一般財団法人環境イノベーション情報機構

EICピックアップ環境を巡る最新の動きや特定のテーマをピックアップし、わかりやすくご紹介します。

No.280

Issued: 2021.05.17

自然公園法の改正について(環境省自然環境局国立公園課)

目次
国立公園・国定公園を取り巻く状況
国立公園・国定公園におけるこれまでの取り組み
自然公園法改正の概要
今後の対応
参照サイト

 自然公園法の一部を改正する法律が、令和3年4月23日に成立し、5月6日に公布されました。自然公園法に基づき、日本を代表する優れた自然の風景地を国立公園や国定公園に指定し、これまでも自然の保護や観光などの利用を進めてきました。今回の改正は、特に利用面の強化を図るため、地域の自治体や事業者が積極的・主体的に取り組む仕組みを新たに設け、「保護と利用の好循環」を実現し、地域の活性化にも貢献していくものです。


噴煙を上げる雌阿寒岳(阿寒摩周国立公園)(提供:環境省)

噴煙を上げる雌阿寒岳(阿寒摩周国立公園)(提供:環境省)

国立公園・国定公園を取り巻く状況

 日本は、南北約3,000kmにわたる長い国土であること、海岸から山岳まで大きな標高差があること、大小さまざまな数千の島を有していること、はっきりとした四季の変化があることや雨の多い気候であることなどから、先進国で唯一野生のサルが生息していることをはじめ、クマ類やニホンジカなど数多くの中・大型野生動物が生息する豊かな自然環境が残されています。国立公園・国定公園は、生物多様性の保全上、重要や役割を担っているとともに、観光利用などにより国内外の多くの人々を引き付ける重要な地域資源となっています。また、日本の国立公園等では人々の暮らしが営まれてきており、多様な自然を背景とした地域独自の歴史や文化も魅力の一つとなっています。

 一方で、少子高齢化・人口減少により地域の過疎化が進んでおり、地方に位置する国立公園等の管理の担い手不足が今後ますます懸念されます。また、旅行形態が団体旅行から個人旅行にシフトしていく中で、国立公園等の利用者数も減少傾向が続いています。ライフスタイルの多様化やインバウンド利用者の急増に伴って、各個人の興味や関心に基づいて、より深い自然体験や文化体験を求めるなど、多様な旅行ニーズが増加しています。

サンゴ礁(慶良間諸島国立公園)(提供:環境省)

サンゴ礁(慶良間諸島国立公園)(提供:環境省)

伊勢神宮(伊勢志摩国立公園)(提供:環境省)

伊勢神宮(伊勢志摩国立公園)(提供:環境省)

国立公園等利用者数の推移(平成元年〜30年)(環境省データよりEIC作成)

国立公園等利用者数の推移(平成元年〜30年)(環境省データよりEIC作成)
[拡大図]


国立公園・国定公園におけるこれまでの取り組み

 観光は地方創生への切り札であり、成長戦略の柱となっています。環境省でも、国立公園を世界水準の「ナショナルパーク」としてブランド化していくため、インバウンド利用者の増加を目的とした「国立公園満喫プロジェクト」に取り組んでいます。これまでに、グランピングなどの新しい宿泊体験の提供、ビジターセンターへのカフェ導入など公共施設の民間開放、コンテンツ集作成などによる自然体験アクティビティの磨き上げ、廃屋撤去などの引き算の景観改善、国内外へのプロモーション等、総合的な取り組みを進めてきました。

 新型コロナウイルス感染症の流行以降、特にインバウンド利用者は激減していますが、一方で、自然や健康への関心の高まりにより国立公園等の価値が改めて見直されており、例えば、国立公園等でテレワークにより働きながら休暇も楽しむ「ワーケーション」の受け入れが進められています。

自然公園法改正の概要

 「国立公園満喫プロジェクト」の成果も踏まえ、国立公園等の自然の価値を活かし、地域活性化に資する滞在型の自然観光を推進するためには、魅力的な自然体験アクティビティの提供や、旅館街や温泉街などにおける上質な街並みづくりが必要と考えています。このためには、これらの担い手である、ガイド事業者、旅館やホテルなどの事業者、地方自治体等が、地域の実情に応じて、積極的・主体的に取り組みを進められるようにすることが重要です。一方で、国立公園は国、国定公園は都道府県が管理しており、建物や案内板をはじめとした工作物の新築などは規制されていることから、こうした管理の枠組みや規制により、地域の積極的・主体的な取り組みの意欲を削いできた可能性も否定できないと考えています。これを踏まえた改正の主な内容は、以下の3点です。

@自然体験活動促進計画制度の新設

グランピング(阿蘇くじゅう国立公園)(提供:環境省)

グランピング(阿蘇くじゅう国立公園)(提供:環境省)

 市町村やガイド事業者等による協議会が計画を作成し、環境大臣等の認定を受けた場合、関係する許可を不要とする等の特例により、手続を簡素化します。計画の具体的内容としては、グランピングやカヌーなどの自然体験アクティビティの提供、登山道などのフィールド整備、利用ルールの作成や周知、観光案内所やWebサイトなどによる利用者への情報提供、ガイドなどの人材育成等が想定されます。

 これにより、地域関係者が一体となって行う、魅力的な自然体験アクティビティの開発・提供・ルール化などが進められ、長期滞在につながる国立公園の楽しみの充実が図られます。


A利用拠点整備改善計画制度の新設

廃屋撤去と跡地の活用(大山隠岐国立公園)(提供:環境省)

廃屋撤去と跡地の活用(大山隠岐国立公園)(提供:環境省)

 市町村や旅館事業者等による協議会が計画を作成し、環境大臣等の認定を受けた場合、関係する認可を受けたこととする等の特例により、手続を簡素化します。旅館街や温泉街などを対象としており、計画の具体的内容としては、廃屋の撤去と跡地を活用した旅館や店舗などの整備、建物の色彩などの景観デザインの統一、広場や散策路の整備、電柱の地中化等が想定されます。

 これにより、地域関係者が一体となって行う、廃屋の撤去や旅館街・温泉街などの機能の充実、景観デザインの統一など、自然と調和した街並みづくりが促進され、魅力的な滞在環境の整備が進みます。


B餌付け等の行為への規制や違反行為への罰則の強化

 野生動物への餌付けなどの行為に対する規制や、国立公園等における違法伐採などの禁止行為の違反に対する罰則の引き上げを行います。

 これにより、野生動物による人的・物的被害の発生の防止や、禁止行為への厳しい対処が可能となり、多くの方々が楽しめる豊かな自然環境の確保が一層図られます。


今後の対応

 今回の改正はこれまでの国立公園満喫プロジェクトの成果を法律に位置付けているものです。改正も踏まえて、これまでは一部の国立公園で先行的に進めてきた国立公園満喫プロジェクトの取り組みを全34国立公園や国定公園にも展開し、自然を満喫できる質の高いツーリズムの実現とブランド化、減少した国内外の利用者の復活、地域の活性化を図っていきます。

参照サイト

〜著者プロフィール〜

三宅 悠介●みやけ ゆうすけ

環境省 自然環境局 国立公園課 課長補佐
平成20年環境省入省。釧路自然環境事務所、羅臼自然保護官事務所、自然環境局野生生物課希少種保全推進室等を経て、平成30年から現職。