一般財団法人 環境イノベーション情報機構

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このゆびとまれ!エコキッズ

気持ちいい並木道

目的

  • 気づき:道沿いに植えられた並木の存在による雰囲気や騒音などの違いに気づく
  • 知識:並木の役割や効用について理解する
  • 行動:並木など身の回りの自然に親しみ、これらの自然を大切に育むことができる

背景

身近な自然として親しまれている街路樹

並木と街路樹は、同じようなものですが、公園や学校など大規模な施設内に並べて植えられているのが並木で、一般道路に並んで植えられるのが街路樹と大別できます。

街路樹のある道は、通り抜ける車の騒音を緩和し、都市の中に緑の空間をつくり出して地域の人の心を安らぎ、木漏れ日は道行く人に涼を与え、また桜並木や銀杏並木など季節に花や紅葉が連なる景観は四季を彩り潤いをもたらします。木々の梢に翼を休める鳥の姿を楽しんだり、秋に実を落とすイチョウ並木の下で臭い実を集めて銀杏(ぎんなん)を拾い集める人の姿もよく見られます。特に都市の中では、街路樹は身近な自然として親しまれています。

役所任せの維持管理

身近な自然として親しまれる一方で、その維持管理は役所任せともいえます。現実には、地域の緑として多くの市民によって育まれているとは言い難く、地域の自然や緑として共有するという意識も希薄であることが多いようです。ことさら都市部においては、落ち葉が散乱していても自ら掃き清めることはほとんどなく、むしろ役所に苦情の電話が鳴り響くような状況にあるといえます。

行政側でも、住民の苦情や無関心ゆえに、強い剪定に耐えるプラタナスやトウカエデなどの外国産の樹種を画一的に植える場合も多くなっています。また、道路に落ち葉が散乱して清掃のための多額の経費を発生させないようにという理由や、強風や台風による倒木の危険を避けるといった必要性から、葉が青々と生い茂り、残暑の日射しが強烈な時期に枝を切り落とすといった管理の仕方もされがちです。

注目される「みどり」の役割

都市化が進み、都市空間の中で緑の占める面積がどんどん減っていくのと反比例するように、緑地空間の役割や重要性が見直されてきています。街路樹は、こうした緑地回復の一手段ともいえなくもありませんが、市民の理解と協力がないまま形だけのみどりを義務的に設置するだけでは効果は薄いといざるを得ないでしょう。

発展

みどりの保全や回復・創造と ヒートアイランド現象との関係

都市の気象がおかしい!?

真夏の日中、アスファルトやコンクリートで覆われた都市部では、ビルや地面からの照り返しが暑さを倍増させます。日中の猛烈な暑さが和らぎはじめると、夕立が降り出し、時に激しい集中豪雨が局地的に発生して、甚大な被害をもたらすことも多くなっています。

全国的に記録的な猛暑が続き、地球温暖化との関連を連想する人も多いと思われます。しかし、異常な暑さは気候だけの問題ではありません。大都市における平均気温の上昇は、地球規模の温暖化の程度を大きく上回っています。また、大都市周辺の大気汚染も悪化し続けています。都市の気象に何が起きているのでしょうか。

ヒートアイランド現象とは

都市の中心部が郊外に較べて高温を示す現象は、19世紀から報告されており、世界中の多くの都市で確かめられています。気温分布図を描き、等温線で結ぶと都市の中心部に向けて高温域が島状に孤立するため、「ヒートアイランド現象」と呼ばれています。

温度だけが問題ではない

ヒートアイランド現象は、気温の分布が特徴的ですが、それに加えて環境や気象への影響も指摘されます。周辺部よりも温度の高い都市部では、上昇気流をもたらし気圧の低下を招きます。すると、都心部に向けて周囲からの空気が流れ込みやすくなります。沿岸からの湿った空気が吹き込むと、雨雲が形成され、積乱雲が発達します。こうして都市部の局所的な集中豪雨をもたらす巨大な積乱雲が成長していくと考えられています。

また、光化学スモッグの発生など大気汚染との関連も指摘されます。これらは、発生源である大都市よりもその周辺で被害が激化していることが多くなっています。ヒートアイランドがつくる上昇気流によって、地上近くでは郊外から都心部へ、上空では逆に都心部から郊外へ流れる循環流が発生します。この結果、汚染物質が都市とその周辺をドーム状に覆う「ダストドーム」と呼ばれる現象が観察されることもあります。

ヒートアイランドの原因は?

