パブリックランドインフォメーションセンターは、アンカレッジのダウンタウンにある。周辺は草屋根の観光案内所やみやげ屋が軒を連ねる繁華街だ。このセンターは、ANILCA法を契機として設立されたビジターセンターだ。「パブリックランド」とは、国立公園や国立野生生物保護区などの国が管理する土地を指している。施設の運営は、国立公園局、野生生物局、森林局、公有地管理局など国有地を管理する各機関により共同で行われている【2】。
「これなんていう動物かしら」インフォメーションセンターに置かれた剥製は、ジャコウウシのものだった。牛のような大きな体を長い毛が覆っている。頭にへばりつくように生えている角は、頭頂から下の方に伸び、先端が少しだけ前を向いている。ジャコウウシは、かつて乱獲により絶滅の危機に瀕していたが、現在は個体数も増えてきているそうだ。ほかにも、ムースやカリブーの剥製が展示されている。
このセンターには、アラスカの公有地に関するたくさんの資料が備えられている。デナリ国立公園のような有名なところばかりではなく、一般の観光客がほとんど足を運ばないような、遠く隔たった保護区の資料などもある。
レセプションの職員の方にお願いして、先ほどジュディーさんから伺ったANILCA法について伺うことにした。
「ANILCA法ですか? 確かファイルがあったと思います」
ほどなく1冊のバインダーが書庫から出てきた。法律が印刷された紙は少し黄ばんでいる。ファイルは原文だけで、法律を解説したようなパンフレットなどはないようだった。法律についていくつか質問してみたが、通り一遍の答えしか返ってこなかった。