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環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

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環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

No.013

Issued: 2013.01.11

第13回 環境省・谷津龍太郎地球環境審議官に聞く、2013年からの環境行政[1]

実施日:平成25年1月8日(火)11:00〜11:30
聞き手:一般財団法人環境情報センター 理事長 大塚柳太郎

1992年には有効だった先進国と開発途上国という区分は、今や現実を反映しにくくなっている

谷津龍太郎(やつりゅうたろう)さん
谷津龍太郎(やつりゅうたろう)さん
1976(昭51)年、旧環境庁に入庁。
2008年環境省廃棄物・リサイクル対策部長、10年官房長を経て、12年9月から地球環境審議官。
専門分野は、環境政策。
1989〜1991年JICAインドネシア人口環境省環境政策アドバイザーのほか、国連大学高等研究所客員研究員。
地球サミット(1992)、地球温暖化防止京都会議(UNFCCC COP3/1997)、G8環境大臣会合(2008)等の国際交渉に従事。

大塚理事長(以下、大塚)―  明けましておめでとうございます。今年も環境省は多くの課題を抱えるとともに、国民から大きな期待を寄せられていると理解しております。今日は、谷津地球環境審議官に、環境省を代表する立場でお話しいただければと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
東日本大震災からの復旧復興が国内最優先の課題ですが、一方で、最大の地球環境問題である地球温暖化も大変気になるところです。COP18(気候変動枠組条約締約国第18回会議)が昨年11月から12月にカタールのドーハで開かれましたので、地球環境審議官をされておられます谷津さんから、ドーハ会議の成果を踏まえ、地球温暖化にどう立ち向かうかを最初にお話しいただければと思います。

谷津さん― 新年おめでとうございます。
ドーハのCOP18には、日本として大きく2つの目標を立てて臨みました。1点は、AWG-KPと呼ばれる「京都議定書の下での更なる約束に関する特別作業部会」と、AWG-LCA と呼ばれる「気候変動枠組条約の下での長期的な協力の行動のための特別作業部会」という2つの作業部会を閉じることです。一昨年に南アフリカのダーバンで開かれたCOP17で、「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」が設けられ、この新設された特別作業部会の下で一元的に2020年以降の新たな枠組の交渉を担うことが決められたのですが、AWG-KPにもAWG-LCAにもいろいろな課題があり、うまく閉じることができるか懸念も残されていたからです。

【表】気候変動枠組条約にかかわる京都議定書採択以降の主な動き
COP会議 出来事
開催地
1997 3 京都 京都議定書採択
2005 - - 締約国が55に達し、京都議定書が発効
2005 11 モントリオール(カナダ) AWG-KP設置
2007 13 バリ(インドネシア) AWG-LCA設置、「バリ行動計画」
2009 15 コペンハーゲン(デンマーク) 「コペンハーゲン合意」
2010 16 カンクン(メキシコ) 「カンクン合意」
2011 17 ダーバン(南アフリカ) 「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会」設置
2012 18 ドーハ(カタール) 同上「特別作業部会」の作業計画に関する合意
AWG-KP:
「京都議定書の下での更なる約束に関する特別作業部会」。京都議定書附属書B(締約国およびその温室効果ガスの排出削減数値目標)の改正について議論する特別作業部会。
AWG-LCA:
「気候変動枠組条約の下での長期的な協力の行動のための特別作業部会」。主に2020年までの緩和策・適応策・資金供与等々の取組全般について議論する特別作業部会。

もう1点は、「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会」が、2015年までに、2020年以降の新しい枠組の交渉を終えるという、2011年に決定済みのスケジュールを実行するための交渉の進め方、つまり作業計画をつくり上げることでした。 幸いにも、両方の目標に対し満足できる結果となり、日本政府としては大きな成果があがったCOPだったと思っています。

COP18会場のカタール国立コンベンションセンター
COP18会場のカタール国立コンベンションセンター

CCAC ハイレベル会合 記念撮影
CCAC ハイレベル会合 記念撮影

大塚― ダーバンでのCOP17までの成果が実現されるということですね。ところで、京都議定書の第1約束期間は昨年終了し、今年から第2約束期間に入ったわけで、これからどのようになるのでしょうか。

谷津さん― 日本政府としては、3年前にメキシコのカンクンで開かれたCOP16で、京都議定書の第2約束期間には加わらないという意思を表明してきました。温室効果ガスの排出量の削減義務を先進国だけに負わせ、開発途上国は負わないという枠組が京都議定書です。先進国と開発途上国という区分は、1992年に気候変動枠組条約ができたときには有効でしたが、昨年国連の「リオ+20(持続可能な開発会議)」が開催されたように20年を経過して各国の状況は様変わりしました。第2約束期間を受け入れれば、米国や中国等の主要経済国は何も拘束されないという不公平かつ排出削減の観点から、極めて効果的でない枠組みが固定化されることになってしまいます。

