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首長に聞く!自治体首長に、地域の特徴や環境保全について語っていただきます。

No.006

Issued: 2019.12.20

第6回 秋田県大仙市長の老松博行さんに聞く、花火のまちで知られる旧大曲市を中心とした秋田県随一の米どころの環境と地域活性化の取り組み

大仙市長 老松博行(おいまつひろゆき)さん

ゲスト:大仙市長 老松博行(おいまつひろゆき)さん

  • 昭和30年1月24日、旧大曲市生まれ。
  • 北海道大学農学部卒業。
  • 昭和52年大曲市役所に入所。
  • 平成17年に仙北郡1市6町1村(大曲市・神岡町・西仙北町・中仙町・協和町・南外村・仙北町・太田町)の合併で大仙市が発足
  • 平成24年に大仙市副市長、平成29年より大仙市長。

聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

目次
大曲の花火をはじめ、刈和野の大綱引きや川を渡るぼんでんなど、郷土色豊かな祭りや行事を四季折々に開催
秋田県随一の農業地帯の特徴を生かして、農業用水路を活用した小水力発電事業を開始
固定価格買取制度を活用した太陽光発電事業の実施により、エネルギーの地産地消を推進
数も多い廃棄物処理施設の更新時期をともに迎えることになって、効率的な維持管理のためには広域化が必要
魅力ある生活環境を実現するためには、豊かな自然と市民に安全・安心で快適な暮らしを提供する生活基盤の整備との調和が必要
8つの地域を元気にすれば、黙っていても大仙市は元気になる

大曲の花火をはじめ、刈和野の大綱引きや川を渡るぼんでんなど、郷土色豊かな祭りや行事を四季折々に開催

大塚理事長(以下、大塚)― EICネットの「首長に聞く!」にご登場いただきありがとうございます。本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。
さっそくですが、大仙市の紹介からお願いしたいと思います。私自身も訪れたことがありますが、秋田名物「いぶりがっこ」大根の特産地でもあり、そしてなんといっても全国的に名高い「大曲の花火」で知られます。これらを核として、先駆的な環境政策とともに地域経済の活性化にも取り組まれていると伺っております。
まずは、市長の目から見た大仙市の紹介をお願いできますでしょうか。

老松市長― 大仙市は、平成17年3月に、旧大曲市を含む近隣の8市町村が合併して誕生いたしました。農業を中心とした田園都市ですが、一方で、まちのにぎわいを商業の発展とともに作り上げてきた商業都市とも言えると思います。
古くから雄物川の舟運や羽州街道など、交通の要衝として発展してきており、秋田新幹線や秋田自動車道などの高速交通網も整備されています。多彩な交流が可能な位置にあると思っています。
市の面積は約870km2で、自然豊かな農業地帯であり、米の収穫量は秋田県内一で、全国でも新潟市に次いで2番目です。
大仙市は、毎年70万人以上が訪れてくださる全国花火競技大会「大曲の花火」をはじめ、毎月花火が打ち上がる「花火のまち」でもあります。現在ではさらに、5月に「大曲の花火・春の章」、10月に「大曲の花火・秋の章」、そして3月に「大曲の花火・冬の章」と題し、四季をとおして「大曲の花火」を打ち上げています。
郷土色豊かな祭りや行事も、四季折々に開催しております。とくに大きな冬の行事は、国指定重要無形民俗文化財の「刈和野の大綱引き」で、毎年2月10日に開催しています。500年以上の伝統ある国内最大級の綱引きと言われるとおり、その大綱の長さは、雄綱が約64m、雌綱が約50m、重さがそれぞれ約10tで、厳寒の夜、約8千人が渾身の力で引き合うというものです。
また、毎年2月11日に行われる「川を渡るぼんでん」は、色とりどりのぼんでん【1】が家々をまわり、川舟で雄物川を渡り伊豆山頂の神社に奉納されるのですが、日本に数あるぼんでん奉納行事の中でも、「川を渡る」のはこの大仙市の「川を渡るぼんでん」のみということです。

