一般財団法人環境イノベーション情報機構
首長に聞く!自治体首長に、地域の特徴や環境保全について語っていただきます。

No.010

Issued: 2020.12.21

第10回 北海道滝川市長の前田康吉さんに聞く、都市機能と田園風景が融合した“ちょうどいい田舎”の魅力と可能性

滝川市長 前田康吉(まえだ こうきち)さん

聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎
ゲスト:滝川市長 前田康吉(まえだ こうきち)さん

  • 昭和29年8月30日滝川市生まれ、滝川市育ち。
  • 日本大学農獣医学部卒業。民間会社を経て、平成3年4月より滝川市議会議員、平成7年4月より北海道議会議員(2期)。平成23年4月より滝川市長。現在3期目。
  • 趣味は、映画鑑賞。
目次
アイヌ語の「ソーラップチ」(滝下る所)に由来する、「滝川」の名前
自分が生まれ育ったまちを少しでもよくしたいという思いは皆さん同じ
一人の100歩よりも100人の一歩を進めていくこと
国際的な相互交流がきちんと成り立っているのは、やはり小さなまちのよさ
フルセットの行政はもう無理だろうと思う
環境づくりは教育から始まっている
当たり前にやらなければいけないことをやらなければということで取り組んでいる

アイヌ語の「ソーラップチ」(滝下る所)に由来する、「滝川」の名前

大塚理事長(以下、大塚)― EICネットの「首長に聞く!」は、これからの日本にとって大事になる、環境を大切に安全・安心で暮らしやすい地域社会づくりに貢献しようと企画したものです。本日ご登場いただいた北海道滝川市の前田康吉市長は、滝川市のキャッチフレーズである「世界に誇れる国際田園都市をめざして」に示されるように、フレッシュな発想で市政の先頭に立って努力されておられます。北海道のほぼ中央に位置し、札幌市と旭川市の間、中空知地域の中核である滝川市の将来、さらには日本の将来について、前田市長のお考えをお聞きしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
EICネットは、環境と私たちの暮らしを中心に情報発信をしております。さっそくですが、前田市長から滝川市の紹介を、環境や暮らしにも触れながらお願いしたいと思います。

前田市長― 今日はこのようなインタビューの機会をいただき、大変光栄に思っております。さっそく、滝川市の紹介をさせていただきたいと思います。
滝川市の人口は約4万人で、今ご紹介いただいた通り、旭川市と札幌市の中間、石狩川という大河川の中流にあって、市の約6割が森林や農地になります。
滝川市の語源ですが、北海道の多くの地がそうであるように、アイヌ語に由来しています。アイヌ語で「ソーラップチ」、滝下る所という意味です。
明治23年に滝川村戸長役場【1】が置かれてから今年で開村130年になりましたが、滝川の歴史は石狩川を利用した川の交通の要衝として始まりました。
また、周囲で石炭産業が盛んでしたので、その石炭産業に支えられた商業のまちとして、第三次産業の人口が非常に多くなっています。
気候については、夏は30°Cを越えますし、冬はマイナス20°Cを下回り寒暖差が激しく、また雪が多いのも特徴です。道内でも有数の豪雪地帯で、降雪量が10メートル以上、積雪量が7メートル以上にもなります。

大塚― そのような環境にあった土地の利用などもあるのでしょうか。

前田市長― 滝川市の自慢として、まず一つは日本有数の菜の花作付面積があげられます。120ヘクタールという非常に広大な面積です。5月下旬から6月にかけて、黄色い菜の花の絨毯が見られます。海外の方、特に東南アジアには黄色がラッキーカラーになっている国が多いようで、ずいぶん訪れていただいています。ただ残念ながら、今年は海外からの訪問者がほとんど見られない状況でした。
もう一つは、石狩川と空知川に挟まれた丘陵地帯ということもあって上昇気流が発生しやすい上に、航空管制がない地域なので、グライダーが盛んです。
先ほど申し上げた、石狩川の河川敷に滑走路を造りまして、スカイスポーツのまちをつくろうということで、アジア最大級のグライダーパークになっています。

大塚― グライダーパークの運営には市が関与しているのですか?

