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No.273

Issued: 2019.08.05

プラスチック資源循環戦略について(環境省環境再生・資源循環局リサイクル推進室)

目次
プラスチックを取り巻く国内外の動向
プラスチック資源循環戦略の概要
今後の対応

 本年5月に策定したプラスチック資源循環戦略は、資源有効利用、海洋プラスチックごみ問題やアジア諸国の輸入制限への対応等、世界的にも重要性が高まっているこれらの課題に対処し、持続可能な社会の実現に向けた我が国の方向性を示すものであり、目指すべき方向性として3Rやバイオマスプラスチックの導入に関する野心的なマイルストーンを掲げています。今後、本戦略に基づき、速やかに具体的な施策を進めていきます。

プラスチックを取り巻く国内外の動向

我が国におけるプラスチックのマテリアルフロー(2013年時点)
[拡大図]

 プラスチックはその機能の高度化を通じて食品ロスの削減やエネルギー効率の改善等に寄与するなど、社会問題の解決に貢献する一方、金属等の他素材と比べて有効利用される割合は世界全体では未だ低く、また、不適正な処理のため世界全体で年間数百万トンを超える陸上から海洋へのプラスチックごみの流出があると推計され、このままでは2050年までに魚の重量を上回るプラスチックが海洋環境に流出することが予測されるなど、地球規模での環境汚染が懸念されています。
 我が国はこれまでプラスチックの適正処理や3Rを推進することで陸上から海洋へ流出するプラスチックの抑制を図ってきましたが、一方で、1人当たりのワンウェィ容器包装廃棄量が世界で2番目に多く、アジア各国による輸入規制の拡大などを背景に、これまで以上に国内資源循環が求められています。


プラスチック資源循環戦略の概要

プラスチック資源循環戦略(概要)
[拡大図]
https://www.env.go.jp/press/files/jp/111746.pdf

 環境省では、(1)に述べたような課題に対応すべく、2018年7月に、中央環境審議会循環型社会部会の下にプラスチック資源循環戦略小委員会を設置し、議論を重ねてまいりました。その結果、本年3月に中央環境審議会から答申をいただき、本年5月に「プラスチック資源循環戦略」を策定しました。
 本戦略においては、基本的な対応の方向性を「3R+Renewable」としています。すなわち、循環型社会形成推進基本法の基本原則(3Rの優先順位等)を踏まえた上で、①ワンウェイの容器包装・製品をはじめ、回避可能なプラスチックの使用を合理化し、無駄に使われる資源を徹底的に減らすとともに、②より持続可能性が高まることを前提に、プラスチック製容器包装・製品の原料を再生材や再生可能資源(紙、バイオマスプラスチック等)に適切に切り替えた上で、③できる限り長期間、プラスチック製品を使用しつつ、④使用後は、効果的・効率的なリサイクルシステムを通じて、持続可能な形で、徹底的に分別回収し、循環利用(リサイクルによる再生利用、それが技術的経済的な観点等から難しい場合には熱回収によるエネルギー利用を含め)を図ることとしています。特に、可燃ごみ指定収集袋など、その利用目的から一義的に焼却せざるを得ないプラスチックには、カーボンニュートラルであるバイオマスプラスチックを最大限使用し、かつ、確実に熱回収するとしています。いずれに当たっても、経済性及び技術可能性を考慮し、また、製品・容器包装の機能(安全性や利便性など)を確保することとの両立を図ります。
 また、海洋プラスチック問題に対しては、陸域で発生したごみが河川等を経由して海域に流出することに鑑み、上記の3Rの取組や適正な廃棄物処理を前提に、プラスチックごみの流出による海洋汚染が生じないこと(海洋プラスチックゼロエミッション)を目指し、犯罪行為であるポイ捨て・不法投棄撲滅を徹底するとともに、清掃活動を推進し、プラスチックの海洋流出を防止します。また、海洋ごみの実態把握及び海岸漂着物等の適切な回収を推進し、海洋汚染を防止します。さらに、国際的には、こうした我が国の率先した取組を世界に広め、アジア・太平洋、アフリカ等の各国の発展段階や実情に応じてオーダーメイドで我が国のソフト・ハードの経験・技術・ノウハウをパッケージで輸出し、世界の資源制約・廃棄物問題、海洋プラスチック問題、気候変動問題等の同時解決や持続可能な経済発展に最大限貢献します。
 推進に当たっては、国民レベルの分別協力体制や優れた環境・リサイクル技術など我が国の強みを最大限生かし伸ばしていくとともに、国民、NGO、事業者、地方自治体、国等による関係主体の連携協働や、技術・システム・消費者のライフスタイルのイノベーションを推進し、幅広い資源循環関連産業の振興により、我が国経済の成長を実現していきます。
 これらを基本原則としつつ、(1)資源循環(レジ袋有料化義務化をはじめとしたリデュース等の徹底、効果的・効率的で持続可能なリサイクル、再生材・バイオプラスチックの利用促進)、(2)海洋プラスチック対策(2020年までに洗い流しのスクラブ製品に含まれるマイクロビーズの削減徹底など)、(3)国際展開、(4)基盤整備という4本柱を重点戦略とし、具体的な施策の方向性を示しています。
 以上の戦略的展開を通じて、我が国のみならず、世界の資源・廃棄物制約、海洋プラスチック問題、気候変動等の課題解決に寄与すること(天然資源の有効利用、海洋プラスチックゼロエミッションや温室効果ガスの排出抑制)に加え、動静脈にわたる幅広い資源循環産業の発展を通じた経済成長や雇用創出が見込まれ、持続可能な発展に貢献することとしています。
 また、本戦略の展開に当たっては、以下のとおり世界トップレベルの野心的な「マイルストーン」を目指すべき方向性として設定し、国民各界各層との連携協働を通じて、その達成を目指すことで、必要な投資やイノベーションの促進を図ることとしています。

(リデュース)

・消費者はじめ国民各界各層の理解と連携協働の促進により、代替品が環境に与える影響を考慮しつつ、2030年までに、ワンウェイのプラスチック(容器包装等)をこれまでの努力も含め累積で25%排出抑制するよう目指します。

(リユース・リサイクル)

・2025年までに、プラスチック製容器包装・製品のデザインを、容器包装・製品の機能を確保することとの両立を図りつつ、技術的に分別容易かつリユース可能又はリサイクル可能なものとすることを目指します(それが難しい場合にも、熱回収可能性を確実に担保することを目指します)。
・2030年までに、プラスチック製容器包装の6割をリユース又はリサイクルするよう、国民各界各層との連携協働により実現を目指します。
・2035年までに、すべての使用済プラスチックをリユース又はリサイクル、それが技術的経済的な観点等から難しい場合には熱回収も含め100%有効利用するよう、国民各界各層との連携協働により実現を目指します。

(再生利用・バイオマスプラスチック)

・適用可能性を勘案した上で、政府、地方自治体はじめ国民各界各層の理解と連携協働の促進により、2030年までに、プラスチックの再生利用(再生素材の利用)を倍増するよう目指します。
・導入可能性を高めつつ、国民各界各層の理解と連携協働の促進により、2030年までに、バイオマスプラスチックを最大限(約200万トン)導入するよう目指します。


今後の対応

 今後、本戦略に基づき、速やかに具体的な施策を進めていきます。プラスチックの資源循環を推進する実効的な施策を検討・実施し、世界のプラスチック対策をリードしていきたいと考えています。



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(記事・図版:環境省環境再生・資源循環局リサイクル推進室)

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