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No. アメリカ横断ボランティア紀行(第9話) 大陸横断編・その2
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Issued: 2007.03.15
大陸横断編・その2(テキサス州→ニューメキシコ州→アリゾナ州)[1]
グランドキャニオンの注意標識。日本語も含めた4ヶ国語表記の注意標識は、グランドキャニオン以外では目にすることがなかった。
 約9ヶ月を過ごしたマンモスケイブ国立公園(ケンタッキー州)を離れ、次の研修地であるレッドウッド国立州立公園(カリフォルニア州)を目指す。そこは、マンモスケイブ国立公園から直線距離にして約3,500km、太平洋岸北部にある巨木と霧の公園だ。
 
 私たちは、愛車ポンティアック・モンタナに大量の荷物を積み込み、一路西へと大陸横断の旅を続けていた。ルートこそ違うものの、車の中は現代版の幌馬車の様だ。テネシー州の州都・ナッシュビルとミシシッピー州の南部ナチェスを結ぶ「ナチェストレイス・パークウェイ」を皮切りに、いくつかの国立公園を訪ねながら、いよいよテキサス州にさしかかる。そこには、これまでの緑の多いアメリカ南東部とは対照的に乾燥した砂漠が広がっていた。

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 目次
外国語標識の調査依頼
国立公園局の標識類整備マニュアル
標識をめぐる日米の違い
グアダルーペ国立公園とカールスバッド鍾乳洞国立公園
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外国語標識の調査依頼
マンモスケイブ国立公園の案内標識。アメリカの国立公園の標識は、意外にも外国語を併記したものはほとんどないが、そのかわりにピクトグラフが効果的に用いられている。

 大陸横断の旅に先だって、日本からの宿題が舞い込んだ。海外からアメリカの国立公園を訪れる観光客向けに設置している標識事例を調べてほしいという。元環境省レンジャーのMさんからの依頼だった。
 「小泉総理の発案で、日本に外国人を呼び込むための外国語標識について検討している【1】。ぜひアメリカの事例を教えてほしい」
 当時は愛知万博を約1年後に控えていたこともあり、鉄道や空港の案内標識の多言語化が進んでいた。国立公園についても、中国、台湾、韓国などからの観光客が増加しており、対応が迫られていた。しかしながら、なかなか対応は進んでいなかった。
 「写真や図面、マニュアルなどがあったらできるだけ多く送ってほしい」
 幸い、横断中にいろいろな公園や保護区を回るので、事例を集めるのはそれほど難しくない。苦労したのは、助手席や路肩から写真を撮る妻の方だったのではないだろうか。一般道とはいえ、時速100kmほどのスピードで走行している車が絶えない。車道沿いのピクトグラフを撮影するために道路に降り立つのは結構勇気がいる。
【1】 
ビジット・ジャパン・キャンペーン(公式ウェブサイト)
国立公園局の標識類整備マニュアル
 引越しの準備の合間をぬって、国立公園局ホームページを調べる。国立公園局の政策室(office of policy)のページ【2】には、国立公園管理に関するマニュアル(局長通達;Director's Order)の一覧があり、かなりの数の文書が電子情報で公表されている。
 局長通達の看板や標識類(signs)に関するマニュアルなどは何種類かあり、さっそくダウンロードして外国語表記に関する記述を見てみた。また、マンモスケイブ出発前に慌ててプリントアウトしてきた職員向けのウェブサイトの資料なども見てみると、おもしろいことがわかった。
 まず、国立公園局はピクトグラフ(絵文字)の利用を推奨していた。また、多言語の標識を導入する際は、公園職員に必ず1人以上その言語に精通し、言語のニュアンスが確認でき、かつ必要な際には変更ができることが望ましいとされていた。その外国語に精通している職員がいない限り、「不適切な表現となることが避けられず、利用者に不快の念すら与えかねないから」という理由だ。
 言われてみると、2ヶ国語解説版のほとんどがスペイン語と英語であることに気付く。これは外国人対応というよりは、近年ヒスパニック系住民が増加している米国南部のメキシコ国境沿いに位置する国立公園に多い。そのような公園には、スペイン語を理解できる、もしくはスペイン語を母国語とするメキシコ系米国人の公園職員も多い。

スペイン語の併記された解説板(ビッグベンド国立公園)スペイン語の併記された案内板(カールスバッド鍾乳洞国立公園)。
スペイン語の併記された解説板(ビッグベンド国立公園)スペイン語の併記された案内板(カールスバッド鍾乳洞国立公園)