前田市長― 民間の協議会が設置されています。その協議会に市の職員を何名か派遣していまして、官民連携で取り組んでいます。いつ来てもどなたでもすぐにグライダーに乗れるようにしており、観光の一つの目玉になっています。

大塚― ところで、私は2年前になりますが、滝川市を訪ねる機会がありました。その際、味付けジンギスカンを賞味したのを覚えています。

前田市長― ジンギスカンが有名になりましたが、もともと滝川では軍服の材料になる羊毛をとるために羊を飼っていたのです。その羊肉を食用に使えないかということで、1950年に設立された滝川畜産試験場が調理方法を研究したのです。その成果を用いて、マツオという会社が松尾ジンギスカンという味付けジンギスカンを開発しました。松尾ジンギスカンの本店も滝川にあり、今日では、ジンギスカンのまちとして知られるようになりました。

市内を流れる石狩川と空知川

江部乙地区の丘陵地に広がる菜の花の黄色い絨毯


大空を滑空するグライダー

滝川市民のソウルフード松尾ジンギスカン


自分が生まれ育ったまちを少しでもよくしたいという思いは皆さん同じ

大塚― ありがとうとございました。前田市長は滝川市のご出身で、滝川市議および北海道議を経験されており、滝川市長として3期目に入っておられます。滝川市のことは隅から隅までよくおわかりのうえで、いろいろなことをお考えだと思います。
最初にお聞きできればと思っていたのは、市長をめざそうと決断されたときのお考えとか、市長になられた後に目標とされていること、特に「世界に誇れる国際田園都市をめざして」というキャッチフレーズへの思い入れなど、お話しいただけますか。

前田市長― 私は生まれも育ちも滝川で、大学生時代以外はずっと滝川を離れたことのない人間です。その人間が滝川に戻って民間で商売をしながら、周囲にいる若い仲間とともに「このまちを何とかしよう」「いいまちにしたいね」という活動をしておりました。その中で市政に若者の声を伝えようという動きになり、その代表として「お前が市議会に出ないか」というありがたい言葉をいただいたのです。商売をやりながら大丈夫かなと思ったのですが、市議会議員にさせていただきました。さらにその後、縁があって、「北海道議会議員に出ないか」というお勧めをいただいたのです。
自分が生まれ育ったまちですし、少しでもいいまちにしたいという思いは皆さん同じだと思います。その気持ちの代表選手としてやってまいりました。

大塚― 道議会議員をされている中で、市長をめざすことを決意されたのですね。

前田市長― 議会におりますと、やはり首長の権限の大きさを実感しました。いろいろなことに実行を伴える執行権を見ている中で、市長という立場で、この滝川のまちを少しでもいいまちにしたいと思いました。仲間もたくさんいますし、滝川から離れて行った仲間も含めて、「滝川に生まれてよかった」「滝川ってこんなにいいまちなんだよ」と自慢できるまちをつくりたいというのが目標でした。
「世界に誇れる国際田園都市をめざして」というキャッチフレーズは、菜の花をはじめとする素晴らしい田園風景が私たちのまちの自慢ですので、世界に誇れるその田園風景を多くの方に知っていただいて、訪れていただきたい、そして国際協力の中で、多くの外国の方とも共生できる社会をつくりたいという思いでつくりました。実は、私は滝川国際交流協会の会長を15年ほど務めさせていただきました。国際交流にかける思いを強く持っていることも、このキャッチフレーズに関係していたかと思います。

一人の100歩よりも100人の一歩を進めていくこと

大塚― 国際交流の話は改めてじっくりとお聞きしたいと思っています。
その前に、私が一昨年に滝川市を訪問させていただいたのは、環境教育の現場を見せていただくことが目的でした。市内の短期大学の学生さんが小学生に熱心に教えている場面を拝見し、学生や市の担当のスタッフと意見交換する機会をもちました。
前田市長が教育のこと、特に環境教育に深い思い入れを持っておられることを理解したのですが、改めて市長が教育、特に環境教育についてどのようなお考えでいらっしゃるのか、そして目指されていることなどについてお話しいただければと思います。

