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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
生活の質を高め、新しい成長につながる環境行政へ
脱炭素社会に向け、前向きなルールづくりを
復興から創生へ、人々の営みをつなげていく
海外貢献、環境ビジネスの育成を視野に入れた循環型社会づくり
【1】カーボンプライシング(Carbon Pricing)
二酸化炭素(CO2)に価格を付け、企業や家庭が排出量に応じて負担することで、CO2の排出削減を促す施策の総称。
【2】再生可能エネルギーの導入ポテンシャル
エネルギーの採取・利用に関する種々の制約要因による設置の可否を考慮したエネルギー資源量。
【3】ダンピング(dumping)
ごみなどの投げ捨て。
【4】フィージビリティスタディ(feasibility study)
「実行可能性調査」「企業化調査」「投資調査」「採算性調査」とも呼ばれ、プロジェクトの実現可能性を事前に調査・検討すること。
【5】日ASEAN環境協力イニシアティブ
2017年11月の日本、中国、韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN)による首脳会議において、日本はASEAN地域での持続可能な開発目標(SDGs)達成に向け、これまでの協力を抜本的に強化推進し、質の高い環境インフラ の普及と様々な分野(生物多様性、海洋汚染など)での環境協力プロジェクトを包括的かつ重層的 に促進する提案した。このイニシアティブは、日ASEAN 統合基金(JAIF)に加え、東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)と連携して実施される。

No.073

Issued: 2018.01.22

第73回 環境省事務次官・森本英香さんに聞く、2018年の環境行政の展望[1]

実施日時:平成30年1月10日(水)
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

生活の質を高め、新しい成長につながる環境行政へ

森本英香(もりもとひでか)さん
森本英香(もりもとひでか)さん
大阪府出身。東京大学法学部私法学科、政治学科卒業。
昭和56年環境庁入庁。大臣官房廃棄物・リサイクル対策部企画課長、総合環境政策局環境保健部企画課長、大臣官房総務課長、大臣官房秘書課長、国際連合大学(日本国)、大臣官房審議官、内閣官房内閣審議官・原子力安全規制組織等改革準備室長、原子力規制庁次長、大臣官房長等を経て、平成29年7月より現職。

大塚理事長(以下、大塚)― あけましておめでとうございます。年頭にあたり、環境行政の責任者である森本英香環境事務次官からお話を伺うことになりました。大変お忙しいなか、エコチャレンジャーにお出ましいただきありがとうございます。個々の課題について伺う前に、環境省として、本年の環境行政の重要項目や基本方針についてお話しいただけますか。

森本さん― 環境行政も激甚な産業公害対策、国立公園管理からスタートして、長い間にどんどん変化し、今現在は「地球環境問題」、「循環型社会づくり」、「自然との共生」この3つが大きな課題になっています。 また、「福島の復興」については昨年新しいフェーズに入ったと考えています。
これらの環境問題に正面から取り組むことで、さまざまな社会課題、例えば過疎化の問題や少子化の問題、あるいは経済成長の問題、生活の豊かさの問題等を同時に解決することにチャレンジします。環境行政の根幹「環境リスクの低減」は変わりませんが、そのことを通じて、生活の質を高め新しい成長につながる取り組みを進めたいと考えています。

脱炭素社会に向け、前向きなルールづくりを

大塚― 今のお話から、成長の中にあっても「環境」が前に出ていくという方針が伝わりました。まず、地球温暖化すなわち気候変動のことから詳しくお伺いします。国内はもちろん国際的にも気候変動の問題はますます大きくなってきて、昨年11月にボンで開かれたCOP23で、パリ協定の実施指針の策定に向け、一定の進捗があったと理解しております。今年はポーランドでCOP24が行われますが、日本はその実施指針、ルールブック作りにどのように関わっていこうとされているか、基本的な方針をお聞かせいただければと思います。

森本さん― 昨年のCOP23に参加された中川環境大臣は、世界が「脱炭素」に向かって大きく動き出しているのに対し日本の動きがまだ鈍いのではないかと、非常に危機感を持って帰ってこられました。石炭火力輸出推進をめぐって、国際社会から批判されたことについても同様です。国際社会の新しいルールづくりを日本はリードする力があると思うのですが、必ずしもリーディングカントリーになっていない。こうした危機感をベースに、COP24のルール作りに前向きに取り組んでいきます。日本としては、温室効果ガスの26%削減という2030年目標に加えて、2050年80%削減という長期戦略策定が大きな課題になっています。その作業を加速し、COP24に向かいたいと思っています。

大塚― お話にあった2050年の80%削減は、まさに国際的スタンダードだと思うのですが、身の周りを見ても達成は大変だなという感じが拭えません。構想の概略だけでもお話いただければと思います。

