一般財団法人 環境イノベーション情報機構

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このゆびとまれ!エコキッズ

メダカを探そう

目的

  • 気づき:身近にいくらでもいたメダカなどの生物が減っていることを知る
  • 生物の生息環境の悪化と人間活動との関連について理解する
  • 行動:身近な環境の保全活動に参加できる

背景

レッドデータブック

個体数が著しく減少し、絶滅に向かっていると考えられる種を絶滅危惧種といいます。こうした種についてまとめたものは、「レッドデータブック」と呼ばれ、環境庁でも平成3年に動物版レッドデータブックを発行しています。これらのデータは、野生生物の生息状況や生息環境の変化に対応するものであり、定期的な見直しを必要とする性質のものです。環境庁のレッドデータブックについては、平成7年より分類群ごとに改訂作業が進められてきました。

メダカが絶滅危惧種に!

1999年2月18日、レッドデータブックの改訂を進めてきた環境庁は、汽水 ・淡水魚類の見直しについて発表しました。この中に、どこにでもいるはずのメダカが入っていたことは、大きな驚きとして世間の注目を集めました。その驚きは、絶滅の危惧という深刻な問題が、特殊な地域の特殊な状況にある一部の種に限られたものではなく、身近にいたメダカのような種にまで及んでいるという日本の自然環境の状況の深刻さを物語るものとして受け止められたといえます。

水質の悪化や、水田の減少が原因なのか?

メダカのような身近にいた珍しくもない生きものが絶滅の危機に瀕していることの背景には、日本の自然の置かれている状況について理解することが必要です。

メダカは、学名(Oryzias)がイネの学名(Oryza)にちなんでいるように、水田に多くみられる小魚です。流れの緩やかな水辺に群をなして生活していて、水田や、田に水を引くための用水路は格好のすみかになっていました。しかし、これはただ単に水田があればいいということではありません。

かつて水田の用水は、湧水やため池から水路を通って引かれていました。自然の流れを利用して、最上部の田から順次下の田へと導いていました。水路は緩やかな流れをつくり、メダカが住むのに適していたのです。また、コンバインやトラクターなどの機械も普及してなかった頃は、田を完全に乾かす必要はなかったため、冬などの水のない時期にもぬかるみや水たまりも残っていました。

ところが、現在の灌漑は、コンクリート水路やパイプラインを通じて必要なときに必要な量だけ水が入れられるようになっています。水路は深く掘られ、必要に応じて完全に水を抜いて水田を乾かすことができます。水路は水のある時期には流れが速く、また卵を産み付けるのに必要な水草や藻も生えません。ため池も、農業用水の整備に伴って埋め立てられていきました。

生活史を全うできる全体的な環境の保全が重要

こうした水田管理のあり方の変化によって、メダカはその生活史を全うできなくなり、絶滅の危機に瀕しているといえます。この他、農薬や生活排水の流入による水質環境の悪化や、ブラックバスなど魚食性の移入種による生態系の攪乱なども拍車をかけています。

水田の環境変化と生きものの関係等については、「(7−2)田んぼの生きもの」もご参照ください。

発展

タンポポの分布調査

メダカと同じように身近に親しまれている自然として、タンポポがあげられます。タンポポは、今日でも春になれば道ばたや野原にたくさん咲いているのをみることができます。しかし、このタンポポも人間活動の影響を受けていることがわかっています。タンポポの分布について調べる活動を通じて、身近な自然に目を向ける視点を育むと同時に、人間活動の影響について具体的に理解していくことが期待できます。

タンポポには在来種と帰化種がある

タンポポは、ロゼットで冬越しする多年草で、日本には20種以上が自生し、一般にタンポポと総称されます。日本に広く分布し、春を代表する身近な植物として親しまれています。野原や土手などで見つけやすく、他の植物からも識別しやすいといえます。

現在、日本で見られるタンポポは、もともと日本に分布していたカントウタンポポやシロバナタンポポなどの在来種と、セイヨウタンポポなど外来のものが帰化した帰化種に分類されます。

帰化種は、大正3年(1914年)に、北海道で初めてセイヨウタンポポが発見されて以来、都市化に伴って急速に勢力を拡大してきています。現在では、身の回りに見られるタンポポの多くは、セイヨウタンポポが占めるようになっています。

広がるタンポポ調査

身近な環境調査活動として、タンポポの分布について調べる活動が各地で取り組まれています。身近に親しまれているタンポポが、在来種・帰化種に分類され、しかもそれが都市化など人為的な環境の改変によって起きていると示唆されています。

在来種は、畑や果樹園のまわり、河原の土手、社寺、雑木林、農道などに見られます。一方、帰化種は空き地や都市の道路敷、公園、校庭、駐車場、造成地などに多く、特に近年になって新たに造成されて、土壌が乱された場所に好んで生育しています。こうした分布状況の違いから、在来種は古くからの土地利用の残る農村的自然の指標として、一方、帰化種は近年になって土地利用が改変された都市的自然の指標として捉えることができます。つまり、タンポポの分布状況から、開発や土地利用の程度を読み取ることができるわけです。

調査の目的

多くの人の参加を得て大々的にタンポポ調査を実施し、ぞの結果を集計すれば、地域の自然が置かれている状況を把握するための基礎データとなります。毎日の漠然とした生活感覚がデータとしてまとまり、科学的な議論ができるようになるといえます。と同時に、調査を通じて地域の環境の実情から今後の地域のあり方も含めて、地域社会の一員として関わっていくきっかけとしても捉えることができます。環境教育としては、データとしてまとめることも大切な目的となりますが、むしろそれ以上に、調査に参加する個人やグループが漠然とでも何かを得ることが重要な目的といえます。

例えばそれは、タンポポに在来種と帰化種があることを知ることだったり、あるいは近くに住んでいながらほとんど入ったことのなかった地区を歩く機会となったり、また名もない草として漠然としか認識していなかった自然をより具体的に把握し直すことができるなど、それぞれの発達段階に応じてさまざまに設定することができます。

関連情報

教室生き物ワールド
エコロジカルウェッブ「めだかネット」
メダカが消える日−自然の再生をめざして
小澤祥司、岩波書店、2000年
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