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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
1999年に売り出した「エコファンド」は、環境に優しい企業を投資でサポートする環境金融商品の第1号だった
テプファーさんが私をUNEP FIに呼び入れた張本人
日本の再生可能エネルギー全体の発電容量は、中国、米国、ドイツはもちろんのこと、イタリアやスペイン、あるいはインドよりも少ない
COP20で大きかったのは、中国とアメリカというCO2の2大排出国が前向きな姿勢を打ち出したこと
【1】国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP Finance Initiative; UNEP FI)
 UNEP(国連環境計画)により1992年に設立され、UNEPとUNEP FI宣言に署名している世界の200社以上の金融機関との間で、金融業務において環境および持続可能性への配慮を普及・促進させることを目的とする。近年は、地球温暖化と持続可能な開発への投資に重点を置いている。2003年に、末吉さんらの尽力でUNEP FI東京会議が開催された。
【2】エコファンド
 環境対策に積極的に取り組み、その成果が株価にも好影響をもたらしている企業に重点的に投資する投資信託。一般的な投資信託に比べ、女性の購入者の比率が高いのが特徴。
【3】クラウス・テプファー(Klaus Tüpfer)
 ドイツの政治家で環境政策の専門家。1998年から2006年まで、UNEP 事務局長を務めた。
【4】REN21(Renewable Energy Policy Network for the 21st Century; 21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク)
 パリに本部をもち、自然エネルギーへの急速な移行を目指し、世界中の多岐にわたるステークホルダーの統率力を集結している。
【5】固定価格買取制度(Feed-in Tariff: FiT)
 再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を用いて発電される電気の買取価格を法律で定める助成制度で、1978年に米国で導入された法律が走りとされる。日本では2012年7月1日に始まった。
【6】「20 20 20」
 2010年にEU(欧州委員会)が“Energy 2020”として発表したエネルギー戦略で、「温室効果ガス排出を2020年に1990年比で20%削減する」「最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を20%に引き上げる」「エネルギー効率を20%引き上げる」とする、3つの「20」目標。
【7】エネルギーヴェンデ(Energiewende)
 ドイツが進めるエネルギー大転換政策で、2050年までに総発電量に占める自然エネルギー比率を80%に拡大するという目標。EUの第一次電力指令(1997)を受けて、ドイツ電力市場では1990年代末から小売りの全面自由化、2005年からは本格的な発送配電分離が進められてきた。2011年には、総発電量に占める自然エネルギー比率が19.9%に上昇し、原子力比率(17.7%)を上回った。
【8】CCS(CO2分離回収技術:Carbon (Dioxide) Capture and Storageの略称)
 二酸化炭素(CO2)を排出する火力発電所プラントの排ガスからCO2を分離・回収・貯留する技術。

No.033

Issued: 2015.02.24

第38回 末吉竹二郎 国連環境計画・金融イニシアティブ特別顧問に聞く、金融手法を活用した環境対策の日本および世界の状況[1]

実施日時:平成27年1月19日(月)12:30〜
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

1999年に売り出した「エコファンド」は、環境に優しい企業を投資でサポートする環境金融商品の第1号だった

末吉竹二郎(すえよしたけじろう)さん
末吉竹二郎(すえよしたけじろう)さん
国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)特別顧問、一般社団法人グリーンファイナンス推進機構代表理事。
1967年東京大学経済学部卒業後、三菱銀行入行。ニューヨーク支店長、取締役、東京三菱銀行信託会社(ニューヨーク)頭取、1998年日興アセットマネジメント副社長を経て現職。著書に「ビジネスに役立つ!末吉竹二郎の地球温暖化講義」など多数。

大塚理事長(以下、大塚)― EICネットのエコチャレンジャーにお出ましいただきありがとうございます。末吉さんは長年にわたり、国内はもとより国際的な視点に立ち、金融手法を活用した環境対策に携わってこられました。本日は、再生可能エネルギー利用の現状や展望、また代表理事をお務めになっておられますグリーンファイナンス推進機構の活動などについてお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
早速ですが、国際的な視点からお伺いします。末吉さんは、早くから国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)【1】の活動にかかわってこられました。最初に、そのきっかけや具体的な活動内容についてご紹介いただけますでしょうか。

末吉さん― きっかけは2000年の秋でした。ドイツ銀行の本店がある金融都市のフランクフルトで、2年に1回開かれるUNEP FIの総会にあたるラウンドテーブルミーティングがあり、私が招かれ話をしたのです。なぜ招かれたのかと言いますと、私は当時、日興アセットマネジメントで国際部門を担当しており、前年の1999年に「エコファンド」【2】という新しい投資信託商品が売り出されました。エコファンドは、ふつうの株式投資の商品がお金にお金を産ませるのに対し、お金だけでなくて環境に配慮している企業に投資するのです。環境に優しい企業を投資でサポートする環境金融商品の第1号だったのです。それが、半年か1年足らずで1000億円を超える大ヒット商品になったのです。

