一般財団法人環境イノベーション情報機構
放射性物質の土壌汚染と浄化技術最新動向

第1部 独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 副研究部門長/
イノベーションコーディネータ 駒井 武 氏
第2部 京都大学 原子炉実験所 准教授 藤川 陽子 氏
第3部 株式会社高嶋開発工学総合研究所 代表取締役所長 高嶋 康豪 氏
第4部 広島国際学院大学 工学部 バイオ・リサイクル学科 教授 佐々木 健 氏
第5部 三重大学 大学院生物資源学研究科 准教授 橋本 洋平 氏
第6部 NPO法人 民間稲作研究所 理事長 稲葉 光國 氏
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第1講 土壌汚染のメカニズムと浄化技術の最新動向
【10:00~11:15】
【講演趣旨】
わが国では土壌汚染対策法の施行に伴い、市街地や産業用地における土壌・地下水汚染が顕在化している。
また、今般の大震災や大津波により放射性物質や有害物質による広域の土壌汚染が懸念されている。
本セミナーでは、このような土壌汚染の実状および法規制の動向について紹介するとともに、重金属、
揮発性有機化合物、放射性物質などによる土壌汚染のメカニズム、さらには土壌汚染に起因する
環境リスクの管理について総括的に述べる。
また、原位置の土壌汚染浄化技術の動向について紹介し、植物や微生物などを活用した環境共生型の
土壌汚染対策技術のあり方を解説する。
1.わが国の土壌汚染の実状
2.土壌汚染の発生メカニズム
3.土壌汚染のリスク評価および管理
4.原位置土壌汚染浄化技術の動向
(講師プロフィール)
1979年3月 東北大学工学部資源工学科卒業
1980年4月 工業技術院公害資源研究所入所
1994年7月~1995年12月 米国ロスアラモス国立研究所 客員研究員
1998年4月 資源環境技術総合研究所 化学物質安全研究室 研究室長
2003年10月 同上 地圏資源環境研究部門 地圏環境リスク研究グループ長
2006年12月 同上 地圏資源環境研究部門 副研究部門長
2010年10月 同上 地圏資源環境研究部門 イノベーションコーディネータ(兼任)
主な研究暦
(1)環境地質および医療地質の研究
(2)土壌・地下水汚染のリスク評価手法の研究
(3)廃棄物処分場の安全管理技術の研究
(4)ガスハイドレート生産手法開発の研究
(5)二酸化炭素地中貯留のリスク評価手法の研究
第2講 土壌環境における放射能の分析・解析の方法と除去の考え方
【11:20~12:20】
【講演趣旨】
福島第一から放出された放射能のうち、特に長期的に環境影響を及ぼす放射性セシウムを中心に、
放射性降下物の状況、土壌中での放射性核種の分布ならびに移行挙動に関して述べる。
また土壌中の放射能の測定・データ解析方法について、実際のデータを例として用いた演習を行う。
土壌中の放射性物質からの外部被ばくの計算方法等や農作物への放射能移行の計算方法等についても
時間の範囲内で解説する。
チェルノブイリ原発事故後にとられた環境対策等について紹介すると共に、今後、我が国で土壌浄化等
について考えられる対策について会場との質疑を交えて講述する。
1.原発からの放射能放出・降下と土壌汚染
2.土壌中放射能の測定法・結果の解析法
3.土壌中での放射能の分配と脱離のメカニズム
4.土壌汚染対策
(講師プロフィール)
京都大学大学院工学研究科 衛生工学専攻 修了
京都大学原子炉実験所、助手を経て、助教授、職制変更後、准教授。
専門:環境工学。放射性廃棄物地層処分の安全評価、放射能・各種重金属・有機汚染物質の土壌圏・
水圏における動態、汚染環境修復技術について研究してきた。
学会活動:保健物理学会、土木学会、水環境学会、環境技術学会、原子力学会など。
第3講 複合微生物動態計解析による複合発酵を用いた放射性物質浄化技術
【13:15~14:15】
【講演趣旨】
日本は、広島・長崎で人類初の被爆を体験しました。β崩壊理論による物理学者は、放射性物質の
半減期・臨界点と放射線エネルギーの放出から見て、被爆地は100年~150年の間不毛の地と化し、
植物生物の生息は一切できないと予測していました。
ところが、数ヶ月後には果物・野菜・米等食糧生産が可能となり、20万人もの人々が生活していました。
ガイガーカウンターによる測定においても放射性物質が消失していることが確認されています。
これは耐放射性細菌と微生物群と動植物の複合生態系による生物触媒により放射性物質の分解消失が
お子たからであると多くの学者が考えています。
演者は、複合微生物による複合発酵と耐放射性細菌が今回の東日本大震災における放射能汚染を受けた
実際の土地において放射性物質を消失させることを確認実証し、実用化技術として確立いたします。
本セミナーでは、この成果を発表いたします。
1.広島・長崎とチェルノブイリ及びネバダ砂漠の相違
2.日本での放射性物質の消失と酵素による被曝の回避
3.複合微生物動態計解析による複合発酵技術
4.福島県伊達郡川俣町の実験場における放射線量の軽減と放射性物質の軽減消失
5.今後の課題
(講師プロフィール)
1974年3月 東京農業大学 醸造科卒業
1997年 株式会社地球環境秀明設立、代表取締役就任。(環境部門に関する事業を目的とする会社)
