作成日 | 2003.09.10 更新日 | 2025.07.17
調査捕鯨
チョウサホゲイ 【英】Scientific whaling [同義]鯨類捕獲調査
解説
IWC加盟国による科学調査を目的とした「鯨類捕獲調査」のこと。
1982年に国際捕鯨委員会(IWC)で採択された商業捕鯨モラトリアム(一時停止)には付帯条件が設けられており、“モラトリアムは最良の科学的助言に基づいて検討されるもの”とされている。そして、遅くとも1990年まで(この期限は守られていない)にモラトリアムが鯨資源に与える影響についての包括的な評価を行い、修正および捕獲頭数の設定について検討することとなった。このため、日本はIWCが行う包括的評価に必要な科学的データを提出するために調査を実施。これがいわゆる調査捕鯨である。
1987年より南氷洋鯨類捕獲調査を開始し、1994年には北西太平洋鯨類捕獲調査を開始した。鯨類捕獲調査は、国際捕鯨取締条約第8条で担保された締約国の権利であり、条約の他の規定及びIWCの諸決定による影響を受けない。
ところが、2014年3月31日、オーストラリアの提訴(2010年05月28日)を受けた国際司法裁判所は、南極海での日本の調査捕鯨が国際条約に違反すると結論付けた。
同判決では、調査のために鯨を仕留めること自体は「不合理でない」との見解を示し、日本が小規模な調査捕鯨が継続できる余地を残したが、その後、商業捕鯨再開をめざした日本は2018年9月のIWC総会でモラトリアムの限定的解除について提案したが大差で否決(賛成27、反対41、棄権2)されたことなどを受け、2019年6月末にIWCから脱退し、2019年7月から日本の領海と排他的経済水域に限定した商業捕鯨を再開した。ただし、条約脱退により、加盟国に認められる調査捕鯨の実施根拠を失うことになった。(2025年4月改訂)
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関連Webサイト
- 北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPN)の概要(一般財団法人日本鯨類研究所):https://www.icrwhale.org/JARPNgaiyou.html
- 第二期北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPNII)の概要(一般財団法人日本鯨類研究所):https://www.icrwhale.org/JARPNIIgaiyou.html
- IWC 科学委員会における第U期南氷洋鯨類捕獲調査プログラムを巡る議論(日本水産学会誌):https://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan/81/6/81_WA2196-3/_article/-char/ja/
- 国際捕鯨取締条約脱退と日本の進路(東京財団):https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=2985