EICネット
前のページへ戻る

エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

トップページへ

グローバルメニュー
  • 国内ニュース
  • 海外ニュース
  • イベント情報
  • 環境Q&A
  • 機関情報
  • 環境リンク集
  • 環境用語集
  • ライブラリ
  • 森づくり

エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
省エネと創エネでエネルギー消費を自然エネルギー100%に
公開講座や大学全体のプロジェクトを通して理解をすすめる
商科大学ならではの商いの力でエネルギー会社を設立
【1】FIT(Feed-in Tariff:再生可能エネルギーの固定価格買取制度)
 再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で買い取ることを国が約束する制度。日本では2012年7月に全量買取がスタート。「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」の5つのいずれかを使い、国が定める要件を満たす設備を設置して、新たに発電を始める個人、事業者が対象。
【2】CUC公開講座
 CUCは千葉商科大学(Chiba University of Commerce)の略称。千葉商科大学の社会貢献活動の一環として、一般財団法人統計研究会と共催で開講。
【3】鮎川ゆりか
 千葉商科大学政策情報学部教授。1997年1月より2008年まで WWF(世界自然保護基金)にて 気候変動プログラムを担当し、気候変動グループ長を経て、気候変動特別顧問。CO2の排出削減を進めるための政策提言、国内排出量取引制度の提案、産業界と共に削減を目指すクライメート・セイバーズ、自然エネルギーの普及促進などに従事。

No.076

Issued: 2018.04.20

第76回 千葉商科大学学長の原科幸彦さんに、日本初の「自然エネルギー100%大学」実現に向けた取り組みを聞く[1]

実施日時:平成30年3月28日(水)
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

省エネと創エネでエネルギー消費を自然エネルギー100%に

原科幸彦(はらしな さちひこ)さん
原科幸彦(はらしな さちひこ)さん
千葉商科大学学長
東京工業大学名誉教授。国際影響評価学会(IAIA)会長、日本計画行政学会会長などを歴任し、独立行政法人国際協力機構(JICA)の環境社会配慮ガイドラインの改善など、国際協力分野でのプロジェクト融資の健全化にも大きく貢献。専門は社会工学で、参加と合意形成研究、環境アセスメント研究の第一人者。

大塚理事長(以下、大塚)― 本日は千葉商科大学学長の原科幸彦さんにお出ましいただきました。原科さんは長年にわたり東京工業大学(以下、東京工大)・同大学大学院教授として、社会工学、環境計画、環境アセスメントの教育研究に従事されました。2012年に千葉商科大学(以下、千葉商大)に移られ昨年2017年3月から学長を努めておられます。また、国際影響評価学会(IAIA)会長(2008-2009)や日本計画行政学会会長(2008〜2011)などを歴任されるとともに、環境省の環境影響評価制度総合研究会委員などとしてもご活躍されています。
本日は、日本初の「自然エネルギー100%大学」を目指す千葉商大の取り組みを中心にお話を伺いたいと思います。この取り組みは昨年度、環境省のCOOL CHOICE LEADERS AWARDのアクション部門優秀賞を受賞されました。まず、取り組みの概要からお話いただけますでしょうか。

原科さん― 遡るのですが、私が東京工大に在職していた2011年に東日本大震災が起こりました。その時に計画停電対応をした際、理工系大学でエネルギーを節約することの難しさを実感しました。ところが千葉商大は商科系、社会科学系の大学なので、エネルギー消費量が理工系ほど多くないのです。2013年に本学はFIT【1】でメガソーラーを導入することに決め、2014年から稼働いたしました。実績を調べると、2014年ですでに本学で使う電力の77%に相当する発電をしていました。そこで、頑張れば100%までいくのではないかと思い、2018年度までに省エネと創エネで電力消費の100%をまかなうという目標を作りました。2020年度までには消費エネルギーの100%を自然エネルギーにする目標を立てています。

大塚― 77%でもじゅうぶん、それまでのご努力が推察されますが、100%というのは高い目標ですね。

原科さん― 稼働開始の翌年は、77%から70%ぐらいに落ちました。これは厳しいなと思ったのですが、最低限の70%はいけると思ったので残り3割分を増やすにはどうしたらいいかを考え、省エネと創エネを組み合わせました。省エネは全学の電灯のLED切り替えです。創エネでは太陽光パネルを1610枚増設しました。

