環境を巡る最新の動きや特定のテーマを取り上げ(ピックアップ)て、取材を行い記事としてわかりやすくご紹介しています。
トップページへ
シリーズ・もっと身近に! 生物多様性(第14回)
「都道府県の生物多様性戦略づくり 〜埼玉・千葉・石川・愛知の協演」
アメリカ横断ボランティア紀行(第18話)
シリーズ・もっと身近に! 生物多様性(第13回)
南米ペルー、インカトレイルをゆく
アメリカ横断ボランティア紀行(第17話)
[an error occurred while processing this directive]
No. アメリカ横断ボランティア紀行(第18話) イエローストーン国立公園
page 4/4  123
4
Issued: 2008.08.28
イエローストーン国立公園[4]
 目次
最終規則の決定
最終規則の決定
 このような紆余曲折を経て、ようやく最終規則がとりまとめられた【6】

 最終規則では、1日当たりの乗入れ台数を、イエローストーン国立公園についてスノーモービル540台、スノーコーチ83台、グランドティートン国立公園及びパークウェイについてはスノーモービル195台、スノーコーチ10台と決定した。また、イエローストーン国立公園については、乗入れはすべてガイドが同行しなければならないこととされた。
 こうして、イエローストーン国立公園の冬季スノーモービル規制は、ようやく最終規則が決定された。大々的なスノーモービルの台数規制としてはおそらく世界でも先進的なものだろう。世界初の国立公園であるイエローストーンは、今も国立公園管理のフロントランナーといえる。
【6】 最終規則
最終規則は、連邦規則集(Code of Federal Regulation: CFR)の国立公園システムにおける特別規則として、2007年12月に告示されている。

軍隊による国立公園の管理

国立公園設立後の1878年に撮影された、ノリス所長一行の写真。当時は、軍隊が国立公園を管理していた(NPS PHOTO)
写真29:国立公園設立後の1878年に撮影された、ノリス所長一行の写真。当時は、軍隊が国立公園を管理していた(NPS PHOTO)
当時の職員の様子。現在の国立公園局職員のユニフォームに、当時の軍服のイメージが受け継がれていることがわかる(NPS PHOTO)
写真30:当時の職員の様子。現在の国立公園局職員のユニフォームに、当時の軍服のイメージが受け継がれていることがわかる(NPS PHOTO)

初期の利用者

初期のビジターがクマに餌付けをしているところ(NPS PHOTO)
写真31:初期のビジターがクマに餌付けをしているところ(NPS PHOTO)
ビジターがシカに餌付けをしているところ(1925年撮影 NPS PHOTO)
写真32:ビジターがシカに餌付けをしているところ(1925年撮影 NPS PHOTO)
初期の利用者の様子(NPS PHOTO)
写真33:初期の利用者の様子(NPS PHOTO)
ビジターが洗濯をしている様子(1986年撮影 NPS PHOTO)
写真34:ビジターが洗濯をしている様子(1986年撮影 NPS PHOTO)

初期の自動車利用の様子

初期のビジターとオールドフェイスフル間欠泉。当時は自動車を間欠泉のすぐ脇まで乗り入れることができた(NPS PHOTO)
写真35:初期のビジターとオールドフェイスフル間欠泉。当時は自動車を間欠泉のすぐ脇まで乗り入れることができた(NPS PHOTO)
クマを見る利用者と車の列(NPS PHOTO)
写真36:クマを見る利用者と車の列(NPS PHOTO)
乗合バスの様子(1919年撮影 NPS PHOTO)
写真37:乗合バスの様子(1919年撮影 NPS PHOTO)
道路のぬかるみにタイヤがはまってしまった自動車。当時は公園へのアクセスも未整備で、時間とお金に余裕のある利用者だけが国立公園を訪問することができた(1925年撮影 NPS PHOTO)
写真38:道路のぬかるみにタイヤがはまってしまった自動車。当時は公園へのアクセスも未整備で、時間とお金に余裕のある利用者だけが国立公園を訪問することができた(1925年撮影 NPS PHOTO)
<妻の一言 〜イエローストーン国立公園〜>