大塚― 8千人の綱引きというのは壮大ですね。市内にお住まいの方が中心なのですか。

老松市長― そうです。西仙北地域を中心に、市民の方々が参加しています。

大仙市は、秋田県内一の米の収穫量を誇る農業地帯

大仙市は、秋田県内一の米の収穫量を誇る農業地帯

毎年70万人以上が訪れる全国花火競技大会「大曲の花火」

毎年70万人以上が訪れる全国花火競技大会「大曲の花火」

数あるぼんでん奉納行事の中でも川を渡るのは大仙市の「川を渡るぼんでん」のみ

数あるぼんでん奉納行事の中でも川を渡るのは大仙市の「川を渡るぼんでん」のみ

日本最大級の綱引きと言われる「刈和野の大綱引き」
日本最大級の綱引きと言われる「刈和野の大綱引き」

日本最大級の綱引きと言われる「刈和野の大綱引き」


秋田県随一の農業地帯の特徴を生かして、農業用水路を活用した小水力発電事業を開始

大塚― もっといろいろとお伺いしたいのですが、今日のメインテーマである環境に関わることに移らせていただきたいと思います。
大仙市では、農業用水路を活用した小水力発電事業【2】を、今年度から、県内初の市町村による事業としてスタートさせているのですね。農業への再生可能エネルギーの導入は非常に重要であり、この事業はまさに先駆的で意義深いと思います。事業の概要とともに、大仙市における再生可能エネルギーの導入に対する老松市長のお考えを伺いたいと思います。

老松市長― 小水力発電事業につきましては、大仙市に広く存在する農業用水を活用し、クリーンエネルギーである小水力発電を導入することで、事業主体である市が地域と一体的に環境保全と温暖化防止に取り組むものと受け止めています。県の事業として整備された発電施設を譲り受け、今年度、令和元年6月より運営と売電を開始しております。
今後は、事業により得られた売電収益を公共施設の維持管理費に充てるなど、コスト削減につなげるとともに、再生可能エネルギーの取り組みを広く市民の皆様にPRしてまいりたいと考えております。
実は、再生可能エネルギーの導入につきましては、この小水力発電に先立ち、平成27年12月より太陽光発電事業を大仙市が発電事業者となって実施しております。この事業は、再生可能エネルギー設備の導入促進はもちろん、市有地の有効活用も目的としたものです。

大塚― 小水力以前の話も含めて、老松さんが市長に就任されてから3年ほどの間に多くのご苦労もあったかと思います。いかがでしょうか。

老松市長― 今最大の懸案事項は平成29年7月に発生した豪雨災害からの復旧ですが、再生可能エネルギーの活用にも全力で取り組んでおり、例えば太陽光発電事業では紆余曲折を経験いたしました。当初、市有の草地を太陽光発電に活用しようと民間の事業者さんに事業開始の検討をしていただいたのですが、積雪の少ない地域と比較し日照時間が短いなどの理由から実現が難しかったのです。そのため、市が事業主体となって始めました。地元企業の協力を得て、太陽光パネルの架台の高さを積雪対策のために2mまで引き上げたり、架台の角度を太陽光の入射角の季節変化に応じて変えられるようにしたりと、効率よく発電できるようさまざまな方法を試行してきました。
また、先ほど申し上げた今年度から始めている小水力発電についても、大仙市の強みである広大な農地に整備されている農業用水路を活用しているわけです。

大塚― 農業用水路の活用は大仙市ならではのアイディアともいえそうですが、他の地域にも見本になるのではないですか。

老松市長― 現在、大仙市内なのですが、仙北平野土地改良区でも農業用水路を活用した小水力発電事業を始めようとしています。土地改良区ですから公的団体の事業になりますが、同じような取り組みを民間事業者も行おうという状況にあります。

2019年から運営を開始している、農業用水を活用した少水力発電事業(太田地域の真木渓谷入口)
2019年から運営を開始している、農業用水を活用した少水力発電事業(太田地域の真木渓谷入口)
2019年から運営を開始している、農業用水を活用した少水力発電事業(太田地域の真木渓谷入口)

2019年から運営を開始している、農業用水を活用した少水力発電事業(太田地域の真木渓谷入口)

大仙市が発電事業者となって実施している太陽光発電では、日照時間が短くても効率よく発電できる方法を試行してきた

大仙市が発電事業者となって実施している太陽光発電では、日照時間が短くても効率よく発電できる方法を試行してきた


固定価格買取制度を活用した太陽光発電事業の実施により、エネルギーの地産地消を推進

大塚― 今日、国もエネルギー政策を地方自治体と一緒に進めようとしており、大仙市の取り組みはその好例ではないかと思います。エネルギーの地産地消の面からも素晴らしいと思いますが、市長はどのように感じておられますか。

老松市長― 国のエネルギー政策の見直しの中で、地方公共団体が主体となって実施する事業は、電力の地産地消の発想と相まって公益性が増大してきていると思っています。大仙市では固定価格買取制度を活用した太陽光発電事業の実施により、エネルギーの地産地消を推進し、持続可能な社会の構築をめざしております。
この事業の成果としては、市が太陽光発電所の運営主体となることで、再生可能エネルギーの率先導入だけでなく、地球温暖化対策として年間約1,700トンの二酸化炭素の排出を削減でき、固定価格買取制度を活用することで売電収入による歳入を確保することができました。
この発電事業による収益を、大仙市地球温暖化対策基金に積立て、今後の温暖化対策事業など、事業所や家庭部門への再生可能エネルギーの普及を促進する事業に活用しようと考えています。

