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環境ニュース[国内]

自然保護区の植物絶滅回避効果を実証 ただし種の分布には考慮が必要 国環研等の研究結果

自然環境 生物多様性】 【掲載日】2016.11.08 【情報源】国立環境研究所/2016.11.07 発表

 国立環境研究所は、東京農工大学、日本自然保護協会、クイーンズランド大学(オーストラリア)との研究チームで実施した研究結果から、国立公園などの保護区の有効性を解析したしたところ、分布域が狭い種ほど保護区に含まれにくいために局所的な絶滅が起こりやすく、分布域が狭くなりやすいことが明らかになったと発表した。

 国立公園などの自然保護区には、生物の生息地や個体数の減少を抑制する効果があることが確認されているが、一方で景観の美しさや人間活動を阻害しないことが基準に決定されており、保護区は必ずしも生物の保全に適した場所に配置されていないという問題が海外でも報告されている。

 生物の分布を考慮せずに保護区を配置すると、分布の狭い種は保護区に含まれにくいため局所的に絶滅しやすく、分布域が狭くなる傾向にあり、その結果ますます新たに設置する保護区に含まれにくくなり、絶滅リスクが上がる「絶滅への悪循環」が起こる可能性がある。国内で「絶滅への悪循環」が生じうるかを検討するため、植物レッドデータブック編集のための調査データのうち1572種について、1994-95年と2010-11年の2期間に収集されたデータを用いた統計分析を行った。その結果、分布域が狭い種ほど保護区に含まれにくいために局所的な絶滅が起こりやすく、分布域が狭くなりやすいことが明らかになり、懸念した「絶滅への悪循環」を生み出すメカニズムが働いていたことが確認できた。
 さらに、植物の分布を考慮せずに保護区を新たに設置すると仮定してシミュレーションを行ったところ、生物の分布を考えずに保護区を繰り返し新設すると、分布の広い種は、保護区が新設されることの効果で種が絶滅するリスクは下がるものの、分布域の狭い種では絶滅するリスクが上がり続ける「絶滅への悪循環」に陥るという結果が出た。

 これらの分析により、保護区には植物の絶滅を抑える一定の効果があるものの、その効果を高めるには種の分布を考慮して保護区を配置すべきことが明らかになった。

 なお、本研究の論文は国際保全生物学会発行の学術誌Conservation letters誌電子版に2016年10月24日に掲載されている。【国立環境研究所】

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