前田市長― はい。環境教育を始めた当初にめざしたのは、一人の100歩よりも100人の一歩を進めていくことでした。若い人もお年寄りも年齢に関係なく、温暖化というものを他人ごとではなく、自分のこととして考えていただいて、必要のない電気を消す、水を出しっぱなしにしないといったことなどを当たり前のこととして、小さなことからはじめようというのが目的でした。
裏返してみると、今できるということは、今しかできないということです。この先、温暖化や環境破壊がさらに深刻化すれば、無駄遣いをやめようというだけでは済まなくなりますので、生活様式や意識を変えることを教育の中で、子どものときから理解してもらおうと、環境教育に取り組み始めたのです。

大塚― 今言われた、「一人の100歩より、100人の一歩」は素晴らしいですね。
日本の温暖化対策は、もちろん大変努力されている方はたくさんいらっしゃるのですが、広く世界を見渡すと、まだ少し遅れているかもしれないと思っています。今の前田市長のお話を伺っていると、改めて地域から取り組んでいくことが大事だなと感じます。
スタートの頃にはいろいろとご苦労があったのではないですか。

前田市長― そうですね。でも、子どもたちに興味を持ってもらえれば、動きはすごく早かったですね。環境に対する意識は、皆さんがちゃんと持っていると感じました。

大塚― 頼もしいですね。

高校生を対象とした環境学習リーダー養成講座

滝川市環境市民大会


国際的な相互交流がきちんと成り立っているのは、やはり小さなまちのよさ

大塚― 先ほども少し触れられた、国際的な活動について是非お聞きしたいと思います。
国際的な活動というのは、ある意味では大都市の方が取り組みやすい面もあるかと思います。一方で、海外から来日する私の友人たちにも、日本に来て、東京、大阪、京都だけでなく、地方都市を訪問する機会があると、「日本っていいところですね」と感動される方が随分いらっしゃいます。滝川市でどのような取り組みをされていて、また外国人の方が滝川市をどのように見ているのかなどお話を伺えればと思います。

前田市長― まず、国際交流に滝川市が取り組むことになったきっかけは、平成2年に滝川国際交流協会という組織がつくられたことにあります。私も設立当初から副会長としてかかわりまして、平成7年からは市長になるまで、会長を務めさせていただきました。
そして、北海道がアメリカのマサチューセッツ州と姉妹州になった縁で、滝川市はスプリングフィールド【2】というまちと姉妹都市を締結いたしました。私もスプリングフィールドには7回か8回ほど訪問させていただいています。
先方にも大学があり、滝川市にある國學院大學北海道短期大学部と教育提携をしています。そして、中学2年生から高校2年生の5〜6人を毎年ジュニア大使として派遣していますし、滝川の市立高校から3人くらいを短期留学という形でスプリングフィールドや隣町のロングメドーに派遣しています。子どもたちは外国や英語に興味がありますが、実際に行ってみて、また触れてみて、はじめて違いがわかると実感するようです。今の時代、インターネットを見ればいろいろと情報はありますけれど、現地のにおいや皮膚感覚はわかりませんよね。やはり現地訪問がすごく刺激になっていまして、帰国してから熱心に英語学習に取り組んでいる生徒も多く、将来、世界で活躍が期待される国際的な人材が育つのに役立っていると思います。