大塚― 素晴らしい計画で、これから大いに期待できそうですね。

老松市長― そうですね。市の一般会計に入れるのではなく、市民の皆さんに還元するという考え方で進めております。

大塚― 大仙市では、ほかにも森林資源を活用したバイオマス発電も行われていると伺っていますが、その状況についてもお話しいただけますか。

老松市長― 今年の2月に、秋田県と大仙市が誘致した民間企業が、木質バイオマス発電事業の操業を開始しました。大仙市の豊富な森林資源を活用し環境に配慮した発電を行い、年間2万6,500トンの二酸化炭素削減効果を生んでいます。
このバイオマス発電事業は、発電された電力を地域の公共施設に供給する取り組みを行っているほか、環境学習やエコツーリズムの拠点として、さまざまな団体と連携し、持続可能な社会の実現に向け大きな役割を果たしていただいております。

太陽光発電による収益は地球温暖化対策基金に積み立て、事業所や家庭部門への再生可能エネルギー普及促進事業に活用
太陽光発電による収益は地球温暖化対策基金に積み立て、事業所や家庭部門への再生可能エネルギー普及促進事業に活用

太陽光発電による収益は地球温暖化対策基金に積み立て、事業所や家庭部門への再生可能エネルギー普及促進事業に活用


大塚― エネルギーの地産地消の視点から、太陽光発電やバイオマス発電についてお伺いしてきましたが、市としての地球温暖化への取り組みについてもご紹介いただけますか。

老松市長― はい、わかりました。大仙市がこれまで地球温暖化対策として取り組んできたのは、省エネ型ライフスタイルへの転換に向けた継続的な取り組みのために一般世帯に対して、節電や節水など環境負荷を低減するための行動を継続的に実践してもらうよう、例えば、「環境家族宣言」の取り組みや、小学校4年生を対象とした「こどもエコチャレンジ」などの環境学習推進事業を行ってきました。また、ESCO事業を活用して市内に設置されている約9,000灯の街路灯のLED化や、家庭用LED照明器具の購入に対する助成も行ってきました。さらに、二酸化炭素を排出しない電気自動車を公用車に導入して、地球温暖化防止啓発やパトロール等に活用しています。
そして今回、環境省の補助金事業であるカーボンマネジメント強化事業に採択され、2030年度の温室効果ガス総排出量を2013年度比で約40%削減し、そのうち設備更新により約170トンの二酸化炭素の削減を目標に、今年度(2019年度)に大仙市地球温暖化対策実行計画(事務事業編)の改定を行うことにしております。この目標を達成するため、6つの公共施設をモデル施設として、空調や照明器具の設備更新による高効率化及び運転時間短縮などを行います。

大塚― 市長からご説明いただいたように、本当に多角的に環境配慮をしておられることがよくわかります。これからもますますお進めいただきたいと思います。

老松市長― いえいえ、まだまだと思っております。

数も多い廃棄物処理施設の更新時期をともに迎えることになって、効率的な維持管理のためには広域化が必要

大塚― 少し話題を変えさせていただきます。地方自治体にとっては、廃棄物処理が大変苦労されている課題と思います。大仙市では、今年4月から県のごみ処理広域化計画に基づき、大仙市、仙北市、美郷町による廃棄物処理の広域化を開始したとお聞きしています。
広域化によって、リサイクル率の向上とともに、ごみ処理にかかる二酸化炭素の排出削減にもつながると言われますが、大仙市の状況についてお話しください。

老松市長― お話しいただいたように、県のごみ処理広域化計画がありまして、それに基づき大仙市、仙北市、美郷町が一緒になり一般廃棄物の広域処理を始めています。以前から大仙市と美郷町は一緒に処理をしておりましたが、この4月から新たに、角館や田沢湖が位置する隣の仙北市とも一緒に行うようになったわけです。
背景には、急速に進む少子高齢化、公共施設の老朽化などに伴う維持管理コストの増大という課題があります。これらの課題に対し、これまでも大仙市、仙北市、美郷町は大曲仙北広域市町村圏組合を構成し、消防、介護保険、斎場などについては広域化して取り組んでおり、今回さらに重要な生活インフラである一般廃棄物処理事業にも一緒に取り組むことにしたのです。数も多い廃棄物処理施設の更新時期をともに迎えることになって、効率的な維持管理のためには広域化が必要なのです。