環境目標達成へのイメージ図
環境目標達成へのイメージ図


公開講座や大学全体のプロジェクトを通して理解をすすめる

大塚― お話いただいている省エネ、創エネの拡充を始められたのは何年頃ですか。

原科さん― 昨年2017年に学長に就任後すぐに決定して、一気にこの1年でやりました。もちろん、1年ですべてが動いたわけではなく、それまで地道に合意形成を積み重ねてきたことがベースになっています。メガソーラーの導入を決めた2013年、まだ(自然エネルギー)100%とは考えていなかったのですが、商科大学の責任として再生可能エネルギーで社会を運営する未来を目指すことにしました。それで、丸の内にあるサテライトキャンパスで持続可能エネルギー政策について考えるため、CUC公開講座【2】を始めました。専門家にも参加してもらって学内と学外の世論を形成し、政策情報学部の学部長となった2014年からは、学部のプロジェクトとして進めてきたのです。公開講座は鮎川ゆりか【3】先生に大きな力になっていただきました。こうした意識形成を経て自然エネルギー100%を目標に決め、2015年に経済産業省の補助金で省エネ調査を行いました。鮎川研究室が中心となり、省エネ分野で実績のあるサステナジー株式会社の山口勝洋さんにも入っていただきました。

大塚― 大学全体の取り組みにするには、周りの理解も必要だったのではないかと思います。

原科さん― 省エネ調査の結果を受けて、2016年に当時の島田晴雄学長とよく相談して方針を理解していただきました。大学の執行部とも話し合いを続けて徐々にわかってもらい、私が学長になる前に共通意識が形成されていたので、合意がとりやすかったと思います。就任したときに提案した4つの学長プロジェクトの4つ目に、「環境・エネルギー」を掲げました。

大塚― 4つのプロジェクトとは、どのようなものですか。

原科さん― 商科大ですから、まず会計学の新展開が1つ目です。2つ目はCSR研究。本学は商業道徳の涵養が建学理念なので、ビジネス倫理や企業行動の倫理の研究と普及啓発を行います。3つ目は地域貢献を目標にした安全・安心な都市・地域づくりです。これらはすべて、エネルギー問題に関わってきます。会計学ではエネルギー会計などが、CSRでは企業行動、環境配慮、社会配慮などが特に深く関わります。それから安心・安全な地域づくりですと、防災の観点から自然エネルギーのような地域分散型エネルギーが重要になります。すべて、4つ目の「環境・エネルギー」につながってくるのです。

大塚― 原科さんご自身のお考えに、島田晴雄前学長のお考えやこれまでの大学での蓄積がうまく合致したのですね。

原科さん― そうですね。全体で理解していただかなければなりませんからね。


学生による温湿度・無駄調査の様子

学生による温湿度・無駄調査の様子


学生による温湿度・無駄調査の様子


商科大学ならではの商いの力でエネルギー会社を設立

大塚― そのなかでも、原科さんの発案に基づくユニークな点があれば教えていただけますか。

千葉商科大学 メガソーラー野田発電所(パネル増設前)
千葉商科大学 メガソーラー野田発電所(パネル増設前)

原科さん― 私がということではなく、みなさんのおかげです。ひとつ大きかったのは、東京工大から、千葉商大に来て「商いの力」に気づいたことです。東京工大はテクノロジーを非常にたくさん開発しています。自然エネルギーだけでなく、燃料電池や蓄電、燃料効率を上げるボイラーの研究、石炭火力の研究もやっています。それから、バイオマス、ソーラー、電力のスマートグリッドやマネジメントシステムなど、ありとあらゆるものです。それを社会に適用するために、今度は「商いの力」を活用しようと思い立ったのです。

大塚― まさに、ご専門の社会工学の発想ですね。

原科さん― 自然エネルギーの弱点は、供給が安定しないということです。天候やさまざまな自然要因で変動します。安定しないと電気は買ってもらえませんから、集めて売る商いをしようと考えたのです。商いは信用なので、まず本学が自然エネルギーでしっかりやっている大学だということを見せたのです。まず隗より始めようと、本学で使う分に相当する部分を発電し、それを基本に説得してまわりました。

大塚― 資金面でも商いの力が大きかったのではないでしょうか。

原科さん― そうですね。先ほどお話した省エネでは、LEDへの切り替えだけで4億円かかりました。創エネで発電設備を増やすのも加えると5億〜6億円です。大型の研究設備がある理工系に比べ、文科系は一度に大きな額を動かせないので、CUCエネルギーという会社を作りました。会社を作ってみて、千葉商大は信用が高いということがわかりました。特に地域の金融関連企業に卒業生が多く、千葉商大がつくった会社なら安心だと言ってくれました。学内に限らず、関わってくださっている皆さんに知恵を貸りてやっています。

千葉商科大学が取り組む地域分散型エネルギー社会の構想
千葉商科大学が取り組む地域分散型エネルギー社会の構想


ページトップ