大塚― 末吉さんが中心になって推進されたのですね。

末吉さん― 副社長として、国内銀行等への販売促進にもかかわりました。この爆発的なエコファンドの売行きが、国連あるいは国連環境計画に「漏れた」のです。漏れたという意味は、UNEP FIが1992年に始まったのに、日本はそれまで参加していなかったのですよ。より正確に言えば、損保会社さんは保険に直接かかわる問題が扱われるので途中から参加していました。ところが、私が勤めていた三菱銀行を含む商業銀行はまったく関心を示さず、外部からみると日本はブラックホールだったのです。何が起きているか分からないブラックホールの日本で、ある日突然1000億円を超える環境商品が生まれたので、びっくりしたのでしょう。

大塚― 大きな転換期の渦中におられたのですね。


テプファーさんが私をUNEP FIに呼び入れた張本人

末吉さん― もう少し詳しく説明しましょう。先ほど申し上げた、2000年にフランクルトで開かれた1泊2日のUNEP FIのラウンドテーブルミーティングで、私は初日に30分ほど話す機会をいただきました。話の後、私の前に長蛇の列ができたのです。自薦他薦を含め、一緒にビジネスをしようとの申し出でした。さらに驚いたのは、UNEPの方々から昼飯を一緒にとろうと誘われ、その席でUNEP FIの活動をサポートしてほしいと頼まれたのです。UNEP FIにまったくかかわわってこなかったアジアから、それも世界第2位の金融大国の日本にエコ金融商品の波が生まれたと歓迎されたのです。誘いを受けUNEP FI の運営委員会(ステアリングコミッティ)に加わり、10人くらいの委員の1人になったのです。その時のUNEPの事務局長がクラウス・テプファー博士【3】でした。東日本大震災の直後に、ドイツでメルケル首相の脱原発の方針を受け倫理委員会が設置されましたが、その共同議長をされた方です。テプファーさんが私をUNEP FIに呼び入れた張本人です。

大塚― 1000億円という額のエコファンドを、末吉さんはどう思われましたか。

末吉さん― 実際は1200〜1400億円だったと思います。あっと驚くものでした。日本の中で、エコにかんして投資家サイドの考え方に静かな変化が生まれていたのです。私がそのときの状況を、“Happy miss-calculation”(「幸運な誤算」)と表現したのを覚えています。
付け加えますと、投資家に3つの特徴がはっきり現れていました。初めて株式投資をする人、若い人、女性の3つです。これはきわめて象徴的でしょう。今よりもレベルは低かったかもしれませんが、日本国民の間に環境問題、とくに地球温暖化に対する関心が強くなっていたのです。


日本の再生可能エネルギー全体の発電容量は、中国、米国、ドイツはもちろんのこと、イタリアやスペイン、あるいはインドよりも少ない

世界の自然エネルギー発電と燃料への新規投資額 先進国/発展途上国(2004年〜2013年)
※拡大図はこちら

自然エネルギー発電設備容量 世界合計、EU28か国、BRICS、上位6か国(2013年)
※拡大図はこちら

大塚― 素晴らしい話を伺いました。その地球温暖化問題への有効な手段である再生可能エネルギーの取組みについて、世界の状況をご説明ください。

末吉さん― 再生可能エネルギーが、猛烈な勢いで増え始めているのが世界の状況です。REN21(21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク)【4】という団体が、毎年統計を出しています。2004年からの10年間で、世界で再生可能エネルギー分野に投入されたニューマネーの合計は約1兆6600億ドル、約180兆円になります。

大塚― 想像するのも難しい金額ですね。

末吉さん― ものすごい金額ですよね。2013年末の状況で申し上げると、世界の自然エネルギー・再生可能エネルギーの発電容量のキャパシティは、設備能力でおよそ5億6000万キロワット(560ギガワット)になります。とくに目につくのは最近の急速な伸びで、風力と太陽光だけでも2014年の1年間に1億キロワットも導入されたのです。ちょっとピンとこないかもしれませんが、いくつかの比較をあげますと、日本全体で再稼働していなくても活きている原発をすべて加えても、2億2000万キロワットくらいにしかなりませんから、その3倍近くになっています。また、世界のすべての原発を加えても3億数千万キロワット程度なので、その倍に近いのです。ただ注意していただきたいのは、今申し上げたのはキャパシティです。太陽光は夜間には働きませんので実際の稼働率は下がります。とはいえ、キャパシティとしてこのようなレベルになっているのです。
世界における再生可能エネルギーの利用状況の中で、日本の地位はドーンと落ちています。唯一トップ5に顔を出すのは、第4位の太陽光だけです。3年前の7月に始まった再生可能エネルギーの固定価格買取制度【5】で、実際の設置量はまだわずかとはいえ、約6600キロワットが認可されたためです。問題は、日本の再生可能エネルギー全体の発電容量が、中国、米国、ドイツはもちろんのこと、イタリアやスペイン、あるいはインドよりも少ないことです。日本は完全に置いてけぼりを食った感じです。

