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環境Q&A

PCBについて 

登録日: 2006年04月05日 最終回答日:2006年04月06日 健康・化学物質 環境ホルモン

No.15956 2006-04-05 08:59:51 分析虫

 すいませんがPCBについて教えて下さい。無知とも思われるかも知れませんが、御教授宜しくお願い致します。
 使用されていたPCBは必ずKC300、KC400、KC500、KC600が含まれているのでしょうか?
 また、PCB分析でクロマトグラムを確認した時、ピークが一つしか一致しないという事はあるのでしょうか?

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No.15965 【A-1】

Re:PCBについて

2006-04-06 00:32:32 筑波山麓

JIS K 0093をよく読んでください。告示付表3には、PCBの標準品は、KC300,KC400,KC500,KC600を1:1:1:1に混合したものとありますが、JIS K 0093のPCB標準液の参考には、「試験用PCBおよびその混合割合として、たとえば次のようなものが考えられるが、試験担当者がそれぞれの経験によってPCBの選定および混合を行うことが望ましい」とあります。市販品は、告示付表3のKC300,KC400,KC500,KC600を1:1:1:1に混合したものが多く、試料のピークをみて標準品を調整しているところもないので、このような質問になったと推察します。また、この等量混合はカネミ油症の原因になったカネクロールの混合比と聞いております。20年程度以前ですが、東京湾の海底土壌を分析すると、DDT等のピークが高く、そしてKC300,KC400,KC500,KC600のピークがすべて検出しておりました。しかし、一般の土壌ではこれら(KC300〜KC600等)の1つ〜3つのピークパターンしか検出しないこともありました。したがって、すべてのピークが必ず含まれているわけではありません。
また、このJIS K 0093、および告示付表3の方法は、PCB純品を分離定量しているものでもありません。PCBはビフェニルの水素が1〜10個の塩素と置換した構造をもつ物質です。PCBの異性体は理論上210種が可能であり、試料に含まれるPCBの種類も多様となって、GC−ECD測定のピークパターンは複雑で、分離カラムの充填剤の種類、分離条件によりクロマトグラムのパターンは微妙に変化します。したがって、クロマトグラムのパターンについての判断はかなりの経験的知識が必要です。カネクロール系のPCB(標準品)のピークパターンについては、JIS K 0093に参考図例が示されており、各ピークの相対ピーク高比、保持時間をこの参考図例に類似するように測定条件を整えることが大事です。最後に、ピークがひとつしか一致しないということですが、ほかにピークが検出されておりますでしょうか。もし、ピークがひとつだけでほかにピークがなければ、フタル酸エステル類(DEHP,DOP,DBP、DHP)を疑ってください。これらはプラスチックの可塑剤で、あらゆるものが汚染源です。このような試料は、ヘキサン層を発煙硫酸(非常に反応性が高く、危険ですので取り扱いは十二分に注意する)で洗浄し、最後に水でpH7になるまで洗ってフタル酸エステル類を除去します。

回答に対するお礼・補足

 筑波山麓さん 御回答ありがとうございました。大変勉強になりました。
 最後の質問は私の書き方に問題があり追加記述させていただきます。フロリジルカラム、シリカゲルカラムそして筑波山麓の仰るように発煙硫酸で処理したのですが、妨害物質が多い為か、ピークがたくさん出ますが保持時間を標準液と比較すると一つや二つ、多くても五つのピークしか当てはまりません。このピークはPCBによるものかそれとも妨害物質によるものかと悩んでおります。
質問の仕方が悪くて申し訳ございませんでした。

No.15970 【A-2】

Re:PCBについて

2006-04-06 14:05:42 海月

> すいませんがPCBについて教えて下さい。無知とも思われるかも知れませんが、御教授宜しくお願い致します。
> 使用されていたPCBは必ずKC300、KC400、KC500、KC600が含まれているのでしょうか?
> また、PCB分析でクロマトグラムを確認した時、ピークが一つしか一致しないという事はあるのでしょうか?

PCBの主要はカネクロールですが、アロクロールなどの製品(KCとはパターンが少し違う)もあるため、一概にKCが必ず入っているとは言えません。

また筑波山麓さんの仰るように、測定装置上の問題で、組成パターンが変わりますが、安定器等の絶縁油、カネミ油症のような熱媒体油など、使用中に製品PCBの組成パターンが変わることもあります。
使用中に揮発したり、容器への吸着、加熱等による反応・変化で低塩素化がいなくなったり、ある同族体が減りある同族体が増えた、といったデータがあります。

クロマト上でピークが一致しないのは妨害物質の影響が考えられます。非分離炭化水素化合物やn-アルカンといった油状試料由来の成分などです。あとはキャピラリーカラムの性能と昇温条件でしょうか。
分離が悪く妨害物質の影響を受けてしまいR.Tがずれ、製品PCBのクロマトと一致しない、妨害物質が被り一致しない、といったこともあります。当方は高分解能GC/MSで測定していますが、それでも影響を受けることがしばしばです。

分析方法については民間分析会社や電中研(絶縁油関係のネタ)などのWEBサイトで見ることもできますので探してみてください。

回答に対するお礼・補足

 海月さん 御回答していただきありがとうございます。
 ネットで調べてみた所、PCBの定性にはGCーECDを用いる所もありますが、定量となると海月さんの会社のようにGC−MSで行なっている会社が多いようです。
 また絶縁油では妨害物質が多い為、経験知識が必要とされていました。
 もっと勉強していきたいと思います。

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