森本さん― 現状では、長期戦略の具体的なフレームワークの議論がまだ進んでいません。環境省としてカーボンプライシング【1】を含め検討段階です。今後、経済産業省含め関係省庁と連携して長期戦略をしっかり作っていきたいと考えています。具体的には、再エネのポテンシャル【2】を顕在化させることがひとつの鍵だろうと思います。

COP23での大臣ステートメント
COP23での大臣ステートメント


復興から創生へ、人々の営みをつなげていく

大塚― 次にお伺いしたいのは、7年目になる東日本大震災についてです。面的な除染はほぼ完了に近いと聞いておりますが、中間貯蔵施設の整備についても目処はつきつつあるのでしょうか。

森本さん― 中間貯蔵施設については、現在、地元の方々のご理解を得て、土地の確保、施設整備が順調に進んでいます。施設も昨年一部稼働いたしましたし、今後は約1600万〜2200万m3の除去土壌等を、事故のないように円滑に中間貯蔵施設に運び込むというフェーズに入っていきます。

大塚― これからまさに、復興から創生のフェーズに入っていくのですね。

森本さん― はい。内堀福島県知事からも、復興から創生段階に入っていると言われています。今後は福島の帰還困難区域の復興拠点も含めて、帰還できるような環境を整備していきます。環境省関連で言いますとリサイクルや再生エネルギーの営みを進められるよう取り組んでいきたいと思います。

大塚― 復興と創生は幅広い環境行政が目指す好例だと思います。最後におっしゃられたように、新たな営みが始まり、新たな段階に入っていくのですね。

森本さん― そうですね。現地でリサイクルビジネスを始めたいという企業もありますので、是非立地を促進していきたいと思っています。

大塚― もうひとつ、放射線被爆の問題は、福島の方々は気にされていると思うのですが、環境省としてどのように認識されているのでしょうか。

森本さん― 福島の放射線濃度は大きく低下しています。食品の安全性は徹底的にモニターされています。一方で、科学的根拠のない風評被害が相変わらず残っているのが現状です。福島の方、あるいは福島県以外の方々が漠然とした不安を持たれないよう、リスクコミュニケーションが重要だと思っています。

大塚― どのようなことをお考えなのでしょうか。

森本さん― 特に福島県外の方々に対するリスクコミュニケーションに力を入れたいと考えています。例えば昨年11月に新宿御苑で、福島の産品の紹介と、福島の現在の状況をアピールするイベントを開催したところ、非常にたくさんの人々が来てくれました。さまざまな場所や場面を活用して、復興庁等とも協力してそういった具体的な取り組みを粘り強く進めていきたいと思っています。

新宿御苑イベントで、楢葉米のPR
新宿御苑イベントで、楢葉米のPR


海外貢献、環境ビジネスの育成を視野に入れた循環型社会づくり

大塚― 話を変え、冒頭で挙げていただいた循環型社会についてお聞かせください。昨年はバーゼル法(特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律)の改正などがあり、国際的な動きがさらに進んでいくような気がいたします。

森本さん― 昨年、バーゼル法と廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)の改正をいたしました。改正の主旨は、国際的な循環の中で都市鉱山をしっかりと活かしていくという観点です。有用な資源である電子部品が雑品スクラップという形で海外に流れ出し、不適正処理されてきたため、それを止める必要があり改正しました。

大塚― バーゼル条約を国内で適用すると同時に、適正な取引を通じてリサイクル資源の価値を担保されたのですね。

森本さん― 循環ビジネスの育成、海外展開を支援したいとも考えています。東南アジアでは廃棄物をダンピング【3】しています。都市を清潔にするという観点から、廃棄物の焼却を推進していこうという動きがあり、日本が持つ優れた廃棄物発電の技術へのニーズが高まっています。これまで、ミャンマー・ベトナム・インドネシア・フィリピンなどで、廃棄物発電のフィージビリティスタディ【4】をしてきて、昨年はミャンマーで実機の運用がスタートしました。フィリピンのダバオでも、具体的な事業が動き出しています。このほか、省エネ施設やソフト、浄化槽などの環境インフラの輸出を、どんどん進めていきたいと考えています。

大塚― 日本の強みを活かした国際環境貢献にもなりますね。

森本さん― 昨年、フィリピンで行われた日本、中国、韓国とASEAN(東南アジア諸国連合)の会議で、総理から「日ASEAN環境協力イニシアティブ」【5】を打ち出していただきました。これから海外インフラ輸出の大きな柱になっていくと思います。

廃棄物発電焼却施設竣工式(ミャンマー)
廃棄物発電焼却施設竣工式(ミャンマー)


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