<妻の一言>(旅の伴侶)
クレーターレイク国立公園に立ち寄った時のことです。私たちは思わぬ「同乗者」と出会いました。料金ゲートをくぐるとすぐ右側に小さなトイレがあるのですが、そこで事件が「発覚」しました。
車のダッシュボードの隅から小さな動物が顔を出しました。すぐに隠れましたが、しばらくするとまた顔を出します。小さなノネズミでした。どこから乗ってきたのかわかりませんが、もしかしたら、レッドウッドで乗り込んでしまったのかもしれません。
しばらくドアを開けておきましたが、出て行きません。また、考えてみると、このネズミがこの公園に分布しているのかもわかりません。
「売店の図鑑で見てみよう」
ということになって、図鑑を探しましたが、あいにくいい図鑑が売られていませんでした。
とにかく、まずはネズミをつかまえなければなりません。立ち寄ったスーパーで小さな箱型のワナを購入しました。小さなプラスチック製のものです。
店の店員に聞いたら、
「クラッカーにピーナッツバターを塗るといいわよ」
と教えてくれました。小さなピーナッツバターのビンも購入しました。
夕方、車から荷物を降ろしていると、またネズミに会いました。今度は荷台の食料入れのあたりにいました。今度は一瞬目が合ってしまいました。なかなかかわいらしいネズミでした。私たちは、この同乗者を「チュー助」と呼ぶことにしました。
しかし、急いでつかまえなければ、ロッキー山脈を越えてしまいます。また、日本食などの貴重な食料も食べられてしまうかもしれません。
ところが、なかなかチュー助はつかまりません。エサのクラッカーが挟まり扉がうまくしまらず、エサだけを持って行かれてしまったりしました。既に食料のありかがわかったようで、いろいろ食べ散らかしてくれています。
今度はピーナッツバターを直接箱に塗りつけることにしました。朝、箱を引き上げてみると、中に小さな茶色い塊が見えました。持ち上げてみると想像以上に軽く、中ではネズミが眠そうにしていました。
書店を見つけて図鑑を調べてみると、「ディアーマウス」という種類であることがわかりました。幸いこのネズミの分布域はとても広く、このあたりにも分布していることがわかりました。
宿泊したモーテルの近くにちょっとした茂みがあったので、そこで逃がすことにしました。箱のふたを開くと、チュー助が這い出してきました。しばらく体を地面にこすりつけて毛づくろいしていましたが、すっと草むらに潜り込んで姿を消してしまいました。
ここ2〜3日は、チュー助のおかげですっかりレッドウッドのことを忘れていましたが、静かな2人旅に戻ると、またレッドウッドが懐かしく思い出されるようになりました。レッドウッドにはもう戻ることはないのですが、それがまだ信じられませんでした。
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