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No.
Issued: 2009.06.26
神宿る戸隠のよもやま話
 実録・環境省レンジャーものがたり(第4回)
鏡池と戸隠山
 目次
戸隠の気候と植物
昔は海だった戸隠山
神宿る戸隠の歴史
樹齢400年を超える杉並木
戸隠山難所の蟻の戸渡り
修験者の休憩の場 百間長屋
九頭龍さまのお歯形
ラジオ放送小鳥声の記念碑
戸隠古道
最後に
戸隠の気候と植物
 戸隠は、長野県と新潟県の県境に位置し、上信越高原国立公園に指定されています。
 日本海に近く、日本海型気候の影響を受けて多雪地に生育するブナが見られるほか、太平洋側の気候の影響も受けるため、照葉樹林帯に生育する植物も見られます。また、標高が高いために、オオヤマザクラなどの北方系の植物も生育しています。
 独特の気候条件のもとで、多種多様な植物が豊富に生育しており、「トガクシショウマ」や「トガクシナズナ」など、「戸隠」の名前がついた植物も数多くあります。
昔は海だった戸隠山
 戸隠高原は長野市街地からおよそ車で30分。
 まるで屏風を立てたような急峻な山容が、不意に目に飛び込んできます。およそ500万年前の海底火山の噴出物で構成されている戸隠山は、その堆積物から貝の化石が発見されることが多々あることから、この辺り一帯が昔は海であったことが想像されます。激しい火山活動の後は隆起と侵食を繰り返し、現在のごつごつとした険しい山容となりました。
神宿る戸隠の歴史
戸隠山と戸隠神社「奥社」

 さて、急峻な山容をもつ戸隠山の名前の由来は意外と知られていませんが、天照大神(あまてらすおおみかみ)の「天の岩戸」伝説に由来します。弟(スサノオ)の粗暴な行為に怒った天照大神が岩戸に隠れたため、世の中が真っ暗になりました。大神に出てきてもらおうと、天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)が怪力で岩戸をこじ開け、遙か遠くに放り投げ、落ちた地が戸隠山となったと言われています。
 このような神話から、戸隠山は御神体として、現在も人々に厚く信仰されています。平安時代になると、「戸隠三千坊」と言われ、比叡山、高野山とともに修験道の道場として栄え、全国各地から修験者が集まったと言われています。
 
 古くから神宿る地として信仰を集めてきたため、現在でも数々の史跡が残されているとともに、周辺の森は信仰の地として大切に保存されてきました。現在でも戸隠の自然は神社と一体となった良好な自然の宝庫となっています。これらの神話にまつわる戸隠独特の自然について、いくつかご紹介しましょう。
樹齢400年を超える杉並木
随神門と杉並木

 約2キロに渡る戸隠神社「奥社」の参道。両脇には樹齢400年ほどの杉並木がずらりと並んでいます。その中を歩けば、厳粛な気分にさせられ、心が澄んでいくようです。
 運がよければムササビやフクロウにも遭遇することができるかも知れません。
戸隠山難所の蟻の戸渡り
蟻の戸渡り

 現在多くの登山者に利用されている戸隠山の登山道は、まさに修験道であったことがしのばれる難所がいくつもあります。岩石中の凝灰角礫岩から構成された硬い部分が、侵食によって細長く残された、「蟻の戸渡り」、「剣の刃渡り」など。恐怖のあまり、登山道にまたがって通行する登山者もよく見られます。
 修験者は昔、ここをわらじで通っていたと言われていますが、まさに修験道の名にふさわしい様相です。
修験者の休憩の場 百間長屋
百間長屋

 同じく風雨による侵食のため窟のようなくぼみのある地形が形成された場所がありますが、百間ほど入るくらいの大きさという意味で、百間長屋という地名がつけられています。
 修験者が休憩した場所であったと言われています。
九頭龍さまのお歯形
九頭龍さまのお歯形

 戸隠では神話にまつわるササの葉のお守りがあります。
 戸隠神社「九頭龍社」の御祭神である九頭龍大神(くずりゅうのおおかみ)は、古来より水を司る神様であるとともに、虫歯の神様として尊信されています。
 一列に小さな穴が並んでいるササの葉をご覧になったことがあるでしょうか。筒状に丸まって出てくるササの新芽がまだ開かないうちに虫に食べられた跡が、葉が開いていったときに列状に連なった食痕として残るものです。
 戸隠神社では、これを「九頭龍さまのお歯形」として、虫歯予防のお守りにしています。
ラジオ放送小鳥声の記念碑
小鳥の声放送記念碑

 戸隠は日本有数の小鳥の生息地としても知られています。戸隠森林植物園を中心に、おおよそ60種ほどの鳥類が生息していると言われています。
 日本で初めてラジオから野鳥の声を流そうとした際、野鳥の種類が豊富な戸隠から放送したことを記念して、遊歩道の脇に「NHK小鳥の声放送記念碑」が建っています。
 毎年多くのバードウォッチャーやカメラマンが野鳥を見るために戸隠を訪れています。
戸隠古道
戸隠古道

 戸隠は古くから山岳信仰の拠点とされており、長野市善光寺から戸隠に向かって道が整備されていました。多くの人が歩いてきた道の所々には、石碑や「丁石」と呼ばれる道しるべが数多く残っており、歴史の古さを物語っています。戸隠古道は現在もウォーキングイベントなどで人々に親しまれています。
最後に
 歴史深い戸隠の自然をいくつかご紹介しましたが、戸隠には戸隠古道を中心に自然を楽しむための遊歩道がたくさんあります。歴史と融合した戸隠の神秘的な自然の中を、ゆっくり歩いて、楽しんでいただければと思います。
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(記事・写真:戸隠自然保護官事務所 山北育実)

〜著者プロフィール〜
 レンジャーを志し、平成16年に環境省に採用される。最初の配属は環境省自然環境局国立公園課で国立公園全般の仕事に携わる。
 その後平成18年4月に長野自然環境事務所への配置換えを経て、同年9月に念願のレンジャーとして現在の戸隠自然保護官事務所勤務となる。信州の気候風土にも慣れ戸隠を愛する一員として国立公園の管理に携わっている。
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