日本の生物多様性国家戦略は、1995年10月に、政府の生物多様性保全の取組み指針として「地球環境保全に関する関係閣僚会議」において決定されたのが始まりです。その後、2002年3月に全面的に改定され、自然の保全と再生のための基本計画として「新・生物多様性国家戦略(以下「新・戦略」とする)」が策定されました。新・戦略では、国内で現在生物多様性が直面している問題を「3つの危機」として整理したことが特徴です。この「3つの危機」を解消するための様々な取り組みの方針や具体策が、体系的にとりまとめられました。
一方、新・戦略の策定後毎年行われてきた国家戦略の実施状況の点検では、国内の生物多様性の荒廃に歯止めがかかっていないことが指摘されてきました。このような状況や、生物多様性を取り巻く国内外の状況の変化を踏まえ、2006年より環境省が中心となって新・戦略の改定作業が進められています。今回の改定では、初の試みとして全国8都市における「地方説明会」を開催し、また中央環境審議会における審議の過程で地方公共団体や民間企業などからヒアリングを実施するなど、様々なステークホルダーを巻き込む試みも行われました。
生物多様性国家戦略に関する世界概況の統計からも明らかなように、改定作業を完了している国は多くありません。なかでも、2回目の改訂作業を終えようとしている日本は極めて例外的な存在といえ、「フロント・ランナー」と呼ばれることもあります。
現行の新・戦略では、「現状と課題」から記述が始まっていますが、一般市民にとって生物多様性の概念やその重要がなかなか浸透していないことから、第三次生物多様性国家戦略では、第1章で生物多様性の重要性と理念を、暮らしと関係づけながら記述しています。
この他、第三次国家戦略の特色として以下のような点が挙げられます。
- 従来の3つの危機とは別に、「地球温暖化による危機」が、逃れられない深刻な問題として位置づけられている
- 100年先を見据えたグランドデザインとして、国土の生態系を100年かけて回復するという「100年計画」を提示
- 地方や企業による取り組みの必要性を強調
- 「生物多様性を社会に浸透させる」「地域における人と自然の関係を再構築する」「森・里・川・海のつながりを確保する」「地球規模の視点を持って行動する」という「4つの基本計画」を提示
なお、「国家戦略」は国の行動や政策だけではなく、国、地方公共団体、企業、NGO、国民など各主体の役割についても述べています。条約の実施に関する会合など国際的な議論のなかでも、企業や地方公共団体が生物多様性の動向に大きな影響を及ぼすことが指摘されていますが、日本の国家戦略でも同様の認識を示しています。
また、ミレニアム生態系評価やGBO2などの成果を受けて、日本国内の生物多様性の状況を評価するための「生物多様性総合評価」の実施が打ち出されています。総合評価の一環として、影響を受けやすく保全が優先される地域(ホットスポット)の選定なども提案されています。
さらに、2010年に開催される生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)の日本招致を契機として、日本の伝統的な里山の持続可能な利用様式やライフスタイルを「SATOYAMAイニシアティブ」として広く世界に発信していこうという意欲的な記述もあります。