 グランドキャニオン国立公園など外国人の割合が高い公園では、解説板の標題部分が3ヶ国語で表示されているものもあった。ただし、解説標識の内容は英語のみで構成されている。
 スペイン語以外の言語による2ヶ国語表記としては、戦争の記念碑などその国の国民が密接に関係しているような例が挙げられていた。日英併記の例として考えられるのは、日系人職員の多いハワイの戦跡公園、西海岸の日系人を対象とした元収容キャンプに設けられた記念公園などだろう。
【2】 国立公園局の政策室(office of policy)
国立公園局の政策室(国立公園局ウェブサイト)
グランドキャニオン国立公園の解説標識。項目のみが3ヶ国語表記されているが、解説文そのものは英語のみ。

標識をめぐる日米の違い
デスバレーの案内標識。英語の地名表記とピクトグラフが効果的に組み合わせられている。

 日米の標識類の一番大きな違いは、当然ながらそれぞれの言語にある。アルファベットというほぼ国際的に通用する文字を用いている英語では、英語自体の意味がわからなくても、地名などはたいていの旅行者が読める。これに対して、日本語は漢字とひらがなが混じり、日本語や漢字が読めない限り、まったく理解できない。日本の場合、外国語表記となるとまず英語が必要だし、観光客の急増している中国語と韓国語も加えると4ヶ国語が並ぶことになる。公園内の自然景観を守るため、標識類は「最少、最小」にするのがこれまでの公園管理の基本方針である。4ヶ国語の表記をそのような限られた大きさの標識に表示することは現実的ではない。

 その点で、アメリカの国立公園局がピクトグラフを多用していることは、大いに参考になる。また、多くの国立公園では、スペイン語、フランス語、ドイツ語、日本語などの外国語パンフレットが備え付けられている。日本でも、ピクトグラフの標識+外国語パンフレットという組み合わせならうまく導入ができるかもしれない。とはいえ、日本語のパンフレットの製作もままならないのに、外国語のパンフレット製作などできるのだろうか。十分なお金や人手がないまま、安易に手を広げるのは各地方事務所の公園関係職員の残業時間が延びるだけという気もする。
 
 「あ、またおもしろいピクトグラフがあったよ」
 そんな私のぼやきをよそに、妻は着々と写真撮影を進める。
 いろいろな事例を見ていくと、ピクトグラフの設置方法、位置、構成などには様々な工夫があることがわかってきた。古いもの、新しいもの、大きいもの、小さいもの。ピクトグラフが容易に付け替えられるように工夫されているもの。ピクトグラフをはじめ、標識からは国立公園局職員の遊び心のようなものも感じられる。基準や事例調査も大切だが、いかに自分の公園を知り、利用者の立場に立って計画を立てるか、そこに公園施設設計の醍醐味があるのだろう。考えてみれば、日本語は縦書きができる、漢字があるので文体を短くすることができるなどのメリットもあるということに気づかされる。OBのMさんから与えられた「宿題」によって、私たちの横断旅行には、期せずして、標識のデザインというおもしろいテーマが与えられることになった。
レイクミード国立レクリエーション地域への案内標識。ピクトグラフが着脱できるように工夫されている。

ホワイトサンズ国立記念物公園のアンフィシアター(野外劇場)の案内標識。劇場のピクトグラフが表示されている。イブニングプログラムの時刻部分が付け替えられるよう工夫されている。看板の上部の白い山形の部分は、白い砂丘をモチーフにしたものだろうか。グアダルーペ国立公園のトレイル入口に設置されていたピクトグラフ。
ホワイトサンズ国立記念物公園のアンフィシアター(野外劇場)の案内標識。劇場のピクトグラフが表示されている。イブニングプログラムの時刻部分が付け替えられるよう工夫されている。看板の上部の白い山形の部分は、白い砂丘をモチーフにしたものだろうか。グアダルーペ国立公園のトレイル入口に設置されていたピクトグラフ。
グアダルーペ国立公園とカールスバッド鍾乳洞国立公園
 セントラルタイムゾーンからマウンテンタイムゾーンに入ってまもなく【3】、眼前に石灰岩からなる山塊が迫ってくる。マンモスケイブでは雨水で容易に溶けてしまう石灰岩も、乾燥地域では風化に耐え、その地形はしばしば威容を誇る。グアダルーペ国立公園【4】は、その石灰岩地形を中心とする原生的な公園だ。その驚くようなスケールと荒々しい地形は、乾燥地ならでは。
 この公園は、マンモスケイブ国立公園でのボランティア研修を終えた私たちの次の研修候補地として、受け入れを申し出てくれた3つの公園のひとつでもあった(第7話参照)。→(その2)へ続く

マウンテンタイムゾーンの標識。グアダルーペ国立公園の山塊が迫ってくる。グアダルーペ国立公園のビジターセンター。
マウンテンタイムゾーンの標識。グアダルーペ国立公園の山塊が迫ってくる。グアダルーペ国立公園のビジターセンター。

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【3】 アメリカ本土の4つのタイムゾーン
The official US time
【4】 グアダルーペ国立公園と、カールスバッド鍾乳洞国立公園
第7話参照
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