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アメリカ横断ボランティア紀行(第7話)
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No. アメリカ横断ボランティア紀行(第7話) さよならマンモスケイブ
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Issued: 2006.11.30
さよならマンモスケイブ(その1)
歩道沿いの展望台から望むグリーン川。10月に入ると木々はすっかり葉を落としてしまう。
 「W氏はもうここにはいません。国立公園局を去りました。残念ながら鈴木さんたちのことを引き継いでいる者はおりません」
 2003年11月。マンモスケイブ国立公園のボランティア生活も半年を越え、そろそろ次の研修先であるゴールデンゲート国立レクリエーション地域での生活について準備を始めなければならない時期に差し掛かっていた【1】。予想外の回答に、私たち夫婦は2人とも面食らってしまった。
 「ボランティア宿舎も既にいっぱいで、受け入れることは困難です」
 結論もはっきりしていて、あきらめる以外になかった。
 ゴールデンゲートには、それまでも何度かメールを送っていたが返事がなかった。これはおかしいと思い、マンモスケイブ国立公園のボランティア・コーディネーター、メアリーアンさんにお願いして連絡を取っていただいた。何度かのやり取りがあって、ようやくもらった返事がこれだった。これから、また研修先を探すと思うと、本当に気が重くなった。
アメリカ横断ボランティア紀行 INDEX はこちら
 目次
ゴールデンゲートに代わる研修先を求めて
受入れの回答
キャンプ場改修工事
ホットスプリング国立公園
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【1】 ゴールデンゲート国立公園での研修
→第2回「受入れ決定〜マンモスケイブ到着」参照
ゴールデンゲートに代わる研修先を求めて
マンモスケイブで私たちがお世話になっていた科学・資源管理部門の建物(写真左手奥のレンガ色の建物)

 「冬は宿舎も空いているので、好きなだけ延長してもらっていいわよ」
 メアリーアンさんは滞在期間の延長を勧めてくれた。妻もすっかりマンモスケイブが気に入っていたので、二つ返事でお願いすることにした。
 「いっそのことここにずっといてもいいと思うよ。ワシントンDCまでならすぐだし、何よりも引越しが楽じゃないかな」
 翌年11月に開始する魚類野生生物局での研修は、ワシントンDCの本部勤務が既に決まっていた。居心地のよいマンモスケイブでの研修をこのまま続けられれば、その方が楽だと思う。ただ、研修の目的からいえば、いよいよこれから西部の大公園について学ぶところだ。何としても、もう少し西に移動したかった。
 その日から、またインターネットとの格闘が始まった。私は国立公園局のウェブサイト、妻は政府のボランティアの募集サイトを当たった。長期・宿舎・英語…条件は厳しい。
 ほどなく、カールスバッド国立公園とグアダルーペ国立公園の2つの国立公園が、私たちの要件に合いそうなボランティアの募集をしていることがわかった。ともにアメリカ南西部の乾燥地帯にある。とにかく願書を作成し送付する。願書の作成作業は出発前に散々やっていたので、お手のものだった。
 上司の連絡先として、直属の上司であるブライスさん、メアリーアンさん、そして科学・資源管理部門のマーク・デポイ部長の3者を登録した。推薦者としてはいずれも申し分ない。ほどなく、これらの推薦者に照会が入り始めた。