大塚― いろいろとご苦労もあったかと思います。以前の「首長に聞く!」のインタビューで愛知県犬山市の山田市長も、計画段階にあったごみ処理の広域化の重要性について述べておられました。先を行く大曲仙北広域市町村圏組合が、素晴らしい先例になることを期待しております。

老松市長― そうですね。これまでも介護保険や広域消防などを一緒に進めてきた実績もありますし、それぞれが所有する一般廃棄物処理施設を将来にわたって適正に維持し、安定した廃棄物処理を継続していく上で広域化は有効です。わかりやすい例をあげれば、ごみ処理施設や埋立処分場は仙北市さんに余裕があり、し尿処理は大仙市に余裕があるというような状況があったわけです。

中央ごみ処理センター

中央ごみ処理センター

北部ごみ処理センター

北部ごみ処理センター


魅力ある生活環境を実現するためには、豊かな自然と市民に安全・安心で快適な暮らしを提供する生活基盤の整備との調和が必要

満足度・重要度の関係図

満足度・重要度の関係図
市の総合計画の体系に基づく各分野で設定した29項目の満足度(縦軸)と重要度(横軸)の度合いを示したもので、図の中心は、市の満足度と重要度それぞれの平均点。
図の右上にあるほど満足度・重要度が高く、図の右下にあるほど満足度が低く重要度が高いことを表す。
市政の満足度と重要度の関係から、四つのエリアに分割され、右下のエリアは要望度の高い事業と位置づけられる。

大塚― 少し違う角度からお聞きしたいと思います。地域社会に求められていることは多岐にわたりますし、いろいろな見方もあるでしょうが、「住みやすさ」も1つのキーワードといえるでしょう。
ご存知かと思いますが、東洋経済新聞社が毎年発表している「住みよさランキング」を見ますと、大仙市は平成29年版で秋田県内第1位にランクされていますし、平成11年から13年には合併前の旧大曲市が3年連続で全国第1位の評価を得ていました。
このランキングでは、自然環境や生活環境、コミュニティのつながりなどが考慮されているようですが、老松市長は、大仙市の地域コミュニティや住みやすさをどのように感じておられますか。

老松市長― 市民にとって魅力ある生活環境を実現するには、今お話のあった、豊かな自然と、市民に安全・安心で快適な暮らしを提供する生活基盤の整備との調和が必要と考えております。
大仙市では、これまでも、先人によって受け継がれてきた豊かな自然環境や水源環境の保全をはじめ、水道施設、生活排水処理対策などを推進してきています。また、消防・防災体制の充実や地域公共交通対策、そして冬期間の市民生活に大きな影響を及ぼす積雪への対策などにも努めてまいりました。
大仙市では、「市民による市政評価」という制度を平成18年から実施しております。こうした取り組みによって、おかげさまで、「上・下水道」「自然保護」「環境衛生」に関する施策について市民の皆様から高い評価をいただいています。

大塚― 私も何度か大仙市を旅行で訪れていますが、市民の皆さまが住みやすさを高く評価しているのがわかるような気がします。


8つの地域を元気にすれば、黙っていても大仙市は元気になる

中仙地域の「ドンパン祭り」

中仙地域の「ドンパン祭り」

大塚― 住みやすさとも関連するかもしれませんが、日本の地方自治体は人口減少に直面するなど、ある意味では厳しい状況かと思います。しかし、見方を変えれば、新たな施策を見出していく状況にあるといえるのかもしれません。大仙市長として、今後どのような方向をめざそうとされているのか、お考えをお聞かせください。

老松市長― 大仙市では、急速に進む人口減少、そして少子化や超高齢社会の進行など、社会全体の大きな変化に対応して、市民生活の維持と次世代に希望が持てるまちづくりを進めるため、「大仙市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定しています。このような戦略は全国の市町村で策定しているものですが、「地方創生」の実現に向けた実効性のある取り組みを強化しようというものです。
私どもがまず強く思っているのは、産業の振興です。地元商工業の振興、そして農業も先ほど申し上げたように強みの一つと思っていますので、そうした強みを生かした産業の振興が、市の発展の鍵だと思っております。それによって雇用も生み出し所得ももたらし、そして若者も定着し結婚・出産にもつながっていきます。
そういう意味で、地元商工業や農業の振興に加え、企業を誘致し新たな職場・雇用の創出につなげていきたいと考え、積極的なトップセールスをはじめて3年目になります。もちろん簡単に結果に結びつくものではありませんが、いろいろなルートも活用しながら、今一生懸命進めているところです。
移住そして定住していただくことを考えると、市の魅力のアップと情報発信にしっかりと取り組まなければと思っております。具体的には、移住コーディネーターや魅力体験住宅を整備して、体験・相談の窓口などの機能を充実させております。

