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No. アメリカ横断ボランティア紀行(第24話) 大陸横断(レッドウッド〜フォートコリンズ)
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Issued: 2010.04.08
大陸横断(レッドウッド〜フォートコリンズ)[2]
 目次
ラッセン火山国立公園
ロッキー越え
ラッセン火山国立公園
ラッセン火山国立公園の風景。公園内は乾燥していて針葉樹がまばらに生えている

 次に訪れたラッセン火山国立公園は、モンタナ州からもう一度カリフォルニア州戻ったところにある。レッドウッドとは全く異なる内陸性の乾燥した気候である。この公園もすっかり冬じまいしてしまっていた。
 でもそれだけにとどまらない、何かさびれたような雰囲気が漂っている。公園面積は43,000ヘクタール、年間利用者数は41万人(2003年)だ。地図を見ても、カリフォルニア州北内陸部にひっそりとマークされている。ヨセミテやキングスキャニオンなどの大公園とは比べるべくもない、イメージの沸きにくい国立公園だ。
ラッセン火山国立公園のゲート。他の公園と比べるとかなり簡素な印象を受ける

 レッドウッドには「世界一高くなる木」があるが、火山を特徴とする国立公園はここ以外にも多い。一部しか見ていないものの、正直「息をのむ」ような景観がここにはあるわけではない。季節のせいもあって利用者も少なく、入口ゲートで年間パスポートを持っていると知ると少しがっかりした様子でパンフレットをくれた。おそらく職員のコストは徴収額を上回っているだろう。冬季ということもあるのだろうが、公園内の施設はことごとく閉鎖され、職員をほとんど見かけなかった。利用可能なトイレも簡素な便槽型ばかりだった。
 私たちにとっては人も少なくのんびりとピクニックテーブルを占領できるので言うことはないが、この「貧しそうな」国立公園を目の当たりにして、複雑な気持ちにさせられた。同じ国立公園といえども、ヨセミテ国立公園やグランドキャニオン国立公園のような有名公園もあれば、小規模な公園もある。言い換えると、国立公園にも「貧富の差」があるのだ。
 フィー・プログラムの導入により、国立公園にも貧富の差のようなものが広がっているという予感があったが、こうして目の当たりにすると、制度のかかえる大きなリスクを思わずにはいられない。人気の高い国立公園でのサービスと施設の過剰整備、利用者数増加への過度のインセンティブ、国立公園管理組織の歪みなど。
 入場料金をそのままその公園の管理費に充てること、それもビジターサービス、施設整備、臨時職員の給与のみに限定することの影響は、こうした相対的に魅力の低い有料公園にもっとも大きなしわ寄せがくることになる。
国立公園の入口標識

 この公園を去るとき、入口看板の裏側に「Thank you for visiting Lassen Volcanic National Park(ラッセン火山国立公園を訪問していただきありがとうございます)」と書かれているのに気がついた。これまでいくつかの公園を回ってきたが、このような言葉に出会ったことはなかった。あったとしても「You are leaving Mammoth Cave National Park(あなたはマンモスケイブ国立公園を出ます)」など。これまで国立公園を訪問して、「感謝された」という記憶はなかった。利用者には国立公園内での様々な規制や制約、国立公園のすばらしさに関する解説やメッセージはあっても、このような心温まるメッセージはなかった。貧しい(と勝手に決め付けては申し訳ないが)からこそ、利用者の大切さが理解できるのだろうか。
 資本主義が独占するアメリカ社会において、「お客様」の観点は欠かせない。一方で、国立公園のビジターに対する意識は少し違っているらしいと感じることもあり、そのギャップが小さな違和感として残されている。そのギャップは、すなわちビジターはカスタマーではないという認識なのではないかと、ここラッセン火山国立公園の看板の言葉を見てふと思った。
 ほんの短時間の滞在であったが、ラッセン火山国立公園の訪問は大変印象深いものとなった。
■ラッセン火山国立公園(Lassen Volcanic National Park)
 カリフォルニア州北東部、カスケード山脈に位置する火山を特徴とする国立公園。1914年から1921年にかけて大小の噴火が観察された。
 歴史的には、1907年に、Cinder Cone National MonumentとLassen Peak National Monumentという2つの異なる国立記念物公園として設立され、国立公園としての設立は1916年。公園には5つの車道ゲートがある。
 1972年にラッセン火山ウィルダネス(原生地域)が指定され、公園区域のほぼ全域がウィルダネスとして保護されている。利用者数は、2008年現在で38万人と若干減少傾向にある。
ヘレン湖とラッセンピーク
ヘレン湖とラッセンピーク

ロッキー越え
 ラッセン火山国立公園を出発し、車を一路西に向け走らせる。カリフォルニア州を出る頃、グレートベイスンと呼ばれる乾燥地域に入ってきた。乾燥するとともに気温も上がり、Tシャツになった。グレートベイスンは、ネバダ州のほぼ全域と西隣のユタ州の西半分を含む。この地域からは海に流れ出す河川がないため、降った雨はすべて蒸発により失われる。道路わきには草地が広がり、時折灌木林や松林のような乾燥した樹林地がある。
 しばらく走ると、木のほとんどない平野に入ってきた。このあたりは、西部開拓時代には「死の40マイル」と呼ばれていた難所で、駐車場脇にあった解説板によれば、この区間を越えられずに命を落とした人も少なくなかったという。
 この乾燥地域を抜けるインターステート80号の走行車両は軒並みすごいスピードだ。走行車線は大きなトラックが多いが、そこでも時速80〜90マイル(時速130〜140km程度)は出していないとあおられる。
ネバダ州に入り、樹木がまばらになった。早朝に宿をでるよう心がけた草地が続く。杭が立っているのは放牧のためだろうか
ネバダ州に入り、樹木がまばらになった。早朝に宿をでるよう心がけた草地が続く。杭が立っているのは放牧のためだろうか
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