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環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

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環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
全国小中学校環境教育研究会では、2000年を過ぎた頃からESDの勉強に本格的に取組み始めた
環境教育という枠の中だけで環境問題の解決を目指すのは得策でない
能力・態度を育て問題解決能力をつけることと、学校全体として継続的に取組むホールスクールアプローチ
【1】ベオグラード憲章
 ユネスコ(UNESCO:国連教育科学文化機関)が、1975年に世界の環境教育の専門家を招き、ベオグラード(旧ユーゴスラビア、現セルビア共和国の首都)で開催した国際ワークショップで作成された憲章。「環境の状況」「環境の目標」「環境教育の目標」「環境教育の目的」「対象者」「環境教育プログラムの指導原理」からなる。
【2】ESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)
 現代社会が抱える環境、貧困、人権、平和、開発などの課題を自らの問題として捉え、身近なところから取組むことにより解決につなげる価値観や行動を生み出すこと、それによって持続可能な社会を創造することを目指す学習や活動。
【3】『持続可能な社会づくりと環境教育』(全国小中学校環境教育研究会)
 全国小中学校環境教育研究会HP参照: http://kankyokyoiku.jp

No.033

Issued: 2015.04.20

第40回 全国小中学校環境教育研究会会長の棚橋 乾さんに聞く、ESDの要素を入れた環境教育のめざすところと取組みの現状[1]

実施日時:平成27年3月12日(金)10:30〜
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

全国小中学校環境教育研究会では、2000年を過ぎた頃からESDの勉強に本格的に取組み始めた

棚橋 乾(たなはし かん)さん
棚橋 乾(たなはし かん)さん
 昭和54年 東京都内区立中学校着任、理科教諭。
 以後、サンパウロ日本人学校、都内中学校3校で教諭、多摩市内中学校2校で教頭、多摩市内2校で小学校長、現在は多摩第一小学校校長。
 全国小中学校環境教育研究会会長のほか、環境省 ESDの10年後の環境教育推進方策検討委員、環境教育研修会講師等。
 中学校教諭時代から環境教育を実践し、自然、生き物、エネルギー等を理科の授業や総合的な学習の時間で指導した。その後、持続可能な社会づくりのために環境教育・ESDをいかに推進するかについて研究を続けている。
 ESDの視点を活かした環境教育によって、問題解決能力と環境保全意欲を高めることが持続可能な社会づくりのために必要であると考える。

大塚理事長(以下、大塚)― 本日は、EICネットのエコチャレンジャーにお出ましいただきありがとうございます。棚橋さんは、中学校の理科の教諭や小学校の校長として長年にわたり環境教育に携わり、平成24年からは全国小中学校環境教育研究会の会長をお務めです。昨年11月には「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」が日本で開催されるなど、環境教育への関心は国内外で高まっています。本日は、日本および世界の環境教育の現状や展望についてお伺いしたいと思います。どうぞ、宜しくお願いいたします。
全国小中学校環境教育研究会(以下、「研究会」)は、前身の公害教育研究会を含めると大変長い歴史をおもちです。その紹介からお願いいたします。

棚橋さん― 「研究会」は、公害教育研究会の時代を入れると47年目を迎えました。最初は東京に公害教育研究会が創られ、その後、少しずつ全国に広がり、熱心な先生方が集まり活動されていました。1975年に、ユネスコのベオグラード憲章【1】が出され、環境教育の目的や目標が明確になった頃から活動が活発化し、名称も現在の環境教育研究会に変わったのです。

大塚― 活動内容の面ではいかがでしょう。

棚橋さん― 当初の公害問題だけでなく、生き物や資源などのテーマもだんだん扱うようになってきました。大きく変化したのは、1990年代に「持続可能な開発」という考え方が出されてからです。「研究会」も、2000年を過ぎた頃からESD【2】の勉強に本格的に取組みました。何と言っても、ESDがそれまでの環境教育に取って代わろうとする状況でしたので、どこがどう違うのかを含め時間をかけて議論しました。
現在では、「研究会」はESDの要素を取り入れた環境教育という表現を使っています。環境教育という言葉は長く使われてきましたし、一般の方にも分かりやすいからです。ただし、ESDはその中心に環境教育を据えながらも広い内容をもっており、「研究会」が目指す目標も、「豊かな人間性を育む環境教育」から「ESDで育む学力と環境保全意欲」に変え、内容を深める努力をつづけています。