 「カールスバッド国立公園も鍾乳洞の保護のために設立された国立公園で、この公園とも関係が深い。職員もよく知っているし、大丈夫だと思うよ」とブライスさん。
 ところが、妻はこの2公園に行くのは反対だった。
 「近くにスーパーがないし、メキシコ国境に近くて治安だって良くないと思う」
 「だけど他に受け入れてくれそうなところがないかもしれないよ」
 「もう少し待ってみましょう。マンモスケイブだっていいんだし」
 半ばけんか腰になったが、妻の主張にも一理ある。
 すると、パソコンのモニターを見ていた妻が、
 「ねえ、レッドウッド国立州立公園って知ってる? 資源管理の仕事があるみたいなんだけど」
 正直言って初めて聞いた名前だった。地図を見ると、カリフォルニア州の北のはずれに、太平洋に沿った形で細長く公園区域が記載されている。世界で最も高い木、レッドウッドを守るために設立された公園だ。レッドウッドの樹齢は2千年以上にも及ぶという。
 その公園の植生管理グループが長期のボランティアを募っている。太平洋とレッドウッドの原生林、エルクなどの野生動物。ホームページを見て2人ともすっかり気に入ってしまった。急いで願書を用意する。
受入れの回答
 まず、カールスバッド国立公園とグアダルーペ国立公園から相次いで受入れ可能との連絡が入った。
 レッドウッド国立公園からはなかなか連絡がなかった。一週間ほどして、スコットさんという人からメールが入った。
 「何がやりたいの? 森林の調査だけど、興味ある?」
 控えめだが、かなり前向きな印象を受ける。すぐにこちらの興味事項を返信する。
 レッドウッド国立公園から、またメールが入った。メールは間違えて同報されたようだったが、いきなり「マンモスケイブの2人の評価は高いし、ぜひ受け入れてみてはどうかしら」という内容だ。これには私たちも勇気付けられた。
 このメールの主であるスタージアさんこそが、私たちの受入れをボランティア・コーディネーターに直談判してくれ、またレッドウッド滞在中にいろいろ世話を焼いてくれた方だった。
 この後、レッドウッド国立州立公園からも受入れ可能との連絡が入った。
 レッドウッドに行くとすると、他の2公園を断らなければならない。カールスバッド国立公園は、マンモスケイブのいわば兄弟分。マンモスケイブの関係者も、私たちのために先方を説得してくれたのだろうということは容易に想像がつく。でも妻はお断りすべきとの一点張り。おそるおそる上司のブライスさんに切り出してみた。
 「そんなこと気にする必要はないよ。レッドウッドには行ったことはないが、ぜひ一度行ってみたい公園だなあ」
 ブライスさんもとても喜んでくれた。
 あとは、JICAや役所の関係の手続きが残っている。確認してみると、JICAの方は正式な変更手続きが必要だった。特に、変更の理由が難しい。「次の受入れ先の担当者が辞めてしまった」では済まされない。今回は「国立公園局の事情による変更」であり、「変更後の研修内容がさらに充実する」ものであることをきちんと説明しなければ変更は認められそうにない。幸い、元国立公園局国際課で国際ボランティアプログラムを担当していたことのあるメアリーアンさんは、そのような海外からの研修生の事情もよくご存知だった。
 「とりあえず私にまかせて。来週にはレターをお渡しするから」
 理由書の作成の他にも、離任に向けていろいろな手続きを進めてくれることになった。私の方は、これまでの研修について、計画通り進んでいること、進んでいないこと、新たに見付かった課題などについても考え、研修計画の変更申請に盛り込むことにした。
 メアリーアンさんのレターに和訳を添付し、書類をJICAに提出した。計画の決裁が下りるまでの間、マンモスケイブでのボランティアを続けることになった。こうして、私たちはマンモスケイブでクリスマスを迎えることになった。
キャンプ場改修工事
 夏のキャンプシーズンが終わると、公園施設の大規模な改修シーズンの到来だ。マンモスケイブ国立公園には、家族向けと団体向けのグループキャンプサイトがある。私たちが参加したのは、一部の老朽化した家族用キャンプサイトを改修して、学校利用やボーイスカウトなどの団体の利用に適した大規模なサイトを増設する工事だった。
キャンプサイト改修工事の様子
キャンプサイト改修工事の様子
工事のほとんどは手作業で進められる
工事のほとんどは手作業で進められる
 今回の改修では、まず角材で外枠をつくり、次に内側に砂利を敷きつめる。工事は公園職員及び契約職員により実施される【2】。重機は小型のブルドーザー1台程度で、ほとんどが手作業で工事が進められる。砂利を敷き詰める方式はかなり乱暴に思えるが、現場はすでにキャンプ場として利用されている場所であり、木の根などが露出してしまっている。興味深いのは、工事前にはあまりしっかりした図面が準備されておらず、現場あわせで工事を進めていくという点だ。図面上にはキャンプサイトの概ねの規模と位置だけが記載されている。実際の工事は公園職員の判断で、立ち木を避け、キャンプサイトを作っていく。もちろん仕上がりにはムラがあるが、施設は地形にあわせて丁寧につくってあるので、風景にもよく溶け込んでいる。国立公園のキャンプ場としては十分な施設レベルであり、かつ構造が簡単なため、補修も比較的容易だということも大きな利点だろう。
 工事の実施(契約)形態についていえば、自然資源に影響のありそうな工事は職員、契約職員、そして私たちのようなボランティアが作業に当たる。それに対しキャンプ場内車道の再舗装など、仕様がしっかり決まっていて特に自然に影響のないような工事は、請負契約により発注する。このような柔軟な発注形態により、経費の節減、自然への影響の低減、そしてボランティアの活用が可能になっているようだ。
【2】 契約職員
契約職員とは、個別に契約を結んで公園が雇用した職員で、政府職員としての身分を持たない。
ホットスプリング国立公園
ホットスプリング国立公園の入口看板