2009年8月 ?嶋開発工学総合研究所を株式会社として法人化、代表取締役就任
環境微生物学博士
専門分野:複合微生物動態系解析による複合発酵を用いた放射性物質・重金属・有害物質等あらゆる
物質に対する分解菌・分解酵素の現生と発現による分解消失。
その他詳しい業績は、http://tidt.jugem.jp/?cid=1 をご参照下さい。
第4講 光合成細菌と回収型セラミックを用いた放射性物質の回収、除去
【14:20~15:20】
【講演趣旨】
広く低濃度の放射能物質で汚染された、土壌や水のバイオレメディエーション技術はいまだ開発されて
いない。我々は広島にある大学として、10年前より、イランやイラク、そのほかの地区での
劣化ウラン弾による放射能汚染の浄化を念頭に、ヒロシマ発の技術として、低濃度汚染放射性物質の
バイオ技術による回収、除去技術の開発を行ってきた。
そして、3年前に重金属除去能力のある、一部の光合成細菌を固定化した特殊セラミックで、
放射性物質であるウラン、コバルト、ストロンチウムを3~5日で60~99%除去できる技術を開発し、
論文発表(Sasaki et al. Japanese J. Water Treat. Biol., 46(3), 119-127 (2010)を行い特許出願した。
その後、同じシステムでストロンチウム、セシウムを同時に除去できることも確認した。
この度、福島原子力発電所の事故で、この技術は急に注目を浴びている。この技術は、回収型セラミックを
磁石で回収でき、高濃度に濃縮された液状にすることができ、低濃度に広く放射能汚染された土壌の
浄化にも有効であると思われる。本セミナーでは、これらの技術内容について解説する。
1.微生物による放射性物質の回収
2.光合成細菌によるウラン、コバルト、ストロンチウムの除去
3.光合成細菌固定化回収型多孔質セラミックによるウラン、コバルト、ストロンチウムの除去
4.光合成細菌の放射性物質除去のメカニズム
5.回収型特殊セラミックによるセシウム、ストロンチウムの同時除去
6.土壌からの低濃度放射性物質の回収
(講師プロフィール)
1972年 広島大学 工学部 醗酵酵工学科 卒業
1972-1975年 辰馬本家酒造株式会社 醸造課
1975-1980年 広島大学 大学院工学研究科 工業化学専攻 修士・博士修了、工学博士
1980-2010年 広島電機大学(現国際学院大学) 講師。助教授、教授を歴任
1994-1995年(13ヶ月間)ニューサウスウエールズ大学 バイオテクノロジー学科 特別客員教授
2010年~ 工学部長 現職
資格:技術士(生物工学、総合技術監理部門)
環境計量士(濃度部門)
甲種危険物取扱者
水質第一種公害防止管理者
放射性取扱主任者(第2種)
第5講 植物を用いた放射能汚染土壌改良の可能性
【15:30~16:30】
【講演趣旨】
植物の物質吸収機能を環境浄化に応用したファイトレメディエーション技術は、有害金属によって汚染された
土壌や水系の汚染対策として有効であることが示されている。ファイトレメディエーションは、
チェルノブイリ原発事故によって発生したセシウムによる土壌汚染の対策技術としても研究されている。
本セミナーでは、過去の研究事例と福島原発事故によって引き起こされた放射性物質の土壌汚染を比較しながら、
ファイトレメディエーションによる汚染対策の可能性を報告する。
1.ファイトレメディエーション技術の形態と特徴
2.土壌中における放射性物質の挙動と生物毒性
3.植物への取り込みについて
(講師プロフィール)
2006年8月 North Carolina State University(米国ノースカロライナ州立大学)、Ph.D.取得
2006年6月 岐阜大学 工学部 助教
2009年4月 三重大学 大学院生物資源学研究科 准教授 現職
第6講 放射能土壌汚染の除去対策と「ひまわり・大豆・菜の花プロジェクト」の提案
【16:35~17:35】
【講演趣旨】
福島原発による放射能汚染は、高範囲に亘っており、一律の対応では済まされません。特に農地汚染は、
日々安全な食糧生産を行う場所であるだけに、消費者の生命や経営に直結する深刻な事態を引き起こしており、
単なる作付け制限や生活保障で問題が解決するものではありません。田畑に作物を作付け、農業経営を
維持発展させながら農地の除染を行う手法を一刻も早く確立し、実行しなければなりません。
幸い、大豆・ひまわり・なたねなどの油脂作物は、セシウムを多く吸収するとともに、抽出される植物油に
セシウムは全く移行しないことから、こうした油脂作物の積極的な栽培による除染作業と植物油の
地産地消によって経営を維持発展させることが可能です。
他方、植物体に吸収された放射性物質は回収・濃縮して福島原発に戻すしかありません。その工程は、
根・茎・葉は全て回収し、火力発電で焼却し灰は溶融、スラグ化する。絞り粕はメタン発酵装置で消化し、
消化液を脱水。アンモニア・アミノ酸を分離し肥料として活用、セシウムを含む消化汚泥は焼却し、
灰は溶融、スラグ化するという工程を経て福島原発に戻すべきと考えています。
1.福島原発による農地の放射能汚染の実態
2.各種除去法の提案とその実現可能性
3.植物による除染と農業経営「大豆・ひまわり・菜の花に油脂作物としての特性と栽培体系」
4.植物体及び絞り粕の処理方法と焼却施設、火力発電所、メタン発酵施設の現状と課題
【登録日】2011.06.12