大塚― 締約国中の先進国からの排出量が、世界全体に占める割合はどのくらいになっているのですか。

谷津さん― 米国を除いて、京都議定書で削減義務を負っていた国の排出量は1990年時点では40%だったものが、2009年では26%にまで低下しています。一方、COP16においてカンクン合意がなされました。これは、先進国は2020年の削減目標、途上国は削減行動をかかげ、測定、報告、検証(MRV)を行うもので、各国は2年ごとに進捗レポートを提出することになりました。カンクン合意後に目標や行動を条約事務局に提出した国のCO2排出量は世界全体の83.2%をしめており、この合意に基づいて主要国が参加する公平かつ実効性のある枠組みを構築するのが我が国の最終目標です。一昨年の3.11以降、エネルギー事情が非常に厳しくなったことは、機会あるごとに各国に説明してまいりました。それなりにご理解をいただいておりますが、今回のCOP18でも、日本が厳しい事情の中でも最大限の努力をしている姿勢を表明してまいりました。

いろいろな問題を抱え異なる立場の国々が一堂に会して物事を決めるのですから、時間がかかるのはやむを得ない

大塚― お話のように、3.11以降、日本の厳しい状況は国内ではもちろん、海外でも徐々に理解していただいていると思います。大きな流れとしてみると、2010年にCOP16のカンクン合意があり、翌年にCOP17のダーバン合意があり、そして今回のドーハでの合意と、日本とすれば好ましい方向に進んでいると理解してよろしいのでしょうか。

谷津さん― そう思います。今回、「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会」の作業計画が決まったことで、今年、来年、再来年の合計3年間の交渉期間に、次期枠組についてきっちりと答えを出すことが、改めて世界各国の共通認識になったと思います。

大塚― 2015年までに、2020年以降の計画をつくることの合意は大きな前進だと思います。ところが、NGOやマスコミからは、先送り感が強いのではないかという意見もありました。同じような意見あるいは論調は、先ほど谷津さんのお話にも出ました「リオ+20」についても聞かれたと思います。国連が主催する国際会議で大きな方針を決め実行に移すというプロセスを、谷津さんはどのようにお考えでしょうか。

谷津さん― 国連での交渉というのはコンセンサス方式ですから、各国が基本的に合意しないと物事が決められないのです。気候変動枠組条約について申しますと、現在の締約国が196ヵ国(オブザーバーを含む)だと思いますが、いろいろな問題を抱え異なる立場の国々が一堂に会して物事を決めるのですから、時間がかかるのはやむを得ないと思います。そのような状況ですが、人類社会に対する共通の責任という1点を大事に、これまでのCOPのどの会議でも最終的に合意に達し、前進が図られてきたと思っています。それにしても、今回は金曜日(2012年12月7日)中に終えようという固い決意で臨んだにもかかわらず、結局、最終合意がなされたのは翌日の夜の9時と丸1日も伸びてしまい、もう少し効率的な議論の仕方はないのかと感じました(笑)。

大塚― 人類社会に対する共通の責任というご指摘は、これからますます大事になってくると思います。地球環境を世界中のみんなで護るという認識は、徐々に広がっているように感じます。

気候システムが大きく変わってきて、それに伴う被害の増加に各国が危惧を深めている

谷津さん― 最近、世界各国で実感されているのは、「極端な気象現象」(苛酷な気候変動による悪影響)ですね。各国で「極端な気象現象」が顕在化しており、どの国も気候変動に対して脆弱だと理解しはじめています。一つひとつの台風、ハリケーン、集中豪雨が、どのような気候変動の影響かは不明としても、全体として「極端な気象現象」が増えるトレンドはかなりの確度で科学的に示されているわけです。中国でも、アメリカでも、オーストラリアでも、ヨーロッパでも、日本でもそうですが、気候システムが大きく変わってきて、それに伴う被害の増加に各国が危機感を深めていることは、今回のドーハ会議でも改めて強く認識いたしました。

大塚― よく分かりました。ところで、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)総会が日本で来年3月に開催されます。これを機会に、日本が国内での対策をさらに高度化し、国際的なリーダーシップをとることが期待されていると思います。どのような方針に立つべきかお伺いします。

谷津さん― 来年3月に横浜で開かれる今度のIPCC総会では、第2ワーキンググループの報告をまとめることが大きなテーマです。第2ワーキンググループというのは、影響面を扱っています。言い換えますと、気候変動の影響がどの程度出ているか、あるいは出ると予測されるかに関する科学的知見を集大成しようということです。我々としても、温室効果ガスの排出量を削減する、ミティゲーションと呼ばれる緩和策だけでなく、気候変動に対応できるようにする、アダプテーションと呼ばれる適応策にも力を入れていく必要があると考えています。日本の国内対策の面でもそうですし、国際的にも緩和策と適応策を見据え、両者のバランスの上に立った取組みがますます必要になってきます。その大きなきっかけづくりになることを、来年の横浜のIPCC総会に期待しています。

風力発電(北海道苫前町上平グリーンヒルウィンドファーム
風力発電(北海道苫前町上平グリーンヒルウィンドファーム、2001.8.13) (C) (財)北海道環境財団

海面上昇の影響(マーシャル諸島マジュロ環礁、2001.5)
海面上昇の影響(マーシャル諸島マジュロ環礁、2001.5) (C) Masaaki Nakajima
※全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より

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