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環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

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環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
パリ会議で新しい枠組み、できれば新しい法的な文書を策定したいという強い意向で固まってきている
COPの決定プロセスで大事なことは、すべての文言が合意されないとすべてが決まったことにならないという原則
2020年以降に想定される緩和策の基本は、「自主的な差異化」
【1】第一約束期間
  京都議定書で定められた第一段階の目標期間で2008年から2012年までを指す。
【2】議定書(protocol)
 国家間で結ばれる国際法上の成文法(広義の条約)の1つ。議定書は既存の条約を補完する性格をもつことが多く、気候変動に関する場合は気候変動枠組条約に対応している。
【3】約束草案
 「各国が自主的に決定する約束草案」などと訳されるINDC(Intended Nationally Determined Contributions)のことで、2015年のCOP21の合意に先立ち、各国が政策プロセスを経て決定する気候変動対策の目標。基本的に温室効果ガスの排出削減の目標値を指す。
【4】PDS(Plan-Do-See)サイクル
 目標の実行性を高めることを目的とする、Plan(計画)→Do(実行)→See(統制)のサイクルを指す。PDCAサイクルに近似する。
【5】ゼロエミッション(zero emission)
 1994年に国連大学が提唱した考え方で、廃棄物を原材料として有効活用することなどにより、廃棄物を一切出さない資源循環型の社会システム。
【6】2℃目標
 2010年にメキシコ・カンクンで開かれたCOP16におけるカンクン合意の中核になるもので、温室効果ガスの排出削減により長期的な気温上昇を産業革命前に比べ2℃未満に抑えること。

No.045

Issued: 2015.09.18

第45回 名古屋大学大学院環境学研究科の高村ゆかり教授に聞く、新たな枠組の策定が期待されるCOP21に向けた国際交渉への展望[1]

実施日時:平成27年8月24日(火)14:00〜
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

パリ会議で新しい枠組み、できれば新しい法的な文書を策定したいという強い意向で固まってきている

石坂典子(いしざか・のりこ)さん
高村 ゆかり(たかむら ゆかり)さん
名古屋大学大学院環境学研究科教授(国際法)。
島根県出身、島根県立松江北高等学校卒。京都大学法学部卒、一橋大学大学院法学研究科修士課程修了、一橋大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。
静岡大学助教授、龍谷大学教授などを経て現職。

大塚理事長(以下、大塚)― 本日は、エコチャレンジャーにお出ましいただきありがとうございます。
高村さんは国際法学がご専門で、とりわけ地球温暖化対策の国際交渉に精通しておられます。本年末にパリで開催されるCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)は、今後の地球温暖化対策にとって非常に大きな意味をもっています。この機会に、高村さんからCOP21に向けた世界の動向、日本の新たな目標、さらには今後の望ましい温暖化対策などについてお話を伺いたいと思います。
地球温暖化対策に関する国際交渉は、京都議定書の第一約束期間【1】が終わった2012年ころから新たな局面に入ったように感じます。本年末にパリで開かれるCOP21は今後の行方を大きく左右すると思いますが、高村さんは現状をどのように捉えておられますか。

高村さん― 現在は、COP21に向け最終的な交渉の局面にはいっているといえます。パリ会議まで残すところ約100日(2015年8月24日時点)、非公式会合などを別にすれば、あと10日しかありません。
各国の雰囲気は、パリ会議で新しい枠組み、できれば新しい法的な文書を策定したいという強い意向で固まってきていると思います。問題は、各国が盛り込みたい内容が異なっていますので、これらをどう合意できるレベルにまとめていくかです。そのための期間があと10日、パリでの会議を入れても20日ほどなのです。

大塚― 「あと10日」とは、どういうことでしょうか。

高村さん― パリ会議が始まる11月30日まで、ADP(「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会」)と呼ばれる「作業部会」が事前交渉をするのですが、この作業部会の会議の日数のことです。作業部会が開かれるのはあと2回、ちょうど来週から始まる5日間と、10月下旬のパリ会議の1か月ほど前の5日間だけなのです。

大塚― 今後のスケジュールをご紹介いただきましたが、交渉の進め方、あるいは交渉の山場などについてもご紹介ください。

高村さん― 現在、作業部会が「交渉テキスト」(「交渉文書」)と呼ばれるCOPで合意するための文書案の策定に向け交渉を詰めているところです。とはいえ、10日しかありませんから10月までに全部は決め切れないでしょう。とくに政治的に重要な案件はパリ会議に持ち越され、おそらく大臣レベルの交渉に委ねられると思います。言い換えると、そのくらい大きな合意が目指されているのです。

