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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

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エコチャレンジャー

環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

目次
東日本大震災がきっかけで独立し会社を設立
日本でも増えているフードバンク
食品ロスの基本も3R
水資源と食品ロスの関係
【1】セカンドハーベスト・ジャパン
 日本で初めてのフードバンク。食品製造メーカーや農家、個人などから、まだ充分食べられるにも関わらずさまざまな理由で廃棄される運命にある食品を引き取り、それらを児童擁護施設の子どもたちやDV被害者のためのシェルター、路上生活者などに届ける活動を行なっている。正式名称は、認定特定非営利活動法人セカンドハーベスト・ジャパン。http://2hj.org/
【2】善きサマリア人(びと)の法
 公共の場で緊急自体が発生した場合、窮地に陥った人を救うために無償で善意の行動をとった人は、過失責任を問われない、という趣旨の法である。アメリカのすべての州やカナダで法制化されている。災害に見舞われたり急病になったりした人などに対して行う行為を意図する場合が多いが、フードバンクなどの食料支援にも適用する。

No.078

Issued: 2018.06.19

第78回 食品ロス問題の専門家・井出留美さんに食品廃棄の課題と解決の糸口を聞く[1]

実施日時:平成30年6月1日(金)
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎

東日本大震災がきっかけで独立し会社を設立

井出 留美(いで るみ)さん
井出 留美(いで るみ)さん
食品ロス問題専門家、ジャーナリスト、博士(栄養学)
奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学)。修士(農学)。食品企業広報室長として東日本大震災食料支援に関わった後、退社して(株)office3.11を設立。日本初のフードバンク「セカンドハーベスト・ジャパン」の広報を委託され、PRアワードグランプリ ソーシャル・コミュニケーション部門最優秀賞などを団体として受賞。著書に『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書) 2018年など。第二回食生活ジャーナリスト大賞「食文化部門」を受賞。
・井出留美オフィシャルサイト: http://www.office311.jp

セカンドハーベスト・ジャパンの広報を担当していた時、福島県から避難していた方のところにも炊き出しに行った(井出留美提供)
セカンドハーベスト・ジャパンの広報を担当していた時、福島県から避難していた方のところにも炊き出しに行った(井出留美提供)

大塚理事長(以下、大塚)― 食品ロスは、私たちにとって身近な問題であると同時に、国連のSDGs(持続可能な開発目標)でも取り上げられているように、国際的にも大きな問題になっています。今回は食品ロスの削減に取り組んでおられる井出留美さんにお出ましいただきました。井出さんは、2017年度第2回「食生活ジャーナリスト大賞(食文化部門)」を受賞されるなど、この分野の一線で活躍されておられます。本日は、私たちが食品ロスの問題をどのように認識し、どのように振る舞うべきかに焦点をあてながら、お話を伺います。
はじめに、井出さんが食品ロスの削減に取り組むことになったきっかけを教えていただけますでしょうか。

井出さん― 最初に食品ロスに関わったのは、アメリカに本社があるグローバルの食品企業に勤めていた2008年です。アメリカではまだ食べられるけれども商品としては流通できないもの、例えば凹んだ缶詰やパッケージが破れた商品をフードバンクというところに寄付をする社会貢献の仕組みがあります。それを日本でも始めたらどうか、とアメリカの本社から話がきたのです。私は広報担当だったので、日本初のフードバンクであるセカンドハーベスト・ジャパン【1】へ、流通に乗らない自社製品の寄付を始めました。

大塚― 廃棄コスト削減にもなる食品寄付の取り組みについて、アメリカにはどのようなノウハウがあるのでしょうか。日本と違うのはどんな点でしょうか。

井出さん― アメリカでは食品を寄付することで税の優遇を受けられます。また、日本では寄付した品に不備があった場合、製造者の責任になるのですが、アメリカでは善意の寄付の場合、意図せざる事故であれば責任を問わない、善きサマリア人(びと)の法【2】という免責の法律があります。食品の製造業にとって寄付をしやすい2つのインセンティブです。ひるがえって日本を考えると、法制度が整っていないため食品メーカーの多くはまだ第三者に託すということがしづらい状況です。私が勤めていたのはグローバル企業で、本社からの提案という事もあって、日本でもすんなり取り組みが始まりました。

大塚― 2008年から企業の広報として食品ロス削減に関わられて、そこから現在にいたるまでにはどんなことがあったのでしょうか。

井出さん― 2011年3月11日の東日本大震災が大きな契機でした。震災後、自社の商品を支援物資として被災地に届けるために活動する中で、理不尽な無駄をたくさん見ました。例えばこちらから仮に490個の支援物資を持って行ったとしても、避難所に500人いると足りないので配りません。また、配布する食品の不均衡も目につきました。こちら側にはものすごい量があるのに必要としているところに配れないなど、なぜあのような未曾有の大震災の時に命をつなぐ食品を無駄にしてしまうのかということをたくさん経験しました。

大塚― 本当にたくさんの方が努力しているのに、なかなかうまく現地に届かないという話をよく聞きました。

井出さん― いろいろ考えたあげく、震災の年の秋に会社を退職しました。最終出社を終えてすぐに、企業時代に付き合いのあったセカンドハーベスト・ジャパンのトラックで石巻に行ったのですが、その帰り、団体の広報をやってくれないかと頼まれ、その後3年間携わることになりました。

大塚― ご自身の会社はどのような経緯からつくられたのですか。

井出さん― 当初はとにかく現地に行きたいという思いがあって、あまり先の事は考えていませんでした。会社を立ち上げることも考えていなかったのですが、セカンドハーベスト・ジャパンの広報の他にもいくつか仕事をいただいたので、良い機会だと思い株式会社office 3.11を立ち上げました。自分の誕生日でもあり転機でもある3月11日が会社名に入っています。


