サガロを訪れた日の翌日、そこから西へ約180km程のところにある、カベザプリエタ国立野生生物保護区
【7】を訪れた。この保護区は全米でも有数の規模(アラスカ州を除くアメリカ本土48州内で3番目の広さ)を誇り、保護区の90%以上がウィルダネス地域に指定されている。保護区内にはビックホーンシープやコヨーテなど多くの野生生物が生息する。数日前に、電話でインタビューのためのアポイントをとっていた。まず、管理事務所を訪問する。
事務所の入口には、保護区に関するパンフレットや「ファクトシート」と呼ばれる、主な野生生物に関する説明資料などが備え付けられている。
「今日は所長が対応する予定なのですが、午後からにしていただけないかということでした」
休暇中にもかかわらず、私たちのためにわざわざ出てきてくれるというのだ。午後のインタビューまでの間、保護区内で時間をつぶそうと思い、お勧めの場所を聞いてみた。窓口で対応をしてくれた白髪の女性は、退職して以来、一年の半分をキャンピングカーに乗って各地の国立公園や野生生物保護区でボランティアとして過ごしているそうだ。
「ここは普通車での通行は難しいと思いますよ。一般向けの利用施設もないのでオルガンパイプカクタス国立記念物公園に行かれてはいかがですか」
保護区内に一般向けの利用施設がないということには驚かされた。利用施設はない代わりに、管理事務所に併設されたビジタースペースにはおもしろい工夫があった。この小ぶりのビジタースペースは、折りたたみいすの置かれたレクチャースペースになっている。壁面には解説板や剥製、模型などが並んでおり、時折訪れる利用者は思い思いに腰掛けたり展示を見たりする。
レクチャールームの一隅に、テレビとビデオデッキ、DVDプレイヤーが置いてある。その脇に、DVDやビデオソフトなどの並んだ「ライブラリー」があり、自由に閲覧できるようになっている。野生生物保護区の紹介から始まり、他の保護区、様々な野生生物に関するソフトが揃っている。これらのソフトは、ウェストバージニア州にある国立保全研修センター
【8】で製作され、各地の国立野生生物保護区や野生生物に関係する教育機関などに送付されているそうだ。
日中は暑すぎるので、屋内でゆっくりしている方がいい。また、野生動物には夜行性のものが多いため、昼間に保護区を訪れてもめったにその姿を見ることはできない。また、それぞれの生物の不思議な生態を理解するためには、こうした教材が大いに価値を発揮するのだそうだ。
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管理事務所に併設されている展示スペース。 | | 国立保全研修センターで製作されている映像ソフト。 |