大塚― 小さいうちにいろいろな経験をするのが大事なのでしょうね。

前田市長― そうですね、すべてがそういうことだと思っています。交流を始めてもう30年近くになり、今までに560名ほどを派遣しています。

大塚― たくさんの方が参加されて、世代交代もされているという感じでしょうか。

前田市長― そうですね。戻ってきた子どもたちは、次の子どもたちの派遣に協力してくれています。
日本とアメリカの交流では、一方的に訪問するということも多いと思うのですが、滝川市の国際交流は、向こうからも累計で200名くらいの方に来ていただいており、相互交流がきちんと成り立っています。これは、やはり小さなまちのよさだと思います。
それと、これまでの話は国際交流でしたが、国際協力にも取り組ませていただいています。JICA(独立行政法人国際協力機構)と連携したのが始まりで、平成9年から草の根交流として韓国や中国から子どもたちを受け入れています。他にもいろいろな国の方に来ていただいており、特にマラウイ共和国というアフリカの最貧国から農業研修員を受け入れたことなどがきっかけで、平成18年1月には地域づくり総務大臣表彰(国際化部門)と北海道社会貢献賞(国際協力功労賞)、平成29年にはJICA理事長賞もいただきました。その他のアフリカの国々からも受け入れをしており、43か国にのぼります。
さらに、アフリカ以外の中南米やアジアなどからの研修員や学生などとJETプログラム【3】参加者でカナダやアメリカからのALT(英語指導助手)やCIR(国際交流員)も含めますと、100か国から1,750名の方々を、農業以外にも行政などの分野で受け入れてきました。

大塚― 受け入れられた人数をお聞きして、大変驚きました。素晴らしいですね。それと、日本では国際協力といっても対象国は比較的限られている中で、マラウイをはじめアフリカの国々から農業などの分野の研修員を多く受け入れているのはすごいことだと思います。
市の職員などの皆さまのご苦労ももちろん大きいと思いますが、やはり地域住民の理解が深いということなのでしょうね。

前田市長― そうですね。地域の住民の方が積極的に協力してくださっています。特に農業研修の受け入れでは、地元の農業者の皆さんが、来ていただいたマラウイの研修員に片言の英語と身振り手振りで指導しています。自分たちの持っている農業技術が必要とされているということで、多くの方が自信を持たれてかかわってくれるようになりました。そのうち、「教えた結果を見たいからマラウイに行きたい」という方が出てきて、実際にマラウイに農業技術専門家の派遣や市民を対象としたスタディーツアーの実施等も行いました。また、マラウイを訪問した市民が中心となり、マラウイを支援する「滝川マラウイクラブ」を立ち上げ、研修員が来滝した際には、積極的な受入れに協力していただいております。
伝えている技術の例が、リンゴの接ぎ木です。滝川市はリンゴ栽培が結構盛んで、マラウイの方がリンゴの接ぎ木技術を持ち帰ってマンゴーの接ぎ木に応用したのです。それまで小さな実しか生らなかったのが、接ぎ木によって大きなマンゴーができるようになったのです。また、リンゴジャムのつくり方を教えたところ、彼らがマンゴージャムを作るようになり少し豊かになったとのことです。

大塚― リンゴの接ぎ木とジャム加工の技術をマンゴーに応用されたのは驚きました。

前田市長― マラウイとはずっと交流を続けており、マラウイの大統領が日本に来られた時には、私も2回ほどお会いしています。在日マラウイ大使館の特命全権大使が来滝されたこともあります。ただ、最近は治安の状況が悪化し危険が増している状況ですが、情勢を注視しながら今後も交流を継続していきたいと思っています。
他にも、シンガポールやベトナムなどのアジア地域を対象としたスタディーツアーなども実施してきました。特にカンボジアでは、現地で活動される日本人の教育者の方と連携して、市内の小中学校の教職員の派遣やカンボジア教員の受入れなどを行い、カンボジア教員の能力向上を目的としたプロジェクトも行ってきました。

大塚― 本当に中身の濃い国際交流と国際協力を続けられ、前田市長も自ら現地にしばしば足を運ばれるなど、これからも一層の成果をあげていただければと思います。話はまだまだ尽きないかと思いますが、別の話題に移らせてください。

フルセットの行政はもう無理だろうと思う

大塚― 私が以前訪問した際、もう一つ強く感じたことがあります。滝川市は中空知地域の中核都市として、地域連携の中心的役割を果たされています。連携の内容ですが、廃棄物の広域処理、消防、保健医療サービス、教育など非常に広範囲に及んでおりました。市長に是非伺いたいのは、行政の責任者としての基本的な考え方です。よろしくお願いします。

