野生生物部門から噂を聞きつけたのか、今度は地質部門のグレッグさんに声をかけられた。
「レッドウッドクリーク集水域修復事業の調査をやっているんだけど、一度一緒に来てみないか?」という誘いだ。
この事業は、国立公園に指定される前に伐採された森林の修復を目的としたものだ。当時の搬出用林道やブルドーザーの踏み跡道を自然林に復元することにより、土砂流出を防止する。レッドウッドクリークは、1978年に拡張された国立公園区域を流れる河川で、伐採跡地から流入する土砂により河床が大幅に上昇してしまっている。現在も、夏には流水が伏流してしまい、河川が分断されてしまう。
グレッグさんの調査は、伐採直後の航空写真を元にどの林道を除去すべきか現地踏査するものだ。次期の事業費は3年間で200万ドル(約2億4千万円)。大規模な事業だ。
「ぼくは病み上がりだから、あまり早く歩けない」
グレッグさんはそう言うが、山に入ると荒れた林道跡もいとわず進んでいく。地質部門の職員は、みな筋金入りのフィールドワーカーぞろいだということを後に知る。私たちは過労で体調を崩したグレッグさんの「足慣らし」にちょうどよかったようだ。