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No. アメリカ横断ボランティア紀行(第21話) アラスカへ(その3)
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Issued: 2009.06.11
アラスカへ(その3)[6]
 目次
<妻の一言>

■デナリのB&B

 デナリ国立公園内滞在中、私たちは公園の入口から10キロほど北にいったところにあるヒーリーという集落に宿泊していました。この集落には、小さめのホテルと、B&B(ベッドアンドブレックファースト)が何軒か建っていました。公園内のホテルは高いのですが、こうしたB&Bは私たちでも泊まれる程度のお値段です。私たちが泊まったのは、小さいながらきれいなB&Bでした。チェックインの手続きなどもありません。掲示に従って、それぞれ割り振られた部屋に入るだけです。
 部屋には、朝食を食べるテーブルと椅子、食器類、電子レンジと小さな冷蔵庫が置いてあります。冷蔵庫を開けると、きれいに盛りつけられた果物が皿に盛ってありました。電子レンジの脇には、パンとマフィン、そしていろいろなシリアルなどが置いてあります。自炊派の私たちにはとてもうれしいものばかりでした。お風呂も広く、久しぶりにバスタブもありました。ゆったりと深いバスタブです。地下には洗濯機もあり、洗濯物を溜め込んでいた私たちは、ここで大量の洗濯物を片付けることができました。
 ベッドはとても上等なもので、いつも泊まっているモーテルやボランティアハウスのベッドとは比べ物になりません。ベッドの上には、ムースなどのぬいぐるみが置かれています。
 何といってもすばらしいのは窓から景色でした。ヒーリーは国立公園区域外でしたが、目の前には湖と山並みが広がっていて、建物なども一切ありません。一度だけですが、ムースが姿を現したこともありました。

写真27 B&Bの窓から見える風景
写真27 B&Bの窓から見える風景

 もしかすると、アメリカに来てから泊まった宿としては、一番居心地のいい部屋ではなかったかと思います。支払いもネット上で済ませてあるので、宿のご主人とお会いすることはほとんどありませんでしたが、なぜかとてもアットホームな感じのするB&Bでした。

■タイガトレイル

 タイガトレイルは、その名のとおり、タイガの中を抜けていくトレイルです。そこから、ロッククリークトレイルを通り、管理事務所まで、ちょうど低い丘をひとつ越えるような感じです。インタビューは午前11時からの約束でしたので、7時半ごろからゆっくりとトレイルを歩いて事務所に向かうことにしました。

写真28 タイガトレイル
写真28 タイガトレイル
写真29 足元に広がるツンドラには霜がおりていました。赤いベリーもついています。
写真29 足元に広がるツンドラには霜がおりていました。赤いベリーもついています。

 その日の朝はとても寒く、足元のツンドラには一面霜が降りていました。案内標識も表面に霜がついていて、読めません。厚着をしていましたが、登り坂でもちょうどいい感じでした。
 しばらく登っていくと、ちょっと獣のようなにおいがしてきました。何か近くにいたのでしょうか?でも、そのような動物に出会うことはありませんでした。また、その先を歩いていくと、ようやく太陽が昇ってきました。トレイルから後ろを振り向くと、きれいな風景が朝日に照らされていました。アスペン(シラカバのような樹木)が黄葉し、暗緑色の針葉樹とのコントラストがとてもきれいです。

写真30 黄葉したアスペンと針葉樹が朝日に照らされていました
写真30 黄葉したアスペンと針葉樹が朝日に照らされていました

 足元のツンドラをよく見てみると、小さなベリーが実を付けていました。小さな丸い形をした葉は紅葉していて、白い霜に縁取られています。ちょうど道の両側をじゅうたんのように覆っています。
 しばらく歩いていると、トレイル上に何か小さなものが動いています。近づいてみると鳥だということがわかりました。ハトより一回りほど大きく、飛び立とうとはしません。ライチョウです。しばらくすると、もう一羽がおそるおそるとツンドラの茂みから出てきました。どうやらつがいだったようです。オスが私たちの気を引いているうちに、メスが先に逃げられるようにしているようです。このつがいを脅かさないように、ゆっくりと歩きます。ちょうど、よちよち歩くライチョウに道案内をしてもらっているようでした。約束の時間が近づいてきて少しハラハラしましたが、ようやくライチョウも近くの林に入ってくれました。
 下りもなだらかな道でした。少し早足で歩きましたが、無事、10分前に管理事務所に到着することができました。このトレイルはそれほど長いものではありませんし、取り立ててすごい自然があるわけではありませんでしたが、これまでに訪れた歩道の中でも、私にとっては一番のトレイルだったように思えます。

写真31 ドッグケンネル
写真31 ドッグケンネル
写真32 ケンネルの内部。産まれたばかりの子犬がいました
写真32 ケンネルの内部。産まれたばかりの子犬がいました

写真33 テント
写真33 テント

 到着した管理事務所はログハウスのような建物でした。また、そのすぐ裏にはドッグケンネル(犬ぞり用のイヌの飼育施設)がありました。インタビューの後行ってみると、たくさんの大きなイヌが、めいめい犬小屋のまわりで気持ちよさそうに寝そべっていました。シベリアンハスキーだそうです。今でも冬期の国立公園の巡視には犬ぞりが使われているそうです。管理棟にはまだ小さな子犬が母イヌと寝ていました。公園の職員の方がそのうち1頭を抱かせてくれました。人間に早く慣れさせるためということでしたが、母親はちょっと不安そうに見ていました。子犬は小さいですが、とてもかわいらしく元気でした。
 ケンネルには、昔の犬ぞりやテントなども展示されています。テントの中には、簡単な料理もできるストーブまでありました。こういったものをそりに乗せて探検や狩猟などをしていたのでしょう。
 「ワンワンワンワン!」
 突然、そこらじゅうのイヌが吠えはじめます。犬ぞりのデモンストレーションの時間がやってきました。雪はありませんが、ケンネル内にある砂利道のコースを一回りします。皆、自分が犬ぞりを引きたくてうずうずしているようです。リーダー役や、力の強い大きなイヌなどが職員により選ばれ、10頭ほどがうまく配置され、引き綱につながれます。

写真34 犬ぞりにつながれたシベリアンハスキー
写真34 犬ぞりにつながれたシベリアンハスキー

写真35 犬ぞりを使ったインタープリテーション
写真35 犬ぞりを使ったインタープリテーション
 
写真36 犬ぞりと
写真36 犬ぞりと

 国立公園の中でイヌが飼われているというのはとても意外でしたし、エサ代などの経費もばかにならないようです。イヌの形をした募金箱がユニークでした。
写真37 イヌの形をした募金箱
写真37 イヌの形をした募金箱


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記事・写真:鈴木渉(→プロフィール

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