 11月の2週目、ワシントンDCにある日本大使館のN書記官と若手職員数人がマンモスケイブに遊びに来てくれた。最終日は皆さんを空港に送った後、N書記官とテネシー州、ミズーリ州を抜けて、アーカンソー州にあるホットスプリング国立公園を訪れた。全米地図では近いように見えるが、距離は相当ある。一泊したがかなりの強行軍となった。

 途中車の調子が悪くなり、アーカンソー州の州都リトルロックでジェネラルモーターズ(GM)のディーラーに飛び込むことになった。エンジン関係のエラーメッセージを読み出したようだが、どこが悪いかはっきりしない。らちがあかないのでディーラーを出る。料金は80ドル。GMのディーラーでは、コンピューターのエラーメッセージを読むだけでこの程度のお金がかかる。これまでも何度も行っているのでもう慣れたが、なぜそんなに請求されるのか理解できなかった。
 ところで、アーカンソー州はクリントン前大統領の出身地。同氏の生家などもあるそうだ。ホットスプリングはその名の通り温泉地で、温泉の泉源を守るために設立されたナショナルリザーブ(国立の保護地域)がそのはじまりだ。設立は1832年とイエローストーン国立公園よりも古い。国立公園になったのは1921年。面積約2,245ヘクタールの小さな公園であるが、区域内には泉源47箇所が含まれている。国立公園及び周辺一帯の地域は、古くからの温泉保養地で、現在でも、年間約157万人が国立公園を訪れている(2002年度、レクリエーション利用客数)。なお、温泉は火山性の泉源ではなく、雨水が地下深くまで浸透し、熱湯になったものが再度地表に湧出しているものだそうだ。国立公園にはこの雨水が地中に浸透する区域も含まれている。
 ホテル街や土産屋などの繁華街が隣接しており、夕方でも人通りや車の通行が絶えない。国立公園には、かつて入浴施設として利用されてきた建物群(バスハウス・ロウ)が歴史的な建築物として残されている。そのうちの1棟はビジターセンターとして改修され、一般に公開されている。他の原生的な自然資源を有する広大な公園とはまったく性格を異にする公園といえる。
ホットスプリング国立公園のビジターセンター。昔バスハウスだった建物を改修している。ビジターセンターの内部。バスハウスだった頃の施設がそのまま残されている。
ホットスプリング国立公園のビジターセンター。昔バスハウスだった建物を改修している。ビジターセンターの内部。バスハウスだった頃の施設がそのまま残されている。

 温泉に浸かるといっても、何種類かのバスタブに順番に浸かりながら垢擦りをしてもらうという方式で、日本の温泉とはだいぶ趣が異なる。最近は水着を着て自由に入る温泉プールのようなタイプも増えてきているようだ。街並はまさに日本の温泉街そのもの、公園の境界もわからないほどに近接してホテルが建ち並び、公園と温泉街が一体となっている。→(その2)へ続く

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