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No. アメリカ横断ボランティア紀行(第20話) アラスカへ(その2)
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Issued: 2009.03.18
アラスカへ(その2)[1]
写真1:魚類野生生物局のリージョン7事務所

 スワードからアンカレッジに戻った次の日は、晴天に恵まれ暖かい1日となった。アラスカでは9月は晩秋だ。
 「前任のNさん、Kさんはどうしていますか?」
 アラスカ地域を管轄する魚類野生生物局のリージョン7事務所でのインタビューは、こんなふうに始まった。
 「今の担当のMさんもがんばってくれています。だけど、日本(環境省)の担当者は早く代わり過ぎますね。顔と名前を覚えて、これからというところで担当者が代わってしまうのはとても残念なことです」
 そういうケントさんは、このアラスカ地域の仕事一筋20年以上。アメリカでもかなり長い。その間、日本側の担当者はどれだけ代わったのだろうか。

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 目次
魚類野生生物局リージョン7事務所訪問
アラスカにおける国際協力
国立公園局アラスカ地域事務所
魚類野生生物局リージョン7事務所訪問
 魚類野生生物局のリージョン7事務所はアンカレッジの繁華街(ダウンタウン)から少し離れたミッドタウンにある。アラスカと日本の間を渡り鳥が行き来しているため、日本の環境省との関係はとても深い。
 「日本政府と仕事をしていて一番困るのは、職員が2年ごとに異動してしまうことです。物事をうまく進めるためには、信頼関係や人間関係を構築することが重要だと思うのですが、日本のカウンターパートはあっという間に代わってしまう感じがします」
 魚類野生生物局や国立公園局などでは、継続的なプロジェクトの担当者は長期間同じポストにとどまるのが一般的なのだそうだ。インタビューを受けていただいたケントさんは、アラスカの渡り鳥一筋に26年間ものキャリアをもつ。
 日本の公務員は、一般的に2年〜3年の周期で人事異動がまわってくる。早いと1年とちょっとで異動しなければならないこともある。さらに、魚類野生生物局のカウンターパートとなる環境省のポストは、英語が相当堪能でなければ務まらない。限られた人材をやりくりするために、異動時期も不定期になってしまいがちだ。

 もちろん、魚類野生生物局も科学的な調査をすべて自前で行っているわけではない。クリントン政権時代に調査研究業務に関する大幅な組織改編があり、政府機関に所属する生物学や生態学に関する研究者を新しい機関に一元化するという構想が打ち出された。これらの科学担当職員は、紆余曲折を経た結果、最終的には米国地質学調査所(United States Geological Survey: USGS)に所属することになった。
 「この事務所の入っている建物には、USGSのアラスカ生物学センター(Alaska Biological Center)が入っています。魚類野生生物局との人事交流も盛んです」
 魚類野生生物局が、主に保護区の管理業務上必要な調査(survey)及び個体数調査(census)を担当しているのに対し、USGSはより基礎的で詳細な調査・研究を実施している。

アラスカにおける国際協力
 「アラスカは、1つの州が事務所の管理地域と同じという点で、米国内では珍しい地域です。そのため、野生生物行政が地域の政治と結びついてしまいがちです」
 アラスカはロシアと隣接するだけでなく、東アジアや南アメリカなどの国々との間を渡り鳥が往き来している。アラスカに生息する渡り鳥の保護のためには、国際的な協力体制が不可欠だ。
 「渡り鳥の業務を通じて、次第にネットワークを構築することによるメリットに気付くようになりました」
 ベーリング海峡をはさんで隣接しているロシアとは、国は違っても、抱えている問題は共通しているものが多い。国境を越えて協力しあうことにより、問題解決や対策費用の低減につながる。魚類野生生物局全体としても、ここ10〜12年間は国際的なプログラムに力を入れるようになってきているという。
 「例えば、同じような問題を抱える野生生物保護区と『姉妹保護区(sister refuges)』協定を結んでいます。ロシアの姉妹保護区からリーダーとなる職員を招聘してトレーニングを行ったり、ニュージーランドから外来ネズミ駆除の専門家を招聘してアラスカの島嶼部の管理に生かしたりしています」
 ところが、米国政府としては、歴史的にも地理的にも関係の深い南アメリカとのつながりを重視している。そのため、アラスカ独自の国際関係を構築するには、ワシントンDCにある本局に頼るのではなく、地域事務所が主体的に取り組む必要がある。ロシアだけでなく、渡りルートを共有するアジア、オーストラリアなどの太平洋諸国、ユーラシア大陸諸国、北極圏諸国などの国々との関係も重要だ。

 「魚類野生生物局は、『現場独立型の(decentralized)組織』と呼ばれています。こういった事務所独自の取り組みが可能なのも、このようなフレキシブルな組織だからなのでしょう」
 ワシントンD.C.本部の局長に対して報告義務があるのは、地域事務所長のみだ。一般の職員は関係課としか直接連絡することはないそうだ。人事交流も限定的だ。地域事務所職員が本部で勤務する場合には短期派遣(details)がほとんどで、数週間からせいぜい2年間しか勤務しない。人事も完全に独立している。事務所には約200名の職員が勤務しており、地域全体の総職員数は600名にのぼる。
 「地域事務所の経費は、基本的に政府の通常予算(base budget)でまかなわれていますが、最近は、WWF、オーデュボンソサエティーなどからの寄付などによる予算(soft money)も増えてきています」
 こうした追加的な資金が多いことも、地域事務所が高い独立性を持つひとつの要因なのかもしれない。

 今回のインタビューは、渡り鳥をめぐる日米協力の話が主だったので、野生生物保護区における管理業務については、フェアバンクスのユーコンフラット及びアークティック(北極)国立野生生物保護区の管理事務所でお話を伺うことにした。
国立公園局アラスカ地域事務所

 翌日、今度は国立公園局のアラスカ地域事務所を訪問した。事務所は、セキュリティーもしっかりしていて、観光客が訪れるような施設ではない。私服の私たちは少々浮いている。
 インタビューに応じてくれたのは、地域事務所副局長のジュディーさん。ユニフォームではなく、スーツ姿だ。部屋も大きく、私たちが通常働いているレッドウッドの現場とは雰囲気がまったくちがう。「副局長」という役職は相当偉いはずだが、とても気さくに対応していただけた。

写真2:国立公園局アラスカ地域事務所
写真2:国立公園局アラスカ地域事務所
写真3:アラスカ地域事務所副局長のジュディーさんと
写真3:アラスカ地域事務所副局長のジュディーさんと
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