大塚― 中国とインドの名前も出ましたが、世界全体を見渡すと、ヨーロッパが先行しているのでしょうか。

末吉さん― そうではありません。中国が直近の勢いも強く、再生可能エネルギー全体の発電容量で圧倒的です。中心は風力で、風力だけでも現時点で1億キロワットを超えていると思います。一方、ヨーロッパは「20・20・20」【6】という大きな計画を掲げており、2020年までに自然エネルギーで20%を賄おうとしています。たとえばデンマークでは、いずれ100%に、そして首都コペンハーゲンでは2025年までに風力発電を100基にしカーボンニュートラルにすると言っています。デンマークあるいはコペンハーゲン市は人口が少ないかもしれませんが、約8000万の人口をもつドイツでも、現在の自然エネルギーの発電量が30%に達しています。その中に水力発電も入っていますが、自然エネルギーの割合をやがて50%に、最終的には80%へと、「エネルギーヴェンデ」【7】と呼ばれるエネルギー大改革を進めています。彼らはエネルギーヴェンデを、戦後ドイツ社会における最大の変革と位置づけています。戦後70年間における国家の改造あるいは社会改革という点で、力の入れようが日本とはまったく違うのですよ。

大塚― 10年あるいは20年くらい前から差が広がっていると感じます。

末吉さん― そのとおりです。

COP20で大きかったのは、中国とアメリカというCO2の2大排出国が前向きな姿勢を打ち出したこと

大塚― 話題を変えさせいただきます。昨年リマで開かれたCOP20と、今年12月にパリで開かれるCOP21を、末吉さんはどのようにみておられますか。

末吉さん― 私はどちらかというと楽観論に立っており、今年のCOP21では全員参加の国際合意が成立するだろうと思います。楽観論と申し上げたのは、実は非常な悲観論が後ろにあるわけです。IPCCの第5次評価報告書をご覧になれば、温暖化の現実の厳しさが分かりますよね。一番象徴的なのは、2100年までに2℃以内に温度上昇を抑える前提に立てば、CO2の大気中濃度の上昇をゼロか、できればマイナスにすべきだと言っているわけです。これからは、自然エネルギーか原発、火力発電所の場合はCCS(CO2分離回収技術)【8】の装置をつけCO2を出さないものに替えるという厳しい要求をしています。また、別途原発については、安全性その他で問題が多いとも言っています。私は、IPCCの最終警告と受け取っていますけれども、合理的な判断のできる人には手を打たなければだめだと分かりますよね。
実際、毎日のように世界各地で異常気象による災害が起きています。昨日と一昨日、アメリカのNASA(アメリカ航空宇宙局)とNOAA(アメリカ海洋大気庁)が、去年は観測史上最も暑い年だったと発表しています。ニューヨークタイムズには、「30歳未満でこの地球に生きている人は、20世紀の平均気温を体験したことがない」という記事が出ていました。一方の異常寒波についても、気象学者によると、北極からの気流が変わり北極が非常な高温状態になり、さまざまな異変をもたらしているわけです。日本で昨年8月に広島の土砂災害をもたらした豪雨も恐らくそうでしょう。
アメリカでは、オバマ大統領がこの状況を捉え、「今アメリカが経験している異常気象は、単なる偶然の重なりなのだろうか、それとも温暖化による被害がこういう具合になったのだろうか、どっちと思うか。それは当然後者である」と国民に呼びかけたのですよ。

大塚― CPO21への全員参加について、もう少しお話しください。

末吉さん― 大きかったのは中国とアメリカというCO2の2大排出国が、前向きな姿勢を打ち出したことです。「温暖化の状況をここまで悪くしたのは先進国だから、先進国だけが対策すべき」という主張では、自分たちも結局苦しむことになるという意識が途上国に生まれているわけですよ。とくに中国が、単位あたりの排出量の削減から排出する絶対量の削減へ方針転換したことが大きかったと思います。COP20の直前の11月に北京で開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力)会議期間になされた米国と中国との歴史的合意で、米国は温室効果ガスの排出量を2025年までに2005年比で26〜28%削減し、中国は二酸化炭素の排出量を2030年ころはピークアウトさせる(減少に転じさせる)ことになったのです。

大塚― 実際に中国では変化が起きるのでしょうね。

末吉さん― そうしなければ中国はもうやっていけなくなるのだと思います。私が仄聞しているところ、中国では来年から第13次5カ年計画が始まりますが、その中で大幅なエネルギー政策の見直しがあるようです。これで、日本が取り残される可能性も十分にあります。


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