 イエローストーン国立公園はワイオミング州の北西の端にあります。レッドウッドからはかなりの距離があるので、飛行機で行くことにしました。グランドティートン国立公園の南にあるジャクソン空港まで行き、そこでレンタカーを借りました。乗り継ぎもあり、結局ジャクソンに到着したのは夜でした。その日はジャクソンに宿泊しました。
ティートンポイント展望台から見るティートン山脈
写真39:ティートンポイント展望台から見るティートン山脈

 翌日早朝、グランドティートン国立公園に向かいました。国立公園に入ると、ティートン山脈がまるで屏風のように、目の前にそびえています。手前を悠々と流れるスネーク川、険しい岩肌。山頂は雲間から見え隠れしていました。
 ジャクソン側からは、国立公園の入り口ゲートが2箇所あります。ゲートは国立公園に少し入ったところに設けられているので、その手前部分は入場料金を支払わなくても利用できます。
 ムースエントランスのすぐ手前にビジターセンターがあり、グランドティートン国立公園に関する情報がいろいろ入手できます。入場料金はさすがに高いものでした。金額は覚えていませんが、たしか20ドルくらいだったと思います(現在の入場料金は25ドル)。
ムースビジターセンター
写真40:ムースビジターセンター

 ちょうど夏休みシーズンだったので、イエローストーン国立公園内のホテルはほぼ一杯。日程の3分の2はグランドティートンに宿泊することになりました。グランドティートン国立公園はイエローストーンに比べるとずっと小ぶりな公園で、正直なところあまり名前も聞いたことがありませんでした。
 イエローストーンに行くことを上司のスタージアさんに相談に行ったときには、  「隣のグランドティートンもいいところよ。私は大好きなの。ぜひ行ってみてね」と勧められました。
 他にも、レッドウッドの公園職員にグランドティートンファンが多いことがわかりました。
 公園内にはまだ買収されていない集落地も残されているそうです。湖もダム湖だったりしますが、雄大な山と豊かな川があり、周回道路を回っていても飽きることがありませんでした。
 
以前そこに生活していた人が使っていた納屋が、見学用にそのまま残されていました
写真41:以前そこに生活していた人が使っていた納屋が、見学用にそのまま残されていました
ジャクソン湖はダム湖ですが、とてもきれいなところでした
写真42:ジャクソン湖はダム湖ですが、とてもきれいなところでした

 グランドティートンでは、ブラックベアー、ハクトウワシ、ムース、オスプリー(ミサゴ)、ペリカンなどが至るところで観察できます。特に、スネーク川の「オックスボーベンド」というところは、動物がよくあわられるところで、私たちも何度も足を運びました。砂利道を運転して川岸まで行った時、ちょうど頭上をハクトウワシが旋回していました。その姿に見とれていると、突然川に急降下して大きな魚を捕まえるではありませんか! その魚をつかんで、対岸の木の枝で食べ始めました。私たちは、その後も1時間ほどそこでハクトウワシの様子を見ていましたが、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
 
ペリカン
写真43:ペリカン
早朝のオックスボーベンド
写真44:早朝のオックスボーベンド

 この公園では動物を見つけることは難しくありません。何台かの車が路肩に駐車していると、それが「動物発見」のサインです。ここでは、動物を見つけると、われ先に路上に車を止め、双眼鏡とカメラを抱えて飛び出すのが「ルール」のようでした。皆、他の車にはお構いなし。あちこちで突然渋滞が始まります。この渋滞がエスカレートすると、車両がすれ違えなくなり、完全に車両の通行が止まってしまいます。特に、ムースやクマのような大物が出てくると、周囲はものすごい状態になります。レンジャーが駆けつけ、交通整理を始めたこともありました。そして、その動物が見えなくなると、あっという間に渋滞は解消します。ですので、ちょっと路肩に車を止めると、「何かいたのか?」と他の車も集まってきてしまいます。不用意な路上駐車は避けた方がいいようです。

路上駐車の様子。まだ渋滞は発生していません
写真45:路上駐車の様子。まだ渋滞は発生していません
路肩に現れたムースを眺める人たち
写真46:路肩に現れたムースを眺める人たち