前田市長― 私自身、民間から市長になった立場から見ると、行政の効率化が必要だろうと考えていました。特に、北海道は人口減少が著しいので非常に厳しい状況にあります。ですから、フルセットの行政はもう無理だろうと思うのです。体育館があります、文化センターがあります、野球場がありますと、全部を揃える行政は厳しくなっているので、連携が必要なのです。消防も、ごみ焼却炉も、一つ一つの市町村が持つのではなくて、大きなスケールで環境破壊を少しでも小さくして造る、今は力を入れてこうした広域連携を進めています。

大塚― 実際に進められると、さまざまな利害関係などもあるでしょうし、いろいろなことを考えなくてはならないのでしょう。

前田市長― 難しいですね、本当に。地域が持続可能であるために必要なのですが、いろいろな壁、障害があります。それらを乗り越えていくのは大変です。

大塚― 本当に難しいのはよくわかります。市長にはぜひ頑張っていただき、地域からモデルケースを作っていただくことが、日本がこれから進んでいくうえで本当に大きなことだと思います。

前田市長― そうですね。そのようになればと考えています。

環境づくりは教育から始まっている

大塚― 今のお話にも、先ほどの環境教育に関するお話にも関係しますが、環境に関わる市の行政についてお聞きしたいと思います。滝川市は、平成15年に環境都市宣言をされており、その後もCOOL CHOICEの推進など多くのことに取り組んでおられます。市長から、環境政策を進める根っこの部分についてお話しいただけますか。

前田市長― はい。環境都市宣言をした平成15年は、私が道議会議員を務めていたときでした。当時の市長さんが北海道庁の林務部長出身の方で、森林そして環境に非常に関心が高く、木をたくさん植えようと、環境都市宣言をしたのです。「美しい地球を未来に引き継ぐ」という大きな希望を持って、環境にやさしいまちをつくることを宣言したのです。そして、地球環境と共生する、「環のまち たきかわ」を標ぼうしました。省エネルギーやリサイクルを進め、天ぷら油でバスを走らせるなどの取り組みを始めたのです。
その後、地球温暖化への取り組みを本格的に始めたのが、私が市長に就任していた平成28年です。ここからが「エコたき」【4】の始まりです。いろいろな方に支援や指導をいただきながら進めました。高校生にもずいぶん頑張っていただき、エコたき君と仲間たちというキャラクターも作っていただきました。
COOL CHOICEの啓発については、中学校の美術部を対象に「エコたき」をテーマにしたポスターコンテストを開催し、優秀作品をステッカーにして、市内を走るバスに掲出したり、廃棄物回収業者の協力により、新しく導入したごみ収集車にエコたきくんと仲間たちのイラストをつけてもらい、市民の皆さんに向けた「エコたき」の PRを行っています。実は、COOL CHOICEに賛同し活動を始める前から、クールビズやウォームビズ、ダウンライトなどいろいろな取り組みをしてきていたので、市民の皆さんにも一早く理解していただけたと思います。
最近の滝川市の環境教育の特徴は、専門の講師を招いて高校生と大学生に教育し、環境学習リーダーを養成しています。そして、養成された学生たちが、今度は逆に先生になって、小学生や幼稚園児に教えるという活動をしています。すべては人づくりです。滝川市では、環境づくりは教育から始めているのです。
教えるとなると、子どもたちにどう理解してもらえるかについて考えるので、非常に熱心にやってくれています。先ほど國學院大學北海道短期大学部の学生の話をしましたが、市内の滝川高等学校――私の出身校です――が文部科学省のスーパーサイエンススクールの指定を受けており、生徒たちが放課後や休日に自主的に集まって、劇やゲーム、エコ工作や紙芝居などの工夫をしています。そして、それらの活動を先輩が後輩へ引き継いでくれるものですから、切れ目なく続いています。

滝川市立西高等学校美術部員制作によるエコたき原画

路線バス内に掲出された中学校美術部のポスターコンテストによるステッカー


大塚― 私が一昨年、滝川を訪問した際に見せていただいたのが、この一環だったのですね。この訪問の際にはエコドライブの話も伺ったのを覚えています。

前田市長― 市内に自動車教習学校があるのですが、そこは滝川市出身の方が社長をしており、エコドライブを進めることでCOOL CHOICEに協力していただいています。卒業講習や年間約2,000名が受講する高齢者講習時におけるエコドライブ講座の実施、登録者数約1,000名のメールマガジン等を活用し、エコドライブ情報やオリジナル動画を定期的に配信することで、常に初心を忘れることなく、エコドライブを意識した運転を心がけるように啓発活動を続けています。

