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2008年環境重大ニュース
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No. アメリカ横断ボランティア紀行(第19話) アラスカへ(その1)
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Issued: 2008.12.11
アラスカへ(その1)[3]
 目次
スワード到着
エグジット氷河
氷河クルーズ
スワード到着
 夕方、ようやくスワードに到着した。スワードは、ゴールドラッシュの時代、アラスカの海の玄関口として栄えたそうだ。ここから、アラスカ鉄道がアンカレッジを経由して、デナリ、フェアバンクスまで伸びている。港には大型客船、氷河クルーズ船、漁船、釣り船などが所狭しと係留されている。
写真24:スワードの港の風景
写真24:スワードの港の風景
写真25:大型客船も停泊していた
写真25:大型客船も停泊していた
写真26:キーナイフィヨルド国立公園のビジターセンター

 キーナイフィヨルド国立公園のビジターセンターは、港に立ち並ぶおみやげ屋やレストランのならびにあった。もちろん国立公園の区域外だ。小ぶりの建物の内部には、簡単な展示とレンジャーデスクが備えられている。伝統的なカヌーが壁にかけられ、国立公園に関するパネル展示などがあるがその数は少ない。この国立公園は、ごく一部の区域を除いて、直接上陸することはできない。主に海上からクルーズ船で楽しむ公園になっている。そのため、ビジターセンターの役割も通常の国立公園とは大きく違っているのだろう。

 とりあえず、翌日の氷河クルーズを予約する。クルーズ船はすべて民間業者により運営されているが、そのうち1社だけ、国立公園局のガイドが同乗するツアーを提供している。料金は若干高めだった。
 予約がすんなり済んでしまったので、桟橋を散歩してみることにした。釣り客が、釣ってきた魚をさばいている。水道のある専用の作業台で、それぞれ黙々と作業にいそしんでいる。内臓などはそのまま海の中に捨てているようだ。海水は、氷河の影響でやはり少し白っぽく濁っている。すると、すぐ近くで「バシャバシャッ」と音がした。
 「あれ何?」
 妻が波立つ水面を見ていると、丸いのっぺりとした頭がのぞく。口に大きな魚をくわえて、右へ左へと海面にたたきつけている。一見するとアザラシのようだ。しばらくそうしながら魚を食べ終わると、すうっと私たちのいる桟橋の下をくぐって泳いでいった。驚くほど大きい。
 「これ、ひょっとしたらトドじゃない?」
 そういえば、レッドウッドの展望台からも見たことがある。はるか下の海面で、同じようにして魚を食べていた。しばらく魚を追っていたようだったが、どこかへ行ってしまった。
 私たちは、思いがけないことに少し興奮しながら、ホテルへ向かって歩いた。もうあたりは暗くなりかけている。
 帰りがけに、この辺りで釣れる魚の解説板を見つけた。ハリバットの他、タラとかカサゴの類の絵がたくさん描かれている。脂の乗った白身魚の煮付けとはしばらくご無沙汰だったので、「これがうまそうだ」などと言い合いながらその解説を散々眺めた。その後、あきらめて近くのレストランに立ち寄り、揚げたてのフィッシュアンドチップスをテイクアウトすることにした。フライは、ハリバットの大きな切り身で、カラッと揚がっていた。急いでホテルに帰り、ご飯を炊いてたいらげた。なかなかおいしかった。

○キーナイフィヨルド国立公園(Kenai Fjords National Park)

キーナイフィヨルド国立公園
キーナイフィヨルド国立公園
 米国の四大氷原(ice cap)のひとつであるハーディング氷原(面積約700平方マイル(約1,800平方キロメートル))と氷河により刻まれた海岸フィヨルドを特徴とする国立公園。海域には、トド、ラッコ、アザラシなどの海棲哺乳類や、多くの海鳥などが生息している。ビジターセンターは公園境界から約10kmほど離れたスワードにある。  1978年に国立記念物公園(National Monument)に指定され、1980年に国立公園として設立された。公園の面積は67万エーカー(約27万ヘクタール)。
エグジット氷河
 キーナイフィヨルド国立公園には、唯一陸路で利用できる区域がある。それがエグジット氷河(Exit Glacier)だ。クルーズの出発には時間があるので、この氷河まで続く歩道を散策することにした。
写真27:朝日に映えるエグジット氷河
写真27:朝日に映えるエグジット氷河
写真28:エグジット氷河地区の入口標識
真28:エグジット氷河地区の入口標識
写真29:ゲートを過ぎると、駐車場とミニビジターセンターが整備されている

 外は驚くほど寒かった。朝早かったこともあるが、ダウンの上着を着ていてもすぐに体が冷えてしまう。車道を氷河に向けて走っていると、道路の左側に白い氷河が近づいてくる。中央に少し黒い線が入っていて、氷河が実際に“流れて”いるようすがわかる。  エグジット氷河は、広大なハーディング氷原から流れ出ている。この氷河はその下にある岩石を削り出し、厚さにして一日あたり平均1インチ(約2.5センチメートル)もの土砂をリサレクション川に供給している。横幅の広いこの川の河道には、確かに膨大な量の砂利が堆積している。建設工事の材料として需要があり、砂利採取が地域の産業にもなっているそうだ。
 公園の入口標識をすぎてしばらくすると料金ゲートがある。勤務時間になっていなかったために、ゲートにはまだ人がおらずそのまま通過できた。この、“とれる場所で、とれる時間に”料金を徴収する姿勢【4】はとても面白い。動物園や遊園地と違い、こうした自然の風景地は、時間外だからといって必ずしもゲートで利用者を締め出す必要はない。昼間の利用者の多い時間帯のみ料金を徴収することが、徴収コストや職員の体勢などからいっても妥当なのだ。

