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No.245

Issued: 2015.09.10

廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び災害対策基本法の一部を改正する法律の制定〜大規模災害によって発生する廃棄物処理への対策に向け、制度的担保を措置

目次
改正の概要・主旨:大規模災害発生時の関係者の役割分担や処理方法・工程等の検討
改正の背景:災害発生の都度、災害対策の必要性や災害廃棄物の迅速な処理の重要性が再認識された
改正の内容:災害の規模ごとに、適用する措置の方向性を定める
終章:平時の備えから大規模災害まで、切れ目のない災害廃棄物対策の実現に向けて

改正の概要・主旨:大規模災害発生時の関係者の役割分担や処理方法・工程等の検討

災害廃棄物

災害廃棄物

 東日本大震災により生じた廃棄物については、概ね当初の予定どおり平成26年3月までに福島県の一部を除いてその処理を終えました。
 処理の過程で得られた教訓・知見を将来に活かすべく、環境省では有識者会議を立ち上げて検討を行い、その成果として、平成27年2月に「巨大災害発生時の災害廃棄物処理に係る対策スキーム」(以下「対策スキーム」という。)が取りまとめられました。この対策スキームは、大規模な災害により生じる廃棄物処理への対策について、国、都道府県、市町村、事業者等関係者の役割分担や、処理方法・工程等についての基本的な方向性について取りまとめたものです。
 この提言のうち、制度的担保が必要な措置について整備するため、平成27年通常国会で「廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び災害対策基本法の一部を改正する法律」(以下「改正法」という。)が制定され、平成27年8月6日に施行されました。

 改正法は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)と災害対策基本法(昭和36年法律第223号)の2つの法律を改正したものです。
 廃棄物処理法については、災害廃棄物の処理の原則や関係者の連携・協力の努力義務、災害時における一般廃棄物処理施設の設置に関する特例を新たに規定しています。
 また、災害対策基本法については、大規模な災害発生時の環境大臣による災害廃棄物の処理に関する指針の策定や、環境大臣による廃棄物処理の代行について新たに規定しています。


改正の背景:災害発生の都度、災害対策の必要性や災害廃棄物の迅速な処理の重要性が再認識された

法整備の必要性
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 環境省では、東日本大震災の発生後、「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針(マスタープラン)」(平成23年5月16日環境省。以下「マスタープラン」という。)を策定し、東日本大震災により生じた廃棄物の処理の大きな方向性を示しました。また、平成23年8月に制定、施行された「東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法」(平成23年法律第99号)は、環境大臣による廃棄物処理の代行を規定するなど、環境省の自発的な取組と一体となり、環境省の「災害廃棄物対策において司令塔的役割を果たす」との姿勢を広く知らしめるものとなりました。
 平時とは異なり、環境省自らが災害廃棄物の処理に取り組んだことにより、様々な経験・知見が得られ、それらは、その後の災害時における迅速な被災地支援として活用されました。また、災害時における廃棄物処理関係者の活躍は、災害時における廃棄物の迅速な撤去、処理の重要性と、そのためには環境省をはじめとする自治体、事業者等廃棄物処理関係者の活躍、協力が不可欠であることが、災害対策に携わる者の共通認識として浸透していく契機となりました。
 また、東日本大震災以降、政府においても、毎年、防災に係る法律が制定又は改正されています。その背景には、「平成25年台風26号」による東京都大島町での土砂災害や、「平成26年8月豪雨」による広島県広島市における土砂災害など、近年比較的規模の大きい災害が相次いでいることがあげられます。災害発生の都度、災害対策の必要性が再認識され、被災地の迅速な復旧・復興を図るためには災害廃棄物の迅速な処理が極めて重要であるということが再認識されました。
 これらを背景に「対策スキーム」が取りまとめられ、そして、今般の改正法制定へとつながりました。