日本でも増えているフードバンク

東日本大震災後、商品棚が空っぽになった宮城県石巻市内のスーパー(井出留美提供)
東日本大震災後、商品棚が空っぽになった宮城県石巻市内のスーパー(井出留美提供)

大塚― 井出さんが食品ロスに関わる最初のきっかけともなったフードバンクの発想は、日本でも浸透してきているとお考えですか。

井出さん― 放物線を描くように浸透してきたなと思います。セカンドハーベスト・ジャパンができたのが2000年で、2番目は2003年、フードバンク関西という兵庫県の団体でした。その後2007年頃にテレビでフードバンクの特集が放送された時に、日本の大手冷凍食品メーカーのニチレイも寄付していることがわかって、寄付をする側の日本の企業のハードルもだいぶ下がり、沖縄県や山梨県、そして広島県にもひろがりました。次の転機は、やはり2011年かなと思います。

大塚― 工場が被災して、首都圏でも買い占めなどがあって棚から食べものが消えてしまい、いつもあるのが当たり前ではないのだということを多くの人が感じるきっかけとなりましたね。

井出さん― 食品製造業で需要と供給のバランスが崩れ、フードバンクへの問い合わせが増えたという事実もあります。例えば、福島県では放射性物質が拡散して、飲み水が大量に必要でした。それでどんどん生産したのですが、ダブついてしまうことがあり、今までは二の足を踏んでいた、石橋を叩いていたような大手の食品製造業からフードバンクに問い合わせが増えました。

大塚― 社会的に認知されだしたのもこの頃ですね。

井出さん― 2012年には農林水産省と流通経済研究所と製造業、卸売業、小売業で食品ロスを生み出す商慣習を検討するワーキングチームが立ち上がりました。2015年には生活困窮者自立支援法が制定され、そうした流れに付随してフードバンクも増えてきました。流通経済研究所の調べでは、現在、全国に77のフードバンクがあるといわれます。活動主体の多くはNPOですが、一部、例えば群馬県の太田市では市が、島根県安来市では社会福祉協議会がやっている例もあります。


食品ロスの基本も3R

すぐたべくん:「すぐに食べる」商品については、賞味期限や消費期限が近い商品から購入するよう呼びかけるキャラクター
すぐたべくん:「すぐに食べる」商品については、賞味期限や消費期限が近い商品から購入するよう呼びかけるキャラクター

大塚― 冒頭でSDGsにも関係するという話をさせていただきましたが、食品ロスに関して、この点だけは理解してほしいことをご紹介ください。

井出さん― 食品も環境のキーワードである3R(スリーアール)が重要です。そして、第1にリデュース、第2にリユース、第3にリサイクルという優先順位をぜひ意識してください。3Rが横並びで理解されているようなので、気になります。

大塚― リサイクルという言葉に比べて、リユースとリデュースはなじみが薄いのかもしれません。

井出さん― メディアの取材を受ける時に、必ず「リデュースが一番です」と口酸っぱく言うのですが、やはり、大量のお弁当やパンがリサイクルされる映像などは衝撃的なのでメディアに好まれるのですよね。

大塚― フードバンクはリユースですね。

井出さん― フードバンクの広報をしているときは「リユースをすることによって結果的にはリデュースになります」と言っていましたが、テレビは「困った人が助かります」という、人の善意に訴えるわかりやすい説明をします。それ自体、悪い訳ではないのですが、まず最初に優先順位をきちんと理解して欲しいなと思います。
農水省の最新の値で、食品ロスは年間646万トンです。東京都環境局では、都民が一年間に食べる量と同じくらいだと例えています。私も講演では、「魚介類の年間消費量とほぼ同じくらいです」とか、「世界の食糧援助量320万トンの約2倍です」と言い換えて伝えています。

大塚― 世界で起こっていることと比較するなど、それぞれ伝え方も工夫をされているのですね。
身近な生活で、買い過ぎや食べずにそのまま捨ててしまうことなど、どうやったら減らせるでしょうか。

井出さん― 冷蔵庫がキーポイントだと思います。仕事でも、インプットしたら、それをアウトプットしていくというのは大事ですが、冷蔵庫も循環を作ってみてはいかがでしょう。例えば、土日に買い出しをして、それを月・火・水・木・金でできるだけ使い切っていくと、使い切った時の清々しさを味わえます。ずっと入れっぱなしにしておくと味わえない、買い過ぎたら達成できないですよ(笑)。


水資源と食品ロスの関係

大塚― EICネットは環境問題を扱うことが多いのですが、食品ロスの問題を環境問題としてみた場合、大事なポイントは何でしょうか。

井出さん― 水資源という視点は、意外と見えていないように感じます。よく講演で、ハンバーガー1個を作るのに、どれぐらい水を使うと思いますかと聞いて、①30リットル、②300リットル、③3,000リットルの3者択一で手をあげてもらうのですが、当たる人が少ないです。(ちなみに答えは③3,000リットル)
環境省のバーチャルウォーターの考え方ですが、実は、海外から輸入をしている牛肉は大量の水資源を使っていますし、牛の飼料を作るにも水は使われます。SDGsでも6番目に「安全な水とトイレをみんなに」という目標があります。世界中で約8億4400万人がきれいな水に到達できていないのに対し、日本は蛇口をひねれば真水が出ますから、その感覚がわからないのかもしれません。

バーチャルウォーターの輸入量(環境省_平成25年度版 図で見る環境・循環社会・生物多様性白書より)
バーチャルウォーターの輸入量(環境省_平成25年度版 図で見る環境・循環社会・生物多様性白書より)


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