ヒートアイランド現象が起こるのは、地表面の改変と都市に発生する大量の熱によるといえます。都市を覆うコンクリートやアスファルトには太陽の熱を蓄積して放出する性質があります。昼間に蓄積した日射熱が夜間に放出されて気温の低下を抑制するため、地面近くの気温がもっとも下がる夜明け前頃に、郊外との気温差が顕著になります。また、都市では、車やエアコンなどさまざまなエネルギー利用が増えて、人工的な排熱が大量に発生しています。大気中に漂う汚染物質は太陽光を散乱して、空気を暖めます。気温の上昇は、特に真夏の昼時に冷房の利用を促進してエネルギー消費を増大させ、より一層の排熱が吐き出されるという悪循環に生じさせます。

これらに加えて、都市化の進行に伴う緑地や水辺の減少もその原因として指摘されています。植物や土壌を持つ地表面からは水分が蒸発しているため、気化熱が奪われ、気温を下げる効果があります。逆にいえば、緑地の多いところでは葉の気孔で水分が蒸散したり、土の水分が蒸発するのに使われる分のエネルギー(気化熱)が、コンクリートやアスファルトでは蓄積しているということです。緑の下が涼しく気持ちよく感じるのはこうした理由からといえます。また、水辺空間も熱の吸収に効果があり、こうした緑地や水辺を都市の中で保全、復元していくことがヒートアイランド対策としても重視されています。

落ち葉とごみの関係

疎まれる落ち葉

街路樹の役割や効果は認識していても、秋から冬にかけての落葉を疎ましく感じる人も多いようです。特に落ち葉が雨どいや排水溝に詰まるなど実害を被る人にとっては、深刻な問題といえます。

焼却処分されている落ち葉や剪定枝

都市では、街路樹の他にも、公園や役所などの公共施設、集合住宅、企業など多くの場所に樹木が息づいています。当然のことながら、落ち葉なども発生していますが、多くの場合落ち葉や剪定枝は、管理委託を受けている造園業者などが処理センターに持ち込んで焼却処理しています。落ち葉などの「自然の落とし物」は本来、ミミズや微生物などの働きによって、自然循環の中で土に返っていきます。こうした自然循環にのるはずの落ち葉や剪定枝が、エネルギーを使ってごみとして処理されている現実は、人間と環境との関わり方の変化を考え、そのあり方について考える上で理解しやすい素材といえます。

都市空間の多くがコンクリートやアスファルトで覆われ、落ち葉を循環するための土や生物の存在が消えていることが問題の背景にあるわけですが、ごみの減量や無駄なエネルギーの節約という意味からも、落ち葉や剪定枝の堆肥化を求める市民の声や、実験的な取り組みなども行われています。

里山文化の、落ち葉の活用

一方、「里山」と呼ばれる都市近郊の田園や周辺の野山では、身近な自然資源を日々の暮らしの糧として利用してきた歴史と文化があります。このような自然との関わりは、しかし、ここ30年ほどの間に大きく変化し、水田耕作は放棄され、薪炭林として活用されてきた雑木林にも手が入らなくなってきました。植生の遷移は進行し、人為が加わることで維持されてきた里山特有の豊かな生態系が失われつつあります。

自然との関わりについて考えることは環境教育の基本的な視点といえます。先人の知恵を生かし、地域の伝統文化や歴史という視点を取り入れていくこともまた重要な視点といえます。このとき、人と自然が過去にどう関わってきたのか、人と自然は現在どのような関わりをしているのか、そして人と自然は今後どのような関わりをしていくべきか、といった時間軸で見ていくことがたいせつだといえます。

地域の中で、落ち葉という資源が重宝 ・活用されてきた歴史 ・文化やその技術について見直し、新たな関係性を見出していくことは、街路樹の問題を考えてく上でも重要な示唆を与えてくれることが期待できます。なお、里山については「(7−1)里山のくらし」もご参照ください。

関連情報

ヒートアイランド現象に関して・運輸省気象庁気象研究所
〒305-0052  茨城県つくば市長峰1-1
TEL: 0298-53-8538
FAX: 0298-53-8545
https://www.mri-jma.go.jp/index.html
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
〒305-8569 つくば市小野川16-3
TEL: 0298-61-8113
FAX: 0298-61-8118
https://www.aist.go.jp/aist_j/dept/denvene.html
東京都環境科学研究所
〒136-0075 江東区新砂1-7-5
TEL: 03-3699-1331(代)
FAX: 03-3699-1345
https://www.tokyokankyo.jp/kankyoken/
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