一般財団法人 環境イノベーション情報機構

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このゆびとまれ!エコキッズ

里山のくらし

目的

  • 気づき:里山の生活の豊かな知恵に気づく
  • 知識:里山の暮らしと、自然環境とうまく共存した持続可能な生活形態のあり方について理解する
  • 行動:持続可能な社会のあり方について意識して、社会のあり方を考え行動できるようになる

背景

循環型社会としての里山

里山といえば、童謡「ふるさと」の中で、「兎追いし彼の山、小鮒釣りし彼の川」と唄われる『彼の山』がイメージされます。1995年に発刊された「大辞林」第2版で、辞書としてははじめて「里山」が掲載されています。ここでは、 「集落の近くにあり、かつては薪炭用材や山菜などを採取していた人と関係の深い森林」 とあります。しかし、近頃こうした人里近くの山や森といった自然環境(ヤマ)だけでなく、その自然を利用する人里(サト)=農村の生活を含めた、全体のつながりの中で育まれてきた半自然的な環境の総体を「里山」と呼ぶことが多くなっています。これを広義の里山と捉えることができます。つまり、ヤマだけでなく、サトの生活も含めて里山と総称するということです(「里やま」もしくは「里地」などと区別を強調するケースもみられます)。ここでは、広義の里山について扱うこととします。

かつて里山では、農村の生活や農地が、周辺の自然環境と一体となって循環型の持続可能な社会を形成していました。1本の木は、冬に材として活用するため伐採されます。2〜3年かけて萌芽(ひこばえ)が大きくなると、もや分けと呼ばれる作業によって2、3本を残して他は切られます。堆肥の材料などに使うため落ち葉が掃き集められたり下草が刈られるなど林床がほどよく管理されながら15年〜20年かけて木を生長させ、再び材として伐られます。こうしたサイクルは、林をいくつかの区画に分けて少しずつ生長度合いを変えて進行させ、伐採適期の木が常に手に入るように管理されていました。

伐った木や刈った草や笹、また収穫後のワラなど、田畑や雑木林から出てくるさまざまな産物は、あますことなく利用されます。木材は土木材料や建築材料、薪炭材として使われるほか、キノコのホダ木にもされます。雑木林で掃き集められた落ち葉は、竃(カマド)や囲炉裏の焚き付けに使ったり、堆肥や苗の温床として溜め置かれます。笹は、目籠を編んだり、農具をつくる他、畑で作物の支柱にも使われます。屋根を葺くための茅場として、あるいは家畜の餌や敷き草として用いる草を育てる採草地も確保されていました。

多様な生態系を支える里山

木材を取るための雑木林が、生長段階の異なる区画をつくって管理されていたり、採草地や竹林が確保されるなど、人間が利用するためにつくり、また維持してきた多彩な環境は、生物にとっても多様な生息環境を与えることになりました。  雑木林が伐り払われて、明るい日射しを受けるようになると、暗い林床で抑圧されていた植物が一斉に芽生えてきます。太陽の光で林床が暖められると、堆積していた腐食質が分解され、土壌の栄養分が増えます。土壌中で休眠していた種子や地下茎は、光や栄養分が供給され、急速に伸長します。草花に誘われてさまざまな昆虫が訪れてくるようになります。

若木が生長すると、カミキリムシが幹に傷をつけ産卵します。傷跡からにじみ出る樹液に誘われ、カブトムシやクワガタムシをはじめとしたさまざまな昆虫が集まってきます。十分に生長した木々の枯れ枝や幹では、昆虫類の幼虫が生長します。これらは、鳥類の餌にもなります。

里山における生活スタイルの変化

今日、人々の生活スタイルが変化し、里山においてもかつての利用形態は廃れてきています。燃料としての薪炭は石油やガス等に置き換わり、農地の肥料も化学肥料が使われるようになって、雑木林の落ち葉は掃き集められなくなっています。人手が入ることで、自然の遷移が止められ、あるいは促進、引き戻され、多様な環境がつくり出されていた里山の2次的な自然は、使われずに放置され、荒廃しています。

近年、レッドデータブックとして絶滅に瀕する動植物の実態が調査され、まとめられていますが、それらの種の多くが、雑木林や草原など、人手が入って成り立つ里山の自然に生息していることがわかっています。

発展

鎮守の森

里山と鎮守の森

人に利用されることで維持されてきた明るい雑木林の「里山」に対して、伐ることを禁じられ鬱蒼と生い茂る「鎮守の森」は対称的な自然といえます。

里山の自然は、枝木が薪や炭として、また落ち葉も堆肥にするなど、人間による適度な利用によって遷移の途中段階で止まって、安定的に半自然的環境が形成されてきた2次林です。クヌギやコナラなどの落葉樹が主体のいわゆる雑木林です。

一方、鎮守の森は、宗教や信仰の対象として長期間に渡って伐採が禁じられ、自然の遷移に任せて育っていったため、地域の気候に合った本来の植物群落へと安定化しています。こうした状態の植生は、潜在自然植生と呼ばれ、本州ではシイ・カシ林を主体とした常緑広葉樹林、いわゆる照葉樹林となります。

貴重な自然や文化としての価値

鎮守の森の価値は、地域の本来の植生を残したり、野生動物にとっては貴重な棲息地になるなど、自然的な価値に加えて、地域固有の文化が伝承する文化的価値、また地域におけるコミュニティの中核としての社会的価値などがあげられます。

関連情報

財団法人 世界自然保護基金日本委員会(WWF-ジャパン)
〒105-0014 港区芝3-1-14 日本生命赤羽橋ビル6H
http://www.wwf.or.jp/
財団法人 日本自然保護協会(NACS-J)
〒102-0075 千代田区三番町5-24 山路三番町ビル3F
TEL: 03-3265-0521
http://www.nacsj.or.jp
里地ネットワーク
〒105-0003 港区西新橋1-17-4 西新橋YKビル6F (財)水と緑の惑星機構内
TEL: 03-3500-3599
FAX: 03-3500-3841
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貴重な自然や文化としての価値

人が住んでいて、かつ自然があるという共存空間としての里山を、写真家・今森光彦氏の記録映像などを中心にしたさまざまな活動を通して、里山について共に語り合い、考える場を全国につくる活動を行っています。記録映像「今森光彦の里山物語」(ハイビジョン/50分/カラー)と里山説明パネル(カラーパネル10枚組)をセットにした『里山から考える21世紀』パッケージの貸出も行っています(貸出料金 最低保証金額7万円、詳細は下記事務局まで)。

「里山から考える21世紀」実行委員会事務局
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