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環境Q&A

BODについて 

登録日: 2013年11月25日 最終回答日:2013年12月02日 水・土壌環境 水質汚濁

No.39490 2013-11-25 14:01:11 ZWlec55

下水処理場勤務初心者です。
放流水のBODについて質問させてください

放流水はアンモニア性窒素1mg/l前後、滅菌用次亜は1.0ppmの添加率で注入し、大腸菌は1桁です。植種液は下水道試験法にあるように前日の流入水の上澄液を使用しています。植種液のN-BODは測定されていません。この状態でBODは2〜3mg/l、C-BOD≒BODです。アンモニアが2〜3mg/l程度出てもN-BODはほとんど測定されません。
という状況ですが、水道局の担当者様はN-BODが測定されないんはおかしいといいます。アンモニア性窒素が出ているなら、硝化細菌を含んだ植種液を使うべきだとおっしゃっております。
私は使うべきではないと思います。どうするべきでしょうか??

完全硝化すれば何の問題もないのですが・・・

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No.39493 【A-1】

Re:BODについて

2013-11-26 20:18:00 mashi-nana (ZWlba51

 法律上の「5日間BOD」とは、 C-BODとN-BODの合計です。 C-BODは好気性従属栄養性細菌の中で増殖速度の速い群が5日間で有機物を分解することによって消費される酸素量です。このために、これらの細菌が十分に生息していないサンプルでは植種という手段が採用できます。
しかし、N-BODに関与する硝化細菌は、「5日間BODに関わる従属栄養性細菌群」と比較すると、増殖速度が極端に遅い細菌です。このために、5日間という培養日数ではなく、BOD仕込時のフラン瓶中の硝化細菌の数如何で「5日間N-BOD」が決まってしまいます。この二つの異なる細菌群によるDOの消費を「5日間BOD」という枠で括るのは納得できないかもしれません。しかし、硝化細菌は5日間ではあまり増えないことを考慮すると多少硝化細菌がサンプルに混入する程度でしたら「5日間BOD」値にさしたる影響を与えないと考えています。
N-BODはフラン瓶内のアンモニア濃度ではなく、硝化細菌数により値が変わりますので、逆に、水道局の担当者がお話されているように、植種液に硝化細菌を混ぜた場合を考えますと、もし、植種液が硝化細菌とアンモニアイオンが入り混じった河川水等であったならば、植種液の「5日間BOD」が硝化により異常に高くなり、差し引かれたサンプルの「5日間BOD」が実際より低く算出されてしまう事態も考えられます。
処理場勤務とのことなので、N-BODに関わる運転管理にも触れておきます。
ご指摘のように、処理が安定していれば、硝化細菌は活性汚泥中に留まるので、放流水中にアンモニアが残存していましても、N-BODは高くありません。
放流水のN-BODが顕著に高く計測されるのは、放流水中に硝化細菌が多量に含まれる時です。活性汚泥を取り巻く外部環境が変わりますと、活性汚泥を構成する一部細菌が活性汚泥から離脱して放流水中に流出します。この時に同時に硝化細菌も流出します。
活性汚泥の凝集性が悪化した場合などは透視度にも影響が見られますので、比較的N-BODの判断が容易なのですが、外部環境の変化によって活性汚泥菌種が変わる場合は透視度の低下が認められないので、日常的な管理では硝化細菌が放流水に流出したことを気付けず、結果的にN-BODの上昇を招いてしまいます。怪しいと考えられる場合は活性汚泥の硝化速度やRrを判断材料にするとよいでしょう。また、 N-BODの手当は放流水の滅菌によるのは手っ取り早いです。

⇒続く

回答に対するお礼・補足

ご丁寧な回答 本当にありがとうございます。
mashi-nana様がおっしゃるように放流水のBODは測定者によって如何様にもコントロールが出来ますし、コントロールが出来なければ、硝化抑制運転を採用している下水処理場のBODは???みたいなことになります。
季節の変わり目には脱窒が十分進まなくなり、それでも完全硝化を目指すとその後には汚泥フロックの細分化→有機物処理遅れ→脱窒汚泥浮上→MLSSの低下→有機物処理遅れ→猛烈脱窒汚泥浮上・・・
なんて事が過去に有ったそうです。アンモニア態窒素が減ることで環境にはいいのかもしれませんが、脱窒エネルギーが不足しているような季節には脱窒エネルギー量(流入負荷量)に見合った分だけ硝化してもらう・・・(最初沈殿池数の調整は出来ないらしいです)結果、多少なりともアンモニアは残ってしまうので次亜添加量でN-BODをコントロールする・・・これはしょうがないと考えています。施設能力を見たら現在の流入水量は設計能力をはるかに超えておりました。それでも経験とカンで硝化の進行度合いをコントロールしている水質担当者の方たちは凄いなぁって思っています。
mashi-nana様がおっしゃるような内容を含めた話し合いが水道局担当者様と水質担当主任が平和的に出来るといいのですが・・・残念ながら私は主任ではないので願う事しか出来ません。