COPの決定プロセスで大事なことは、すべての文言が合意されないとすべてが決まったことにならないという原則

大塚― 新聞報道などによれば、交渉テキストに基づく議論が少しずつ進んでいるようですが、高村さんもそう感じておられますか。

高村さん― そう思います。振り返りますと、2009年にコペンハーゲンで開かれたCOP15では、2020年までの枠組みつくりに合意できなかったわけで、各国ともコペンハーゲン会議の二の舞にならないよう慎重に交渉を進めています。
今年2月の作業部会で、交渉テキストが一応まとまりました。これは、各国の意見を集めて並べたようなものですが、パリ会議で議定書【2】をつくる手続きの第一歩をクリアしたのは確かです。そして6月の作業部会で、まだ多くの必要な作業を残してはいるものの、交渉テキストが90ページから85ページほどに整理されたのです。さらに、作業部会の議長から7月24日に、8月の作業部会の交渉用に整理された非公式文書が出されました。この文書は、争点ごとに各国の意見を整理するとともに、法律面からの検討やCOPでの決定プロセスの検討も試みており、おそらく今後の交渉の軸になっていくと思います。

大塚― 作業部会で、残されている議論がつづくということですね。

高村さん― COPの決定プロセスで大事なことは、すべての文言が合意されないとすべてが決まったことにならないという原則です。とはいえ、合意文書に入る項目はだいぶ見えてきたように思えます。
注目点の1つは、温室効果ガスの削減目標の達成度の報告です。各国が5年ごとあるいは10年ごとに出す約束草案【3】で目標を明らかにし、それらを集めてレビューし、各国の目標に対する進捗度を報告する、という一種のPDS(Plan-Do-See)サイクル【4】を動かそうという提案ですが、細部は別として何らかの合意が得られる可能性が出てきています。
また、京都議定書では温暖化の緩和策(回避・低減などによる温暖化の緩和)が中心でしたが、途上国から適応策(影響の低減をとおした温暖化への適応)をもっと重視することや、資金・技術などの支援策を位置づけることへの要望が強く、こうした点も合意されると思います。

【表1】COP21関連の2015年における主な動き
2月スイス・ジュネーブで作業部会。交渉テキストが合意される。
6月ドイツ・ボンで作業部会。共同議長が交渉テキストの整理と内容の統合を行うことが合意される。
7月共同議長が論点を整理し、3つのパートに分類した文書案を提示。
8〜9月ボンで作業部会。共同議長の文書案の受け入れが議論の焦点。
10月各国の自主削減目標の締切。
最後の作業部会がボンで開催。
11月各国の削減目標を統合した報告書の公表。削減量の積み上げが焦点。
11〜12月パリでCOP21が開催。新たな枠組みで合意を目指す。

2020年以降に想定される緩和策の基本は、「自主的な差異化」

大塚― 適応策の重視は、異常気候が増していることからも当然なのでしょうね。

高村さん― そうですね。気候変動に起因すると思われる自然災害が頻発していますので、合意文書にどの程度書き込むかは国により意見に違いがあるものの、適応策の必要性には異論が出ないでしょう。

大塚― 今の話とも関連しますが、昨年リマで開かれたCOP20以来、「差異ある責任」という言葉が頻繁に使われるようになったと感じます。高村さんは、途上国と先進国との関係をどうみておられますか。

高村さん― 現在も今後も大きな課題だと思います。ご存じのとおり、京都議定書のころは先進国の温室効果ガスの排出量がはるかに多く、先進国と途上国とを分け、差を設ける考え方に大きな異論はありませんでした。しかし、2000年代に入ると中国・インドをはじめとする新興国で排出量が増え、「ゼロエミッション」【5】あるいは「2℃目標」【6】といった目標を達成する上で、途上国も相応の対策をとる必要が出てきたのです。
現在、交渉の焦点になっていることの1つは、各国が出す約束草案の扱いです。今までは各国の温室効果ガスの排出量について事前の調整はしていなかったのですが、これからは各国の経済力・技術力などの国力に応じた目標を出すよう促すことが考えられています。「自主的な差異化」ともいえる発想で、2020年以降の緩和策の基本になると思います。

大塚― この点についても、各国がおおむね合意しているのでしょうか。

高村さん― 私の言葉が足りなかったかもしれません。今申し上げた方向性そのものは、先進国と大半の途上国が賛成していると思います。しかし、温室効果ガスの排出量が急増している中国やインドをはじめとする国々は難しい状況におかれていますし、途上国の中には、先進国の過去の排出の責任を厳しく問い、先進国と途上国で差を設ける従来の立場を維持している国もあります。この問題は、パリ会議で「差異ある責任」を具体化する際に大きな争点になりそうです。

大塚― 国により状況が違う中で合意を目指すので大変ですね。

高村さん― 大変ではありますが、途上国と先進国を分けるという議論の様相が変わってきたと感じています。温暖化の影響で海面上昇に直面している島嶼国などだけでなく、いくつかのラテンアメリカ諸国やアフリカ諸国から、途上国も応分の排出削減をすべきとする意見がでてきています。


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