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No. アメリカ横断ボランティア紀行(第10話) 大陸横断編・その3
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Issued: 2007.05.17
大陸横断編・その3(アリゾナ州〜ネバダ州〜カリフォルニア州)[1]
グランドキャニオン
 グランドキャニオンは、コロラド川に沿って形成された延長277マイル(446キロメートル)、幅15マイル(約24キロメートル)、深さ6,000フィート(1,830メートル)にも及ぶ大峡谷。私たちは、このグランドキャニオンを目指し、アリゾナ州フラッグスタッフから北上していた。これまでの砂漠地帯と比べるとずっと緑が濃くなってきたが、マンモスケイブ国立公園のある米国南東部と異なり針葉樹が多かった。

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 目次
グランドキャニオン国立公園
map
グランドキャニオン国立公園の入口標識
グランドキャニオン国立公園の入口標識
○グランドキャニオン国立公園(国立公園局ホームページ)http://www.nps.gov/grca/
 グランドキャニオン国立公園は面積1,218,375エーカー(約49万ヘクタール)。アリゾナ州北西部のコロラド台地上にある。半乾燥地にある隆起台地は雨水による侵食を受け、深い渓谷を形成している。標高の高い部分には森林も見られる。
 1908年に国立記念物公園に指定され、1919年に国立公園として再指定された。1979年には世界遺産に指定されている。
 2003年の利用者数は410万人と、米国の国立公園としてはグレートスモーキーマウンテンズ国立公園に次いで利用者が多い。

グランドキャニオン国立公園
 フラッグスタッフからグランドキャニオン国立公園に向かう途中、ガソリンを入れたスタンドで昼食のサンドイッチを食べる。夏期にはファーストフードのレストランになると思われる野外卓ベンチを使わせてもらった。
 グランドキャニオンに近づく。公園の周囲は驚くほど平らな針葉樹林で、遠くから見ると大地に細長い裂け目が入っているように見える。おそらく峡谷のほんの上部だけが細く横一線にみえているのだろう。
 グランドキャニオンには、峡谷をはさんで南北にサウスリムとノースリムがあるが、私たちは、アクセスが容易で多くの観光客が訪れるサウスリムへと向かった。料金ゲートを過ぎて乾燥した針葉樹林の中を走る。しばらくすると大きな駐車場が出てくる。もうその右側には目も眩むような大渓谷が広がっている。
 駐車場に車を停めて展望台に直行する。シーズンオフということもあり、展望台には人もまばらで、その風景をゆっくり楽しむことができた。目の焦点が思ったよりずっと遠くにあるのがわかる。雄大な景観というのはこのようなものをいうのかもしれない。
駐車場のすぐ前にある展望台にて

 車を降りてすぐに大渓谷が見えてしまうのは少々拍子抜けするが、これなら車椅子の人でも簡単に観光することができるだろう。それにしても、この時期はどの公園でも、裕福そうな白人の高齢者ばかりが目に付く。グランドキャニオンは外国人観光客も多い。この季節、学校があるので家族連れが少ないのはわかるが、それにしても客層にかなりの偏りがある。
 アメリカの子供や学生などに聞いてみると、ほとんどと言っていいほど、「国立公園は素晴らしい」という答えが返ってくる。ところが、実際に国立公園を訪れたことがある子供は意外と少ない。大学生になってようやく、友人の車に相乗りしながらバックパッキングでいくつかの公園を訪問したというような人も少なくない。
 国立公園局のホームページには、社会科学に関する調査研究のページがあり、同局の様々な調査報告書が掲載されている。いくつか関連のある調査を引用してみたい。また、このような調査の他にも、利用者の受入れ容量などに関する調査報告書などもあり、ぜひ一度ご覧いただきたいページの一つだ。
○National Park Service-Nature and Science, Social Science
 http://www.nature.nps.gov/socialscience/products.cfm