環境教育という枠の中だけで環境問題の解決を目指すのは得策でない

児童と多摩川に行ったときに捕まえたカメ
児童と多摩川に行ったときに捕まえたカメ

大塚― 環境教育とESDの関係について、具体例を含めてご紹介いただけますか。

棚橋さん― グローバル化が進み、情報が高度化している現在、環境教育という枠の中だけで環境問題の解決を目指すのは得策でない、と言えると思います。
小学校の例をあげさせていただくと、本校(多摩市立多摩第一小学校)は多摩川の中流に位置し、4年生になると、上流および下流の学校の生徒とiPadを使うテレビ会議システムで交流します。そうすると、下流の学校からは「ウナギがとれた」、上流の学校からは「ヤマメが見えた」、中流にある本校からは「コイが見えた」という情報が交換され、居ながらにして上流から下流までの生き物の勉強ができるのですよ。テレビ会議システムだけに着目すれば、情報教育といえるかもしれません。しかし大事なことは、環境教育を進めるツールとして情報を使っているのです。結果として、ESDの目的に沿う内容になっているのです。

大塚― 子どもたちの能力を引き出すのが素晴らしいと感じます。

棚橋さん― 子どもの学びに、環境教育という枠をはめないことですね。もう1つ大事なことは、環境教育では子どもたちに経験・体験させることや感性を育むことが大変重要視されてきましたが、子どもたちの能力あるいは態度を育てることもそれ以上に重要なのです。さまざまな能力を含む「学力」を、ESDを進める中でどのようにつけるかをきちんと示したいと考えています。


能力・態度を育て問題解決能力をつけることと、学校全体として継続的に取組むホールスクールアプローチ

『持続可能な社会づくりと環境教育』(全国小中学校環境教育研究会)
『持続可能な社会づくりと環境教育』(全国小中学校環境教育研究会)

大塚― 「研究会」の活動について、もう少しご紹介いただけますか。

棚橋さん― 「研究会」の個々の活動は、全国組織としてではなく都道府県ごとになされており、私は東京都の研究会で活動しています。
「研究会」として、生徒たちの能力・態度を育て問題解決能力をつけることをテーマに、本を編集し出版しました。昨年11月に開かれた「ESDに関するユネスコ世界会議」を目指してまとめたもので、書名は『持続可能な社会づくりと環境教育―ESDにもとづく環境教育の理論と実践事例』です。前半が理論編で、小学校では課題を「つかむ」「調べる」「まとめる」「行動する」の4段階に分けて指導することを提案しています。後半が、小学校10校と中学校6校のヘビーな事例の紹介です。「ヘビー」というのは、総合学習の時間の大半にあたる40〜60時間を環境学習にあてた学校の事例だからです。
「研究会」が重視していることをもう1つあげると、ホールスクールアプローチという考え方です。ホールスクールアプローチは、ESDにしろ環境教育にしろ、関心をもつ教師が自分のクラスだけで行うのではなく、学校全体として継続的に取組むことを指しています。ここで取り上げた16校の事例は、このアプローチに沿ったものばかりです【3】

大塚― 非常に濃い中身なのですね。

棚橋さん― 文部科学省や環境省が作った優良事例集に収録された事例は、実は私自身もかかわったのですが、実際の教育に10時間くらいしか使われていないものばかりで、いわば基礎編ともいえる内容になっています。文部科学省の国立教育政策研究所が、平成26年に刊行した『環境教育に関する指導資料』もそうです。「ヘビー」な実践をしている私たちには、何十年も環境教育に取組んできたのだから、いつまでも基礎のレベルに留まるのではなく、もっと上を目指したいという思いが強くありました。このことが、『持続可能な社会づくりと環境教育』を刊行した意図でもあったのです。

環境省の環境教育研修会にて
環境省の環境教育研修会にて


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