 イエローストーン国立公園には、ジョンD.ロックフェラージュニア記念パークウェイという道路を通って行きます。イエローストーンの入口ゲート前は、さすがに自家用車の長蛇の列でした。入場料を準備していましたが、グランドティートンの入場券で入ることができました。
 イエローストーン国立公園に入って驚いたのは、道の両側にある松の木が細くてひょろひょろしていることでした。気候が乾燥している上、森林火災は消火しない方針だからだということでした。
 公園のあちこちからは温泉の蒸気が立ち上っています。オールドフェイスフル地区に行くと、あちこちに間欠泉があります。ガイザーというきれいな青色の温泉を湛えた泉も無数にあります。どれもものすごい熱湯で、日本のような入浴用の温泉はありませんでした。

オールドフェイスフル間欠泉にて
写真47:オールドフェイスフル間欠泉にて
ガイザーからあふれるお湯は、光の加減できれいな青色に見えます
写真48:ガイザーからあふれるお湯は、光の加減できれいな青色に見えます


 宿泊したのはキャニオンビレッジというところにあるバストイレ付きのバンガローでした。
 チェックインの時にカウンターで対応してくれた若いスタッフは、英語が少したどたどしく、話を聞いてみると、海外からのインターンだということがわかりました。
 「国立公園で研修をしたかったんですが、空きがなかったので、コンセッション業者(ホテルなど公園内の施設の運営している契約会社)のインターンに応募したんです」  海外の学生にとって、こうした海外の国立公園での実務研修の機会はとても貴重なものに違いありません。

ルックアウトポイント展望台からみる滝(Lower Falls)
写真49:ルックアウトポイント展望台からみる滝(Lower Falls)
地形から、「イエローストーンのグランドキャニオン」と呼ばれています。この山肌が黄色く見えることから、「イエローストーン」の名が付いたといわれています
写真50:地形から、「イエローストーンのグランドキャニオン」と呼ばれています。この山肌が黄色く見えることから、「イエローストーン」の名が付いたといわれています

 バンガローのあるエリアには、展望台がいくつもあります。イエローストーン川がいくつかの大きな滝になっており、天候さえよければ誰でもきれいな写真が撮れます。アーティストポイントというところの遊歩道や展望台には余裕があって、大きな駐車場もあり便利です。展望台からはミサゴの巣も見えました。
 ちなみに、その滝のある渓谷の山肌が黄色っぽいことから、「イエローストーン」という名前がついたそうです。
 また、この一帯にはバイソンが群れをなしています。道路脇でうずくまっていたり、車の直前を群れで横切ったりします。早朝から野生生物を探しに行ったときなどは、バイソンの群れが川を渡っているところを見ることができました。  キャニオンビレッジから北の周回道路は、ひたすら広大な自然景観の中を走ります。イエローストーン国立公園の大きさを実感するルートです。

道路わきのバイソン
写真51:道路わきのバイソン
北の周回道路沿いのラーマーバレーの風景。雄大な風景を眺めながらドライブを楽しむことができます
写真52:北の周回道路沿いのラーマーバレーの風景。雄大な風景を眺めながらドライブを楽しむことができます


 今回の訪問では、スタージアさんからのアドバイスもあったためか、イエローストーン国立公園よりも、グランドティートン国立公園の方が楽しめたように思えます。グランドティートンは多少小ぶりで、気に入った場所に何度も足を運ぶことができました。バイソンはあまりいませんが、ムースやペリカン、ハクトウワシなど、いろいろな野生生物が姿を見せてくれます。何といってもティートン山脈がきれいで、展望台などからたくさん写真を撮ってしまいました。
 イエローストーンとグランドティートンはとにかく見所が一杯で、またゆっくり行ってみたくなるような公園でした。

 ページトップ
page 4/4  123
4

関連情報 |
  参考資料(英文)
 "Mountainous Area Management in Japanese National Parks: Current Status and Challenges for the Future"
(Masashi NORIHISA and Wataru SUZUKI, Global Environmental Research Vol. 10, No.1, p. 125-134, Association of Research Initiatives for Environmental Studies)

記事・写真:鈴木渉(→プロフィール

[an error occurred while processing this directive]