一般財団法人 環境イノベーション情報機構

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No.025

Issued: 2002.05.23

広がるエコ認証木材、繊維製品から魚まで環境配慮のお墨付き制度が次々登場

目次
持続可能な方法で管理された森林を認証するFSC[註]
FSC認証の審査では環境団体からの意見も聴取
繊維製品や水産物にも環境配慮のお墨付き
認証を取得した製品も市場に登場
FSC認証を所得した梼原町の森林は間伐により太陽光が入り明るい。下草が生え生態系が多様になる。

FSC認証を所得した梼原町の森林は間伐により太陽光が入り明るい。下草が生え生態系が多様になる。

 環境配慮をうたった製品が増えてきました。しかし、本当に環境負荷の少ない方法で原料を生産し加工しているのか、有害物質は使っていないのか、消費者が自ら確かめるのは困難です。そこで、独立した第三者機関がこれをチェックして、独自に定めた環境配慮の基準を満たした製品にお墨付きを与える動きが出てきました。環境認証制度です。さまざまな業界で新たな制度が生まれています。

持続可能な方法で管理された森林を認証するFSC[註]

 高知県梼原町森林組合では、持続可能な方法で管理された森林にお墨付きを与える「FSC認証」の取得に取り組みました。「その作業は生態系を壊すことになりませんか」「もっと環境負荷の少ない方法はありませんか」―。認証審査では、審査員が木材の伐採現場や間伐跡地を視察。森林の手入れ方法や環境への配慮手法、作業道路の敷設に対する考え方などについて、現場作業員に細かな質問を投げかけました。審査にパスした同森林組合の管理する森林は、2000年10月に認証を取得しました。
 FSCは、環境団体や林業会社、木材商社などが1993年に設立したNPO(非営利組織)です。森林管理に関して10の原則を定め、これらに基づく基準を規定。基準を満たした方法で管理された森林には、認証が与えられます。10原則の内容は、森林関連の国際条約や国内法の遵守、森林・周辺生態系・環境の保全、先住民や労働者の権利保護、管理計画の文書化、モニタリングと評価など。環境だけでなく、社会、経済面からも評価します。


[註] FSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会、本部メキシコ)について

FSC認証の審査では環境団体からの意見も聴取

梼原町森林組合では、チェーンソーのオイルも環境に配慮した製品を使っている。

梼原町森林組合では、チェーンソーのオイルも環境に配慮した製品を使っている。

 審査は、管理計画などの書類審査と現場審査、公聴会などから成ります。梼原町森林組合の場合は、同森林組合のさまざまな利害関係者を集めて、公聴会を開きました。参加したのは、製材工場や木材生産業者などの取引先や地域の環境団体など。森林を適切に管理しないと川の水質や水量にも影響を与えるため、地元でとれる魚・アメゴの養殖業者も参加しました。公聴会では、梼原町内外の約40人が同組合の取り組み状況に対して意見を述べました。
 このような厳しい審査を経て認証を取得した森林は、世界54カ国に386カ所(2002年3月現在)。国内では、2002年5月までに、梼原町森林組合のほか速水林業(三重県海山町)、アサヒビール株式会社、東京農工大学の4団体の管理する森林が認証されています。


繊維製品や水産物にも環境配慮のお墨付き

 繊維製品のエコ認証もヨーロッパから紹介されています。「CSM-2000」シリーズと呼ばれる繊維製品の総合監視システムです。[1]有害な素材や染料を使っていないなど環境面・安全面で配慮していること、[2]一定の品質が保証されていること、[3]労働環境が適切であること、[4]途上国から原材料を購入する際に適正価格で取り引きするなど貿易面で公正であること−などを総合的に認証する制度です。
 制度を運営するのは、ヨーロッパの大手繊維メーカーが共同で設立したエコテック社(ドイツ・ケルン)。認証はテュフ社(同・ミュンヘン)が行います。2001年夏に制度が開始されたヨーロッパでは、すでに20社近くが認証を取得しているといいます。国内では、エコテックの日本法人エコテック・ジャパン株式会社(東京都港区)が認証取得のための支援業務を行っています。
 国内では、株式会社ダイドーリミテッドが中国工場での認証取得に向けて準備しているほか、複数の企業が認証取得を目指しています。 環境配慮の認証は、水産物にも広がっています。海外では、持続可能な方法で水揚げされた魚介類を認証するNGO、MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)が認証制度を運用しています。これまでに、テムズ川のニシンやオーストラリアのロブスター、アラスカのサーモンなどが認証を受けています。
 国内でも、生態系に配慮した方法で水揚げされたマグロを認証する制度が2002年2月に立ち上がりました。社団法人・責任あるまぐろ漁業推進機構が制度を運営しています。


認証を取得した製品も市場に登場

三菱製紙のFSC認証紙

三菱製紙のFSC認証紙

 認証を受けた原料で生産された商品も登場し始めています。三菱製紙株式会社では、FSCの認証を受けたチリのユーカリ材を原料とした光沢紙や上質紙などを2002年5月から本格生産しています。家具販売の株式会社アスプルンド(東京都港区)でも、FSC認証を受けたニュージーランド産パイン材を使ったテーブルなどを販売しています。
 FSCの認証を受けた木材でできた製品には、FSCのロゴマークをつけることができます。ただし、そのためには、認証された木材を、流通・加工段階で他の木材と区別して管理する必要があります。FSCでは、木材加工会社や輸入商社、製紙会社など加工・流通に携わる全ての団体が管理システムを構築していないと、製品にロゴマークをつけることはできません。三菱製紙の八戸工場や輸入元の伊藤忠商事などでも、こうしたシステムを構築しています。
 環境にやさしいとうたった製品が次々と発売されるなかで、これらのエコ認証が商品選択時の有力な判断材料となることは間違いありません。


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(記事:土屋晴子)

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