改正の内容:災害の規模ごとに、適用する措置の方向性を定める

災害廃棄物対策における災害の規模と適用する措置の考え方
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廃棄物処理法及び災害対策基本法の一部を改正する法律の概要
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 改正法は、
(1)平時の備えから、毎年起こり得る規模の災害にまで対応する廃棄物処理法と、
(2)数十年、数百年に一度起こり得る規模の災害に対応する災害対策基本法
とによって構成されています。
 今回の改正法は、毎年起こり得る規模の災害においては、平時の廃棄物処理に係る体制・システムを活用し、その地域の実情に即した形で円滑かつ迅速な処理が進められるよう、廃棄物処理法の枠組みを最大限活用するとともに、大規模な災害は平時の枠組みでは対応できないことから、災害対策基本法を改正して災害対応力を強化しようとするものです。

(1)廃棄物処理法の改正  廃棄物処理法の改正においては、[1]平時の備えを強化するための関連規定(次のi)からiii)まで)と、[2]災害時における廃棄物処理施設の新設又は活用に係る特例措置(次のiv)からvi)まで)を整備しました。

  • i)災害により生じた廃棄物の処理に係る基本原則の明確化
    災害により生じた廃棄物の処理に当たっても、生活環境の保全及び公衆衛生の支障を防止し、適正な処理を確保すること、また、分別、再生利用等により減量化が図られるよう配慮されなければならないことを明確化しました。
  • ii)国、地方自治体及び事業者等関係者間の連携・協力の努力義務の明確化
    災害廃棄物の適正な処理が円滑かつ迅速に行われるため、災害時における廃棄物処理に関わる関係者の適切な役割分担及び連携・協力に係る努力義務を規定しました。
  • iii)国が定める基本方針及び都道府県が定める基本計画の規定事項の拡充
    廃棄物処理法第5条の2に基づき環境大臣が定める基本方針及び同法第5条の5に基づき都道府県が策定する廃棄物処理計画の両方について、規定しなければならない事項として、新たに災害時における関連施策の推進と施設整備についての事項等を追加しました。
  • iv)災害時において市町村が一般廃棄物処理施設を設置する場合の特例
  • v)災害時において市町村から委託を受けた者が一般廃棄物処理施設を設置する場合の特例
  • vi)産業廃棄物処理施設の活用に関する特例

 ※iv)及びv)は、災害廃棄物の処理のため特に必要となる仮設の廃棄物処理施設の設置を念頭に置いた規定であり、vi)は、発災後、速やかに既設の産業廃棄物処理施設を災害廃棄物の処理に活用することができるよう措置したものです。

(2)災害対策基本法の改正  災害対策基本法の改正においては、[1]大規模な災害から生じる廃棄物の処理に関する環境大臣による指針の策定とともに、[2]大規模な災害時の環境大臣による処理の代行措置を規定しました。
 これらの措置は、将来の大規模な災害の発生を見越して、東日本大震災の発生後に環境省が作成したマスタープランに当たるものを、今後の大規模な災害の発生後も環境大臣の責務としていち早く示すことを法定化するとともに、市町村機能が著しく損なわれるような規模の災害が発生した場合には、被災地域の廃棄物処理が滞る事態に速やかに対処するため、被災市町村からの要請に基づき、一定の要件に該当すると認める場合は環境大臣が廃棄物処理の代行をすることができることを規定したものです。(なお、災害対策基本法においては既に廃棄物処理法に規定された委託基準等を緩和できる特例措置が規定されており、今回の改正法は大規模災害時の対策を従来以上に拡充するものです。)


終章:平時の備えから大規模災害まで、切れ目のない災害廃棄物対策の実現に向けて

災害時の廃棄物対策に係る計画・指針等関係図
[拡大図]

 今回の改正法は、「対策スキーム」において示された基本的考え方や、「災害廃棄物対策指針」(平成26年3月)のほか、各自治体における災害廃棄物処理計画の策定や、平成26年度に各地方環境事務所の主導によって全国8ブロックで立ち上げられた地域ブロック協議会等地域レベルでの連携・協力等が進められることによってはじめて意義のあるものとなります。
 各自治体、関連事業者等御関係者におかれては、今回の改正法の内容を御理解いただき、平時の備えから大規模な災害まで、切れ目のない災害廃棄物対策を行うため、引き続き御協力をお願いいたします。



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(記事・図版:環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課)

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