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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
ESDについては、日本が一番真面目に取組んでいる
地域について学習しようとするとき、NPOがアドバイザーとして相談に乗る
今につながる過去に学び、今を知り、未来がどうあったらいいのかを考える
【2】国連持続可能な開発のための教育の10年(UN Decade of Education for Sustainable Development)
2005年から始まる10年間の取り組みとして、国連で採択されたもの。「DESD」または「ESDの10年」と呼ばれる。
「持続可能な開発のための教育(ESD)」は、国際的な政治経済の会議での議論を通じて形成されてきた概念で、ストックホルム会議(1972)以降に一般化した「環境教育」が、ブルントラント委員会報告『Our Common Future』(1984)に盛り込まれ注目を浴び、さまざまな場面で議論されてきた「持続可能な開発」という概念と並行して、持続可能性の概念を追及するための教育として発展してきた。テサロニキ宣言(1997)で、内容に関する一定の到達点をみることができる。
その具体的な取り組みを推進するため、2002年のヨハネスブルグサミットの実施計画交渉で、日本政府の提案により盛り込まれたDESD採択の検討の勧告を受けて、第57回国連総会において採択されたもの。
【3】今後の環境教育・普及啓発の在り方を考える検討チーム報告書(環境省)
環境省が、環境教育の普及啓発のあり方について考えることを目的に立ち上げた検討チーム(リーダーは樋高剛大臣政務官)。小澤さんは、有識者の一人として参加。
検討チームでは、これまでの環境教育のあり方をゼロベースで見直し、学校現場や地域教育、企業における教育、幼児教育などさまざまな角度から環境教育とその普及の在り方を検討。平成23年7月に検討成果を取りまとめた報告書を公表している。
http://www.env.go.jp/policy/edu/team_rep/

No.018

Issued: 2013.06.12

第18回 小澤紀美子東京学芸大学名誉教授に聞く、これまでとこれからの環境教育[2]

実施日:平成25年5月22日(水)16:00〜16:30
聞き手:一般財団法人環境情報センター 理事長 大塚柳太郎

ESDについては、日本が一番真面目に取組んでいる

ESD研修の様子(写真提供:NPO法人こども環境活動支援協会)
ESD研修の様子(写真提供:NPO法人こども環境活動支援協会)

環境教育とESD研修風景
環境教育とESD研修風景

大塚― 「国連持続可能な開発のための教育の10年【2】に、話を移したいと思います。

小澤さん― その前のことからお話しします。環境省では素晴らしい環境教育の教材を作りました。環境省が取組んできた環境教育のトピック(水、廃棄物、大気、みどり、エネルギー、地域)をCD-ROM化して普及させました。各対象を、それぞれ個別的でなく、自然の仕組み、人間活動が与える影響やかかわり方、その歴史的・文化的視点を含めて総合的・相互関連的に扱うような展開を示唆しているのです。
2002年のヨハネスブルグサミットで、NGOの努力もあり、当時の小泉首相が「国連持続可能な開発のための教育の10年(ESDの10年)」を提案したのです。その英語の頭文字をとって、DESDあるいはESDと呼ばれています。これまでも実施していますが去年の暮れからの企画で、環境省は文部科学省の協力を得て、ESDの視点を強化した環境教育に関して先生方の研修を始めています。

大塚― 「ESDの10年」の成果もご紹介ください。

小澤さん― ESDについては、日本が一番真面目に取組んでいるように思います。というのも、日本の学校教育には学習指導要領があります。欧米人はESDに取組んでいると言いますが、概念に関する議論が強く、さらに公平に学べる仕組みが無いと言えます。イギリスを例にとると、日本の学習指導要領に準じてナショナルカリキュラムを作りましたが、一方で2002年から環境教育という言葉がなくなり、シチズンシップを必須にする変更も起きています。さらにボンでのESDの中間報告での日本の事例は地域での取り組みが多く発表されていたのです。

大塚― 日本では、企業などが環境教育に関わろうとする動きも出てきていますが、小澤さんはどのように感じておられますか。

小澤さん― 私自身が関わっていることを、狭い範囲かもしれませんが紹介したいと思います。1995年に、「エコニコ学習」という、小学生を対象に一種の環境教育をしているスーパーの企画室の方から相談を受けたことがあります。未来の消費者に、環境に配慮した商品を理解してもらうのがテーマの1つだったのですが、お店を活用し、できるだけ分かりやすく、本人が「気づく」ことを大事にするような企画となり、店長や店員が現在も店舗を活用して地域の小学校の子どもたちに実施されています。
あるビールメーカーは、環境意識を育む「若武者育成塾」を運営しています。その基本は単に教えるのではなく、参加者が企画・体験を中心に自らが地域の環境の課題に取組んでいくことを重視しています。別の清涼飲料メーカーでは、環境にかかわる活動を子どもたちと進めている地域の方々、さらに次世代を育成するねらいで高校生・大学生を顕彰・奨励金を出しいるところもあります。日本各地で実践されている活動はすばらしい面も多いのですが、新しい環境教育促進法が強調している、多様なステークホルダーの協働の意味を企業側が十分に理解しているか、少々疑問に感じることもあります。企業に属している社員の方々も、地域のNPOの方々や児童・生徒、若者とともに「内発的な力」を高めることが、持続可能な発展に向け最も重要だと思うからです。