 駐車場に車を停め、歩道を歩き始める。歩道は舗装されており、その上、幅員が4m程もある。何でこんなに立派な歩道が必要なのだろうかと不思議になる。歩道の入口付近の氷河は約30年弱前になくなり、モレーンがその名残として残されている。そのため、歩道付近の植生もまだまだ未熟なのだ。多少幅の広い歩道をつくったところで、自然環境に大きな影響があるというわけでもないのだろう。
 氷河に近づいてみると、思ったよりも大きいことがわかる。氷河のところどころにはクレバスが口を開き、光の加減で青く見える。歩道は一部が氷河の上にも続いていて、氷の上を歩くことができる。なかなか不思議な光景が広がっている。氷河から流れ出す流水は、にごった灰色の濁流で、大量にリサレクション川に流れ込んでいる。
【4】 “とれるところで”、“とれる人から”徴収する料金制度
(第9話)「大陸横断編・その2」
写真30:エグジット氷河。この氷の塊りが流れていると思うと不思議な気持ちになる
写真30:エグジット氷河。この氷の塊りが流れていると思うと不思議な気持ちになる
写真31:氷河によって削り取られた土砂が大量に流れ出ている
写真31:氷河によって削り取られた土砂が大量に流れ出ている
氷河クルーズ
写真32:乗船したクルーズ船「キーナイ・スター号」

 キーナイフィヨルド国立公園は、氷河と氷河の作り出したフィヨルド地形で知られている。大半のビジターは、公園外のスワード港から遊覧船に乗り、海上から氷河と氷河地形、及びクジラやトドなどの海棲哺乳類海鳥などを観察する。
 私たちは、ホテルに戻り軽く朝食をとってから、徒歩で港へと向かった。

 クルーズ船は思っていたよりも大きかった。天気もよく、風もそれほどない。レンジャーが同船するために人気があるのか、船はほぼ満員だ。乗客が船に乗り込むと、まもなく船はゆっくりと動き出し、リサレクション湾を沖に向かって滑り出した。氷河の影響か、海の色は青いものの白濁している。乗客はほとんどがデッキに出ている。
 「今日最初のお客さんです。2時の方向を見てください」
 見ると、海面に2つの塊りのようなものが浮かんでいる。
 「ラッコだ!」
 船は一時騒然となる。船の騒ぎを気にもせず、愛らしい格好で何か食べている。船が近づいても逃げない。双眼鏡を覗くと、くりくりとした目がこちらを見ていた。
写真33:ラッコ。海水は白っぽくにごっていて冷たそうだ

 レンジャーは若い女性職員だった。レンジャーはマイクで話している。デッキでも客室でも、船の中にいればどこでも話が聞ける。一通り最初のトークが終わったところで質問してみる。
 「民間のクルーズ船で国立公園局の職員が自然解説をするというのは知りませんでした。おもしろいですね」
 「国立公園局は、毎年全ての遊覧船運行会社に対し、インタープリターの派遣をオファーするんです。今年は1社のみがその申し出に応じました。レンジャーが同行する場合、その間のレンジャーの賃金を遊覧船運行会社側が負担しなければなりません」
 ビジターにはレンジャー同乗のツアーが人気だが、コストも高くなってしまう。

 やがて湾を出ると視界が開けた。程なく右手に大きな氷河が見えてくる。ベアー氷河だ。今朝ほど見たエグジット氷河とは比べ物にならないほど大きい。
 「この氷河の中央付近から左側が国立公園です」
 氷河は、海に流れ込んでいる大きな河のようだ。それにしても、まだ国立公園区域に入っていなかったのには驚いた。
写真34:ベアー氷河
写真34:ベアー氷河
写真35:大小の島が点在している
写真35:大小の島が点在している
写真36:ステラーズシーライオンの群れ。写真上方には小さくアンテナが見える。ビデオカメラにより常時群れの状態がモニターされているそうだ

 次第に、大小の島が見えてきた。島といってもほとんどは岩山で、むしろ大きな岩礁といった方が印象に近い。周囲はほぼ垂直に切り立つ崖になっていて、たくさんの海鳥が羽を休めている。
 「このような急峻な崖は、海鳥の繁殖地になっています」
 確かに、カモメのような白い鳥や、鵜のような鳥がとまっている。

 「あれ、パフィンっていうんだって」
 水面に、何とも愛嬌のある鳥が浮かんでいる。大きさはハトと同じくらいか一回り小さいくらいだろうか。
 「飛ぶよりも、海の中で泳ぐほうが得意なんですって」
 船が近づくと飛んで逃げるのだが、羽ばたいてもなかなか海面から離陸できず、海面を這うように移動していく。
 「えさを食べ過ぎて、飛べなくなってしまいました」
 レンジャーの解説に、乗客の間に笑いがこぼれる。
 他の岩礁の上には、トド(ステラーズシーライオン)が大きな群れをなしていた。このトドは、現在は絶滅危惧種に指定されている。遠くからでも、その大きな鳴き声が聞こえる。
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