一般財団法人環境イノベーション情報機構
国連環境計画、プラネタリーヘルス投資でGDP拡大や早死・貧困減が可能と報告
【エコビジネス 環境と経済】 【掲載日】2025.12.25 【情報源】国連/2025.12.09 発表
国連環境計画(UNEP)は、「地球環境概況第7次報告書」(GEO-7)を公表した。これによると、プラネタリーヘルス(人と地球の健康)への投資は国の繁栄や持続可能な未来への鍵である。
報告書は、気候変動や生物多様性損失、土地劣化、砂漠化、汚染、廃棄物によって何百万人の命が奪われ、年間数兆ドルの損失が生じていると指摘し、現状維持の開発の道筋を辿れば損害はさらに拡大すると警鐘を鳴らす。
そして、これに代わる道筋(注1)を歩むには、社会及び政府を挙げて、5つの主要システム(経済・金融、物質・廃棄物、エネルギー、食料、環境)を抜本的に変革する必要があると論じている。
先行投資は必要だが、より良い道筋を辿れば、世界のマクロ経済的利益は2070年には年間20兆ドル、その後は年間100兆ドル規模に拡大することが見込めるという(注2)。
報告書は、政府から一般市民、先住民族までを含めた全関係者が、世界的な環境危機の緊急性を認識し、過去数十年の取組の進展を礎にして、一体的な政策や戦略、行動を共に設計し実施するよう呼びかけている。
(注1)報告書では、「物質消費を重視しない行動変容を軸とした変革」と「技術開発や効率向上を軸とした変革」という2つの道筋が提示されている。
(注2)温室効果ガス(GHG)の排出実質ゼロ化と生物多様性の保全・回復には、2050年にかけて年間約8兆ドルの投資が必要だが、何も対策をしない場合の代償はこれよりはるかに大きいという。
報告書は、気候や自然環境関連の恩恵があるほかにも、2050年までに900万人が早死を回避でき、約2億人が栄養失調から、約1億人が極度の貧困からそれぞれ抜け出すことが可能だと説明している。
【国連環境計画】