地域について学習しようとするとき、NPOがアドバイザーとして相談に乗る

大塚― 少し話題を変え、地域を対象とする環境教育について、小澤さんの経験やお考えをお聞かせ下さい。

ゴール会場は西宮市内での「ふるさとウォーク」(写真提供:NPO法人こども環境活動支援協会)
ゴール会場は西宮市内での「ふるさとウォーク」(写真提供:NPO法人こども環境活動支援協会)

EWC展示をみる親子(写真提供:NPO法人こども環境活動支援協会)
EWC展示をみる親子(写真提供:NPO法人こども環境活動支援協会)

小澤さん― いくつか事例を紹介します。気仙沼市とは2002年からお付き合いがあります。市の環境基本計画の中に、環境教育をしっかりと入れ、さらに持続可能性を入れている自治体で、地域が哲学を共有することが不可欠ですね。また、西宮市は2003年に環境学習都市宣言をし、こどもエコクラブのもとになった「地球ウォッチングクラブ(EWC)」を実施しています。小・中学校の教室内の学習にとどまらず地域の方々も熱心に行っており、現在は持続可能な地域づくりを目指して中学校区単位で地域住民の対話を促していることです。EWCエコカードや市民活動カードなどの仕組みをつくり、エココミュニティ活動自立発展プログラムを展開し、それらの活動をNPOが支援しているのです。阪神淡路大震災を経験して地域を知るための「語り部」を育成し、地域がもつ歴史的な意味をウォッチするのです。EWCでは子どもたちが勉強したことをポスターにし、3月に展示し、多くの地域住民が参観し、さらに対話を深めています。地域の災害の歴史については、NPOがコミュニティでも学校でも使えるように情報を提供しています。先生たちも地域に住んでいない方が多いので、地域について学習しようとするとき、NPOがアドバイザーとして相談に乗るのです。そういう意味では、先進的な事例といえます。
もう一つ、愛知県が2014年にESDの10年の催しをするのですが、豊田市の小学校では、木の葉を育てる教育は多くあるけれど木の根っこを育てる教育が無いことに気づき、教員と学校全体で取り組みを始めています。その木の根っことは、クリティカルに考える力、未来を予測して計画を立てる力、コミュニケーション能力、そして多面的に創意的に他者と協力する態度などの育成を目指しています。2年前、環境省で「今後の環境教育・普及啓発の在り方を考える」検討チームを創った際にも、「育成する能力」を中心に議論して報告書をまとめました【3】。学校の先生たちが持続可能性という概念を中心に、木の根っこをしっかり育てることが学びの基本と捉えているのです。私も、豊田市の学校の授業づくり(校内研修)に何度か伺い持続可能菜未来をめざす授業づくりを先生たちと行っています。

今につながる過去に学び、今を知り、未来がどうあったらいいのかを考える

東京学芸大学名誉教授の小澤紀美子さん(左)と、一般財団法人環境情報センター理事長の大塚柳太郎(右)。
東京学芸大学名誉教授の小澤紀美子さん(左)と、一般財団法人環境情報センター理事長の大塚柳太郎(右)。

大塚― 大変素晴らしい話を伺いました。最後に、今までの話と重複してもよろしいかと思いますが、EICネットのユーザーにメッセージをお願いいたします。

小澤さん― 学びとは、「今につながる過去に学び、今を知り、未来から学ぶ」ことで、未来社会がどうあったらいいのか、地域の未来がどうあったらいいのか、というビジョンを共有するところから始まります。東日本では、ジュニアリーダー育成という活動が行われています。今年3月に、皇太子様が国連で水と水害の歴史について講演されました。その時、南三陸町の18歳のジュニアリーダーの高校生も復興の地域づくりに「新しい町をつくっていくのは私たち。若者のもつ力に気づいて、10代の力を活かして」と講演し、提言したのです。若い人の力を信じ、若い人と一緒に活動していくことで、多様な世代が共感しながら、システム論的な見方ができることを望んでいます。1972年のオイルショックの時に、ローマクラブが「成長の限界」というレポートを出しましたね。人口が増え資源を浪費することによって起きる問題の危険性を提起したのですが、まさに今それが起きているのです。今につながる過去に学び、今を知り、未来がどうあったらいいのかを考える努力や現在の「学び」が思考回路の育成にもっとつながってほしいと願っています。

大塚― 本日は、多くの経験に基づくお話しをいただきました。環境教育がもつ広がりと重要性が改めて確認されたと思います。本当にありがとうございました。

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