一般財団法人 環境イノベーション情報機構

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このゆびとまれ!エコキッズ

土の中のできごと

目的

  • 気づき:目には見えない土の中にも生物の営みの世界が広がっていることを知る
  • 知識:土の中の生態系や、土の機能について理解する
  • 行動:土とのふれあいの機会や、土に生きる生物とのふれあいを大事にできる

背景

人目に付かない土の中の世界

普段われわれは、土の中の世界があることは知っていても、意識することはほとんどありません。学問的にも、地殻の構造や組成、油田や鉱山脈など資源の在処、あるいは局所的な地下水の流れなどがさまざまな手法によって解析されてはいるものの、その全貌は文字通り深い闇の中にあるといえます。

より身近な自然とのふれあいにおいても、例えば森の中を歩くときに、目に入るのは木々の緑や色とりどりの花、飛び交う昆虫などであり、聞こえてくるのは虫の鳴き声や鳥の囀りだといえます。歩いている足元でどのような生き物の世界が広がっているのか関心が向くことは少ないのではないでしょうか。

ひっそりと営まれる土の中の生態系

土壌生物は全般的に小さく、人目に付かないようなひっそりとした生活を送っています。また土の中という人間の視界の及ばない世界で生活が繰り広げられているということもあります。このため、これらの生物の生態はまだまだ謎が多いのです。しかし、人に見えていようがいまいが、また生態が解明されていようがいまいが、生物は着実に生き続けています。

落ち葉を裏返したり石を退けてみるなど、ちょっと気をつけて観察すれば予想以上に多くの生物が息づいていることがわかります。さらに、ちょっとした道具や少しの工夫で、より多くの生物が観察できますし、持ち帰って飼育してみればおもしろい生態を観察することができます。

「生きた土」と「死んだ土」

土は生命を支える重要な役割を担っています。森の中などでは、落ち葉や枯れた草木、小動物の糞尿や死骸などが、ミミズや微生物など食物連鎖の中で「分解者」と位置づけられる生物の代謝によって細かく砕かれ、またその成分を変えています。分解された老廃物は植物の栄養素となり、新たな生命が芽吹きます。さらに、人間にとっても大地は重要な活動の場であり、また農業生産の基盤となっています。

その一方で、範囲や規模共に拡大し続ける人間活動は、まれに土の中の生命活動を破壊し、死の世界をつくり出しています。農薬の投入によって土壌の小動物や細菌類を死滅させたり、森林の伐採等が原因で砂漠化する土地、灌漑のし過ぎが地下の岩塩層から塩分を析出させる塩害の発生など、人間活動に起因する土壌荒廃の事例は数多くあります。

視点

体験学習とバーチャル・リアリティ

今日、テレビやインターネットなどのメディアの普及によって、現実には経験していない世界でも映像を通して擬似的に経験することができるようになっています。体験学習では、直接的な体験が基本となり、こうした間接的なものよりも強力な経験が得られるとされ、重視されますが、必ずしも直接体験だけで体験学習が完結するわけではありません。対象について事前に調べたり、また事後に成果をまとめて報告するなど、直接的 ・間接的な経験を組み合わせることによって、より質の高い体験学習を支援していくことが望まれます。

本ホームページでも、環境問題の諸相についてアニメーションを用いたバーチャルな世界へと誘うことで興味関心の喚起や、理解の促進へとつなげることを目的としています。特に、本項「土の中」や、「(2−5)トイレの水はどこへゆく?」などは、現実の体験はできない微少な世界をアニメーションによる仮想世界で疑似体験するものであり、現実の世界とはひと味違った経験を与えることができます。こうしたバーチャルな世界をより有効に活用するには、現実の直接体験をうまく組み合わせていくことが大切だといえます。バーチャルな世界は、それ自体が予定調和なストーリーをつくってまとまっていることが多く、それだけで全てがわかった気になったり、現実の世界に触れないうちに見慣れた気になってしまうことは懸念材料として頭の片隅に入れておく必要があるといえます。

発展

生活に利用される土

住居や生活用具をつくるために使われてきた「土」

土は生命を支える源であると同時に、大地を構成する構造体のひとつでもあります。人は、植物の栽培を行うようになる以前から、こうした土の物理的性質を利用してきました。

土は、捏ねたり削ったりすることで自由に形を変えることができます。特に粘土質の細かい土は、ねばりがあって、形が崩れない。乾燥すると硬く固まり、さらに高温で焼くと、より硬く、また水にも溶けないようになります。こうした性質を利用して、縄文時代や弥生時代には、それ以前の時代には見られなかった土器という土でつくった生活用具が発明され、人々の生活に多大な発展をもたらしました。また、土は古来から住居をつくるのにも利用されてきました。古くは単純に穴を掘っただけのものから、木材など他の構造体も組み合わせながら、土壁を塗り込んだり、土のブロックを組み上げるなど、多彩な土の技術と文化が世界各地で発展してきています。

土器づくりを通して見えてくること

土器づくりを実際に体験してみると、さまざまな学びが期待できます。地域の粘土層から土を掘り出すところから始め、捏ねたり練ったりしながら土づくりをおこない、土器などに成形して、乾燥、焼成するといった古代の製法を追体験することで、人間が土を使ってきた歴史や文化に対して興味関心を喚起することが期待できます。同時に、こうしたプロセスは、ものづくりが多くの時間や手間を要することを実感させてくれるだろうし、また薪を使った野焼きには大量の薪を必要とし、これはものづくりによって消費されるエネルギーについて具体的に捉えることができるなど、さまざまな課題を派生することも期待されます。

地盤の液状化実験

ここでは、土地としての利用について考えます。人は、さまざまな土地利用を行ってきています。山が削られ、谷が埋め立てられ、また池や湿地、遠浅の干潟なども水を抜いたり埋め立てたりして新たな土地利用を増やしていきました。こうした土地利用によって、人間の生活圏は拡大していきましたが、同時に地震によって地盤の崩壊や液状化が起こるなど、さまざまな問題も生じています。こうした土の性質について、簡単な模型を使って、地盤の液状化と地盤沈下の様子を再現してみることができます。

ビーカーを2つ用意し、それぞれに土を入れます。ひとつには発泡スチロール片を埋め込み、もう一方には土の上に小石をのせます。水を注いで土にしみ込ませ、表面に浮いてくる余分な水は捨てます。ビーカーを台に乗せて、細かく揺すったり、小型マッサージ器などで振動を与えると、発泡スチロール片が浮き上がり、小石は沈んでいく様子が観察できます。また、振動によって土の高さが低くなる、地盤沈下の効果も観察できます。

関連情報

「すばらしき土壌圏 −この知られざるいのちの宝庫」八幡敏雄、地湧社、1989年
人類を含む地上のあらゆる生物にとってこの上なく大切な環境要素である大地や土に対する関心が低いのは、学校教育等での知識提供の仕方が拙劣であったためと捉え、地球進化の歴史から、土壌の成立、生態圏としての特異性、生物の役割などを系統的に整理して、講話風に記述しています。
「土の中の生き物  観察と飼育のしかた」青木淳一+渡辺弘之=監修、築地書館
ごく身近にいる土の中の生き物の、調べ方や分類 ・同定の仕方、飼育や観察の仕方について、わかりやすく紹介された入門書。
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