1)The National Park Service Comprehensive Survey of the American Public, Technical Report (1.8mb)
 http://www.nature.nps.gov/socialscience/pdf/NatSurvTechRep.pdf
<「国立公園」という言葉から連想するものは何ですか?>
  • 美しさ、自然、植物、動物:29%
  • (特定の国立公園名):21%
  • 国の遺産、ランドマーク、伝統、公園:14%
  • レクリエーション:7%
  • 政府、官僚的、連邦政府管理地:7%
  • 保護管理、保存:7%
 自然の美しさや野生動植物、国の遺産といったものが上位を占めるのは当然という気がするが、「レクリエーション」と「保護・保存」がいずれも7%と低く、また同じ割合で「官僚的・政府」という回答があるのはおもしろい。
<国立公園に行かない理由(過去2年間に行ったことがない回答者について)>
  • 距離が遠すぎる:39%
  • 時間がない、忙しすぎる:34%
  • 情報がない、不十分:17%
  • 全体的な費用:12%
  • 興味がない:10%
 国立公園に行かない理由として、「興味がない」がわずか10%で、多くが「距離」と「時間」を挙げているのは、アメリカの国立公園が僻地の原生地域にあるという「宿命」と、国立公園の持つ「魅力」といったものを裏付けているといえるのではないだろうか。また、意外なのは「情報がない」という回答が17%もあること。これだけ充実したホームページやパンフレットを備えた国立公園局でも、一般の利用者にはまだまだ情報が行き届かないということなのだろうか。
<学歴別にみた過去2年間に国立公園を訪問した割合(カッコ内は回答者に占める割合)>
  • 高卒未満(5%):訪問あり15%、なし85%
  • 高卒以上(25%):訪問あり18%、なし82%
  • 短大その他の準学士(32%):訪問あり30%、なし70%
  • 4年制大学卒(23%):訪問あり44%、なし56%
  • 大学院卒(14%):訪問あり50%、なし50%
 利用者の学歴をみてみると、高卒者は回答者全体の25%を占めるが、その82%は過去2年間に国立公園を訪問していない。その一方、4年制大学の卒業者は全体の32%を占め、その44%が過去2年間に国立公園を訪問している。このように、高学歴になるほど国立公園を訪問した人の割合が高くなっている。

 国立公園利用者の人種や民族についても興味深い調査結果がある。
<人種別の過去2年間に国立公園を訪問した割合(カッコ内は回答者に占める割合)>
  • アメリカンインディアン、アラスカ原住民(1%):32%
  • アジア系(3%):33%
  • 黒人またはアフリカ系アメリカ人(13%):14%
  • ハワイ原住民または太平洋島嶼民(1%):18%
  • 白人(83%):35%
 このデータからすると、この調査の回答者には白人【*1】が圧倒的に多いことがわかる。

 ここで注目すべきは、アフリカ系アメリカ人の利用率が極端に低いことである。この問題については、以前から調査が行われており、次の調査報告書もそのような取り組みの一つである。
2)Race, Ethnicity and Use of the National Park System (1999) (172k)
 http://www.nature.nps.gov/socialscience/pdf/SSRR_2.pdf

 この報告書によれば、1982年から翌年にかけて行われた、National Recreational Surveyの結果、白人回答者のうち国立公園を過去一度も訪れたことのない人の割合は42%であったのに対し、非白人マイノリティーについては、実に83%が国立公園を一度も訪れたことがなかった。特にアフリカ系アメリカ人が国立公園を訪問する割合は低く、その理由の一つをこの報告書では「行動様式の違い」に求めている【*2】が、その他に、「交通手段の有無」(access of transportation)、「差別的な経験」が挙げられている。
 公共交通機関がほとんどない国立公園においては、自家用車か観光バスを利用する必要がある。アメリカは一般的に自動車が高価である。また観光バスはあまり一般的ではなく、あったとしても外国人観光客向けが多い。
 「差別的な経験」については、正直なところ私たちにはあまり実感がなかった。おそらくこれはアメリカ社会に深く根ざしたものなのだろう。

 また、この調査報告書では、ヒスパニック系の利用者の特徴として、大人数でのグループ利用が多いことを挙げている。セコイヤ国立公園、ビスケイン国立公園などでは、大人数で楽しそうにピクニックしているグループを目にした。なお、ヒスパニック系の利用者を多く見かけたこれらの公園は、住宅地などから比較的近く、無料かもしくは比較的入場料金の安い公園であった。

 また、利用者数について、将来予測のための有識者会合報告書が掲載されていた。
3)Visitation Forecasting and Predicting Use of NPS Parks and Visitor Centers: Focus Group Report; James H. Gramann, Visiting Chief Social Scientist, National Park Service Social Science Program
 http://www.nature.nps.gov/socialscience/pdf/NPS_Forecasting_Report.pdf

 この調査報告書によれば、1987年から国立公園局の管理する公園地の利用者数は、横ばいもしくは減少傾向にある。その点からすると、アフリカ系アメリカ人をはじめとするマイノリティーの利用者を増やすことには大きな意味があるといえるだろう。→(その2)へ続く

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【*1】  最近急増しているヒスパニック系住民は白人に分類されている。白人に占めるヒスパニックの割合は11%、うち過去2年間に国立公園を訪問した人の割合は27%であった。
【*2】 白人とアフリカ系アメリカ人の行動様式の違い(行動様式に関する調査の結果例)
 カッコ内は、白人:アフリカ系アメリカ人の対比。屋外での水泳(52%:28%)、観光(69%:48%)、屋外演劇及びダンス(43%:56%)。アフリカ系アメリカ人は一般的な野外レクリエーションや観光よりも、集団で楽しむ演劇やダンスを志向する傾向があることを示している。
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