにつながる国産材利用促進運動「木づかい運動」も展開していますが、モノを購入する場合にはモノの成り立ちについても関心を持ちたいものだと思います。


第10位:まぐろの漁獲規制本格化、捕鯨問題で変化の兆し(?)
 世界中でまぐろ漁獲が増え、資源量への影響も指摘される中で、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)での漁獲可能量の段階的削減、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)でのめばち・きはだ漁獲量抑制などの資源管理措置が合意されました。
 まぐろに関しては、世界の消費量の3分の1を占める日本の需要を背景に漁獲が増え、台湾漁船の不正漁業など乱獲問題も発生していることから、大西洋、インド洋、東部太平洋、中西部太平洋、「みなみまぐろ水域」を対象としたまぐろ類の5つの地域漁業管理機関が一堂に会する合同会議を07年1月に神戸で開催し、海洋生態系を保全する「責任ある漁業」に向け検討を進めることも決まっています。
 一方、6月に開催された国際捕鯨委員会(IWC)第58回年次会合では、捕鯨管理機関としてのIWC機能正常化を盛り込んだ宣言が採択されました。漁業関係では、従来の流れと少し違った動きが見受けられた年だったように思います。

日本人が好きなマグロのお刺身。海洋生態系の保全を実感しつつ味わいたいものです
日本人が好きなマグロのお刺身。海洋生態系の保全を実感しつつ味わいたいものです



 昨年の重大ニュースでは、過去のアスベスト対策についての検証結果から得られる教訓を締めくくりとしましたが、今回「第5位 水俣公式確認から50年」で紹介した「水俣病問題に係る懇談会」報告も、水俣病の被害要因を現代の視点から分析しなおし、国民の生命と健康に被害が生じるような事件に対し、その構造(根本原因)の科学的解明と解明結果にもとづいた対策を提言・勧告できる危機管理機関「いのちの安全調査委員会(仮称)」の設置を提案しています。世の中にリスク要因は数多くありますが、過去の教訓を活かして被害を防止する危機管理が更に進むことを願います。
 07年は京都議定書の成立10周年にあたります。また第1回アジア・太平洋水サミットの日本での開催、「家電リサイクル法」や自然公園制度の見直しなどが予定されています。さらに明るい環境ニュースが増えてくることを願ってやみません。


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(EICネット国内ニュース担当 関智子)
※写真は、一部を環境省「ビデオ・写真ライブラリー」( http://www.env.go.jp/guide/videolibrary/ )より転載(禁再転載)、署名のないものは関智子撮影。
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