No.39494 【A-2】

Re:BODについて

2013-11-28 08:03:34 mashi-nana (ZWlba51

⇒続き(すでに投稿したと思っていたのですが、連続投稿となり、採用されなかったようです。そのときに何を書いたか原稿がありません。思い出すままかなり端折って投稿しました。前後がつながらないかも)
・・・・・・・・・・・・
 このように、(大腸菌群等の)滅菌処理を含めると、アンモニアイオンを放流水に残存させようと、N-BODは運転管理で如何様にもコントロールすることの出来る測定値です。こうしたことから、硝化細菌を含んだ植種液という発想が生じたものと考えますが、下水処理場勤務初心者さんのご指摘のように技術的な面からも採用は難しいかと思います。
 かつての規制当局が恣意的にであったにせよ水質規制に「N-BODを含む5日間BOD」を導入したことは、河川環境の保全という観点から生じたことは確かなことです。 
 「完全硝化すれば何の問題もないのですが・・・」と書かれていられるように、もし処理施設(若しくは電力)に余裕があるのなら、出来るだけアンモニアを減らすように運転することを含めて、水道局の担当者様とお話し合いされたらいかがでしょうか。

No.39497 【A-3】

Re:BODについて

2013-11-28 14:35:58 papa (ZWlbd18

mashi-nana様のとても丁寧な回答でほぼ全ての疑問点が解消されてると思いますが、処理場勤務者の実態から見て水道局の担当者の考えには隠れている理解すべき点があると考えて回答を付けさせていただきます。

処理場管理は法令遵守はもちろんのこと、放流先の水域の保全にも十分留意しなければらない公共的な使命があります。そういったことは処理場勤務者でほとんどの水質担当は常識として身に着けています。
しかしながら、経済的な要請や昨今の省エネとかの風潮で見かけの水質データさえ示せれば硝化運転など不要と考えているモラルハザードな水質担当がボチボチ発生してます。水道局の担当者の方はそのような見かけの適合だけではないよと注意喚起されたものと思います。mashi-nana様の回答にあるように植種液よりも流出SSの影響が大きいというのは実務的には納得できます。
残念ながら、未硝化運転を省エネと称したり、大量の塩素注入で硝化菌対策をしたりしている処理場をいくつか知っています。一部の処理場では水処理の運転より塩素注入のほうに関心があるというような本末転倒運転も行われています。
水道局のご担当にはそこまでの見識があるのではないかと推察しています。

回答に対するお礼・補足

Papa様 紳士的で有りながら鋭い突っ込みにはいつも脱帽です。察するに下水処理場関係で相当な経験をされた民間維持管理業者様なのでしょうか?
おっしゃるようなモラルハザード的考えは自治体の水質担当者様はもとより、その上司〜所長様〜その上の偉い人まで当然のように正論としておっしゃっております。 私たち維持管理業者にもそういった考えを持った人はいるかもしれませんが、私たちはそのお客様が示した契約内容にそって処理場の維持管理を行っています。私の所の水質主任が言っていた事ですが、硝化促進か、抑制か、電力優先かなんて自治体の水質担当者毎に言うことがバラバラで話にならないそうです。ステップ水路もなければ機械撹拌装置がないのに硝化脱窒運転をやれとか、窒素を取れとか、きれいな水を出していたらやっぱり電力最優先だからSSをもっと出せとか・・・
主任の話を聞いていたら、役人様達何しに来てんだろ???って思いました。
papa様がおっしゃるような放流先の環境保全を留意した正しい処理場管理をする為には、その下水処理場の運転方針(運転思想)を明確にしていただく必要と自治体担当者〜偉い人たちの認識を高めていただくことが必要なのかなと思いました。

No.39503 【A-4】

Re:BODについて

2013-12-02 17:14:34 papa (ZWlbd18

処理場と規制部局を半々ですごしているお役人ですが、処理場であれ企業であれ処理施設の運営方法を見ていると、質問者様と同じように施設ににかかわる人の思想がよくわかるように思います。
かつては迷惑施設の代表選手だった処理場ですが、現在ではそのような論調はほとんどありません。きちんとした施設を作ってきちんと管理すれば地域の皆さんからそれなりの評価を受けるものと思います。
短期的に小手先の手段で見かけを整えるようなやり方では、何らかの行きがかりでカタストロフを生じる例をいくつか体験してきました。
包括委託の方向で進んでいる情勢ですので、発注者側の無理難題はそれはそれとしてモラルハザードの素人に対応するのはそう難しいことではありません。御社の将来に向けての技術力蓄積のため仕様書の範囲で試行出来ることはたくさんあると思います。
ご健闘を祈ります。

回答に対するお礼・補足

papa様 
紳士なアドバイスありがとうございます。
仕様書の中身が発注者側の無理難題とならない事を祈っております。小耳に挟んだ話ですが、仕様書の数値を決めるお役人様が下水処理のまったくの素人であると聞きました。我々の技術力向上のためのさまざまな試験運転等、運転の幅がなくなってしまうとの事です。

papa様がお役人様であるなら、そんな事がないよう正しい方向に導いてほしいものです。

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