今回の規制のうち、最も特徴的なことは、この最適技術(Best Available Technology)基準、通称「BAT」がパッケージに盛り込まれていることだろう。
BATは、乗り入れるスノーモービルについて、「現時点でもっとも静かできれいなものであること」を求めている。つまり、最新型のスノーモービルで、騒音や排気ガスレベルがもっとも低いものを使用しなければならないことを意味する。
それまで、乗り入れ車両の多くが古い2ストロークエンジンの車両で、排気ガスの状態が悪く騒音が大きかった。2ストロークエンジンというと、日本では50cc未満のスクーターによく使われている。構造上、オイルとガソリンを混合して燃やすので、排気が汚くなりやすい。その一方で、小さい排気量であっても比較的大きな馬力が得られるという特徴がある。もちろん、4ストロークエンジンであっても、古くなればそれだけ排気ガスの状態も悪くなる。
そこで、この規制では、
- 公園内で使用されるスノーモービルの改善について国立公園局が製造者と協力していくこと
- 2003/2004シーズンは、炭化水素排出量の90%、一酸化炭素排出量の70%を削減することのできるすべてのスノーモービルをBATとする
- 現時点でのBATは、2002年製造、4ストロークのArctic Cat社製もしくはPolaris製である
と明確に定められている。このBATと認定されなければ、乗り入れることはできない。基準にメーカー名まで示されているのには驚かされる。
国際スノーモービル製造者協会(International Manufacturer's Association: ISMA)との和解の経緯から、製造業界に配慮した内容としているものと推測できる。つまり、製造者側にとっては、仮に台数が規制されたとしても、特定の新型スノーモービルが売れるのであれば、むしろ利益は増大する。また、いわば公的な“お墨付き”を得ることで、全米規模のスノーモービル販売にも悪い影響は決してない。国立公園局としても、予算をかけずに乗り入れ車両が更新され、より静かで排気ガスのきれいなスノーモービルに統一される。