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No. アメリカ横断ボランティア紀行(第12話) レッドウッドの森のボランティア
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Issued: 2007.08.30
レッドウッドの森のボランティア[3]
 目次
自動車通勤
レッドウッドの森
自動車通勤
 徒歩通勤だったマンモスケイブと異なり、レッドウッドでは毎朝片道約10分の自動車通勤だ。途中、エルク(ウマほどもある大型のシカ)が道端のメドー(草地)で草を食んでいるのをよく見かける。時々道路を群れで横断したりしている。
 道路はそれほど太くない。そこを伐採されたレッドウッドやダグラスモミなどを満載したトラックが行き来する。伐採業はいまだにこの地域の主要産業だ。冬はそれほど寒くないものの、毎日と言っていいほど雨が降る。この湿潤で温暖な気候がレッドウッドに地球上で最後の生育地を提供している。
道端のメドーで草を食むエルクエルクの群れが道を横断していることもある
道端のメドーで草を食むエルクエルクの群れが道を横断していることもある
丸太を積んだトラックが往来する

 ここではマンモスケイブの時のようなフレンドリーな挨拶はあまりない。知り合いの公園職員同士が手を挙げる程度だ。南部管理センター(South Operation Center : SOC)も至るところで施錠されている。駐車場に入るためには暗証番号が求められ、さらに、建物に入るためにICキーが必要だ。うっかり鍵を持たずに外に出ると、中に入れなくなってしまう。地元の一部住民との間には、いまだに公園設立当時のわだかまりが残っている。万が一を考えて、セキュリティーを厳重にしているようだ。

レッドウッドの森
 レッドウッドの森を一言で表現すれば、「恐竜の森」だ。直径1メートルをゆうに越えるレッドウッドがローマ建築の柱のように立ち並ぶ。林床には一面巨大なシダが生い茂っている。あまり知られていないが、この公園は映画「ジュラシックパーク」のロケ地としても使われたことがあるそうだ。
 この、カリフォルニア州の太平洋に面した細長い地域だけは、一年中湿潤で、気温は滅多に氷点下にはならない。冬は雨、夏は霧がこの森に豊富な水分を運んでくれる。
大きなシダ(sword fern)が林床を覆っている原生林内のレッドウッドの大木
大きなシダ(sword fern)が林床を覆っている原生林内のレッドウッドの大木
 風で倒れるまで伸び続けるという巨木レッドウッドは、平均樹齢500〜700年といわれ、2,000年に達するものもあるそうだ。分厚いフェルト状の樹皮とタンニンを含む材部により、火や害虫を寄せ付けない。致命的な病気もないそうだ。太陽の光を浴びるための個体間の競争に勝ち残ることさえできれば、世界一高い樹に育つ可能性も出てくる。
レッドウッドの倒木。樹皮の部分が厚くしっかり材を覆っている。
レッドウッドの倒木。樹皮の部分が厚くしっかり材を覆っている。
別の倒木の根部。こちらは相当太いが根はそれほど深くないのがわかる。
別の倒木の根部。こちらは相当太いが根はそれほど深くないのがわかる。
レッドウッドの大木の頂部についている枝葉

 種子はとても小さく、トマトの種ほどしかない。種子1ポンド(約453グラム)で、59,000〜300,000個に相当するという。
 また、樹形は何とも愛嬌がある。古い木になると、葉は枝先の方にちょぼちょぼ付いているだけで、あまり葉や樹形は洗練されていない。いまだ原始的な針葉樹の性質をとどめているようで、幹や枝、葉の分化が未熟なのかもしれない。

 原始的な性質の一例として、レッドウッドは針葉樹としては珍しく萌芽更新することが挙げられる。森の中にストーンヘンジのように円形に並んだ巨木が見られることがあるが、それは何百年前に枯れた一本の巨木の株の周りに萌芽した幼樹が一人前になったものだ。その様子が教会の祭壇に似ていることから、キャセドラル(大聖堂)トゥリーとも呼ばれる。
 また、横倒しになった木や水平に折れた枝から垂直に「幹」が伸びていることもある。枝が自分のことを「幹」だと勝手に判断してしまっているかのようだ。それぞれが思い思いに自分の樹形を作っている様は愉快ですらある。
横倒しになった木から、「幹」が何本も生えている。
横倒しになった木から、「幹」が何本も生えている。
折れた枝からは、垂直な枝が何本も伸びている。枝が自分のことをすっかり幹だと思い込んでいるようにも見える。
折れた枝からは、垂直な枝が何本も伸びている。枝が自分のことをすっかり幹だと思い込んでいるようにも見える。
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