大塚― 意欲的に取り組んでおられるのがよくわかります。


少年野球の発祥地、神岡地域の「500歳野球大会」
少年野球の発祥地、神岡地域の「500歳野球大会」

「少年野球の発祥地、神岡地域の「500歳野球大会」

南外外小友地区にオープンした地域住民により運営される公設民営のお店「南外さいかい市」
南外外小友地区にオープンした地域住民により運営される公設民営のお店「南外さいかい市」

南外外小友地区にオープンした地域住民により運営される公設民営のお店「南外さいかい市」


老松市長― 地域コミュニティについても、市として考えることが多くあります。大仙市は8つの市町村が合併しましたので、それぞれ8つの市町村の地域に合った活性化策を考えているところです。当たり前ですが、最も大事なのはそれぞれが歴史と伝統文化をしっかりもっていますから、それらをいかに大事にしていくかだと思います。
身近な例もあげられます。最近では、運転免許を返納した人や車を持たない人など、いわゆる交通弱者の皆さんへの取り組みが大事になってきています。これまでは、民間会社が撤退したバスの路線をなんとかしなければという発想で考えてきましたが、そうではなくて、そもそもこの地域ではいつ、どういうものを、どういう方向に走らせればいいのかと、根本のところから考え直していくことが重要だと考えています。大仙市のような地方都市では、地域のスーパーマーケットがなくなってきていますので、公共交通支援と合わせて買い物支援の発想も取り入れながら、路線バスやコミュニティバス、乗り合いタクシーの運行による市民の足の確保に向けた全面的な見直し作業をしております。来年あたりから少しずつ試行できるかなと思っています。

協和地域と遊園交流都市である宮崎県宮崎市の農畜産物を活かした「きょうわ縁結びグルメ グルメガイド」

協和地域と遊園交流都市である宮崎県宮崎市の農畜産物を活かした「きょうわ縁結びグルメ グルメガイド」

大塚― いろいろなことをお話しいただきました。最後の方で言われた、8つの旧市町村のそれぞれの特徴を踏まえ活性化するという考えは素晴らしいと思います。

老松市長― 地域の活性化という場合、その主役は地域の人たちです。役所の職員がするのではなく、地域に住み地域に誇りと愛情を持つ方々が主体にならないといけないのです。そのために、このテーマを担当するすべての職員が働く場所を各地域に移し、地域の皆さんと一緒になって、それぞれの地域の魅力や特徴や強みを見出そうと、「地域の魅力再発見事業」を進めているところです。
例えば、大曲ではやはり花火にこだわりたいですし、神岡地域では実は少年野球の発祥の地なので、野球にこだわり「出場選手の合計年齢が500歳」以上とする「500歳野球大会」というユニークな取り組みを行っており、全国大会もはじめたのですよ。また、西仙北地域では、先ほどお話しした刈和野の大綱引きがありますし、中仙地域ではドンパン節の故郷なのでドンパン祭りが行われています。
各地域にユニークな特徴がありますので、それらを活かした形で地域を元気にしたいのです。8つの地域を元気にすれば、黙っていても大仙市は元気になるだろうという考え方でやっております。


大塚― 「地域の魅力再発見事業」の続きは、改めてお聞きしたいと感じました。今日はお忙しい中、大仙市における環境や地域活性化に関するさまざまな活動をご紹介いただき、ありがとうございました。ますますご活躍されることを祈念しております。

大仙市長の老松博行さん(右)と、一般財団法人環境イノベーション情報機構理事長の大塚柳太郎(左)。

大仙市長の老松博行さん(右)と、一般財団法人環境イノベーション情報機構理事長の大塚柳太郎(左)。


注釈

【1】ぼんでん
梵天。「ぼんてん」ともいう。神の依代または奉納物としての大きな御幣。なお、依代とは憑依物としての樹木、岩石、動物などを指し、御幣とは神道の祭祀に用いられる幣帛の一種。
【2】小水力発電事業
ダムのように河川水を貯めることなく、一般河川、農業用水、砂防ダムなどの水をそのまま利用する発電方式で、日本でも国際的にも、概ね1万kW以下の発電量をもつ水力発電事業を指す。日本では未利用の資源量が多く、地方自治体、土地改良区、NPOなどが事業主体となって普及することが期待されている。

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