市民向けのエコたきパンフレット
[拡大図]

CO2排出縮減エコドライブ推進のPR


当たり前にやらなければいけないことをやらなければということで取り組んでいる

大塚― お話を伺っていると、滝川市内の取り組みが非常に前向きに計画されていることがわかります。大事なことは、そうした雰囲気に対する市民の皆さんの理解だと思います。滝川市で環境への取り組みが盛り上がる理由など、滝川市の取り組みの特徴を、滝川市以外の方々へのメッセージとしていただきたいと思います。

前田市長― 滝川市は先ほどもお話ししたように、大きな都市との違いはいろいろとあると思います。ただ、都市機能と田園風景が融合したまちですので、“ちょうどいい田舎”だと思っています。
ちょうどいい大きさ、ちょうどいい居心地のよさというのが、滝川市のよさであって、またいろいろな教育、国際教育も環境教育も、子どもたちとの距離感が非常に近く接することができるのが、効果を出すうえで非常に役立っていると思います。

大塚― 「エコたき 4か条」の一つも、「きれいな自然に感謝しよう」とされています。最初に滝川市の紹介でもお話しいただいた、菜の花の黄色い絨毯などもそうだと思いますが、自然が身近にあることで、それが地域の皆さんの考え方や行動にも影響するのでしょうかね。

前田市長― 滝川市の美しい環境をいかに守りつないでいくかが今後重要になってきます。例えばですが、子どもたちが田舎の風景を守ろうと桜の木の植樹などもしています。
もっとも、このような行動は、今では全国各地に広がってきていると思います。
私は、環境省が進めている森里川海プロジェクト【5】の北海道の代表をさせていただくなど、北海道はもとより日本全体を視野に入れた環境行政に積極的に関わっている方かと思います。しかし、それらの活動についても滝川市での活動についても、特別なことしているつもりはありません。当たり前にやらなければいけないことに取り組んでいるつもりでいます。

大塚― 前田市長の人柄も出たお話を伺いながら、大変大事なチャレンジを続けられていることを感じます。ぜひこれからも頑張っていただきたいと思います。本日は本当にありがとうございました。

滝川市長の前田康吉さん(左)と、一般財団法人環境イノベーション情報機構理事長の大塚柳太郎(右)


注釈

【1】戸長役場
明治時代前期に、区・町・村の行政事務の責任者である戸長が戸籍事務などを行った役所のことで、現在の町村役場にあたる。
【2】スプリングフィールド
アメリカ合衆国東部のマサチューセッツ州に所在する市。ニューヨークから約200キロメートル北東に位置し、人口は約15万人。
【3】JETプログラム(Japan Exchange and Teaching Programme)
語学学習などを行う外国青年招致事業。昭和62年に、総務省、外務省、文部科学省および一般財団法人自治体国際化協会の協力の下、地方単独の事業として開始された。外国の青年を招へいし、地域レベルの国際交流の進展や語学教育の充実を目指すプログラムであり、既に6万6000人以上が来日し活動している。
【4】エコたき
滝川市の市民運動、『みんなで「エコたき」しよう!!』のキャッチフレーズ。エコたき4か条、「エネルギーを大切に」「ごみを減らして快適ライフ」「楽しみながらリサイクル」「きれいな自然に感謝しよう」を掲げている。
【5】森里川海プロジェクト
日本の第3次生物多様性国家戦略(2007年閣議決定)で、「森・里・川・海のつながりを確保する」ことが基本戦略の一つに位置づけられ、森、里、川、海を連続した空間として積極的に保全・再生を進める政府の方針が示された。2013年には「つなげよう、支えよう森里川海」プロジェクトが環境省により開始され、2016年に「森里川海をつなぎ、支えていくために」と題する提言が発表された。