一般財団法人環境イノベーション情報機構
エコチャレンジャー 環境問題にチャレンジするトップリーダーの方々との、ホットな話題についてのインタビューコーナーです。

No.089

Issued: 2019.09.20

第89回 国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 大迫政浩センター長に聞く、高齢者のごみ出し支援の研究からみた循環型社会づくり

大迫政浩さん

実施日時:令和元年8月26日(木)16:00〜
聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎
ゲスト:国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター センター長 大迫政浩さん

  • 京都大学工学部卒業、同大学大学院工学研究科修了。工学博士。
  • 厚生省国立公衆衛生院を経て、現在は国立環境研究所資源循環・廃棄物研究センター/センター長。
  • 環境工学専攻。主な研究課題は、廃棄物の循環利用および有害物質制御に関する技術開発およびシステム設計に関する研究。東日本大震災以降は、放射能汚染廃棄物や災害廃棄物処理の研究に従事。
目次
循環型社会づくりは、脱炭素や自然共生の課題と同時に解決していかなくてはならない取り組みになった
若い研究者たちが、問題の発掘・抽出を机上からではなく、現場で聞き取りをする中で整理していった
時代のニーズに合った、ガイドブックという形で情報提供できたのは、研究所としては新しい試みだった
これからのごみ問題は、地域の協働によって解決し、循環型社会に向けてやっていかなくてはならない
これまで環境の分野では扱ってこなかったような問題と同時に解決していくようなアプローチが必要
科学的知見を生み出し、集積している研究所自身が、環境教育に対してどういう貢献ができるか

循環型社会づくりは、脱炭素や自然共生の課題と同時に解決していかなくてはならない取り組みになった

大塚理事長(以下、大塚)― 今回のエコチャレンジャーには、国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センターのセンター長をお務めの大迫政浩さんにお出ましいただきました。
大迫さんは、大学の学部・大学院で衛生工学・環境工学を専攻され、現在は国立環境研究所で資源循環研究と廃棄物研究という大変幅広い研究領域の領域長を務めておられます。特に、東日本大震災後には、災害がれきと放射性物質汚染廃棄物の処理という非常に重大な問題に取り組んでおられます。
資源循環・廃棄物研究は非常に幅広い分野をカバーしていますが、本日は、その中でも社会的な関心が高まっている「高齢者のごみ出し支援」という身近なテーマを取り上げ、その中から、私たちが目指すべき循環型社会のあり方や実現の仕方などについてお考えを伺いたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
さっそくですが、大迫さんは、大学院生時代を含めると30年余にわたって廃棄物研究・資源循環研究に携わってこられたと思うのですが、この間、私たちから見ても、日本社会における廃棄物(ごみ)と資源に対する考え方が随分変わったような気がしています。大迫さんはどのようにお感じでしょうか。

大迫さん― 私が廃棄物の研究分野に入ったのは1991年ですから、30年に少し届かないくらい前のことです。大学院生の時は衛生工学を専攻していたのですが、実は感覚公害【1】、つまり悪臭の研究をしていました。1991年に大学院を修了し、国立公衆衛生院【2】という旧厚生省の研究所に入ってから廃棄物の研究を始めました。
その当時は、さまざまな廃棄物が、経済的な発展とともに種類も量も増えていました。さらに産業が発展する中で、産業から出てくる廃棄物の問題も大きくクローズアップされました。どういう形で現れたかというと、経済優先で廃棄物のことまでなかなか考えずに生産と消費がなされたため、最終処分場のひっ迫と、大量に出てきた廃棄物が不法投棄される事案が多く出た時代だったのです。それと同時に、ちょうどダイオキシンの問題が注目を集めたときでした。これらの課題をどうやって解決していくか、言い換えると、廃棄物の適正処理の側面が一番大きかった時代でした。
1990年代後半になると、ごみの量が増えてきた中で、私たちの生活から出てくる容器包装が問題視されはじめます。1995年には容器包装リサイクル法ができ、ごみを減らすこと、リサイクルすることに関心が高まってきました。2000年代に入ると、循環型社会形成基本法ができ、そのもとで各種リサイクル法も制定され、循環型社会への取り組みが本格化したのです。

大塚― 大迫さんが最初に取り組まれたダイオキシンの問題は、どちらかというと原因がわかりやすく、結果として被害の範囲も明確だったのに対し、だんだん問題が複雑化してきて、つかみどころが難しくなったのではないかと思います。

大迫さん― 確かに1990年代には、研究のターゲットも明確で、その解決のための技術開発や法制度の検討も比較的わかりやすかったと思います。それが循環型社会形成となると、まず私たち自身が、消費の問題を考えて、環境にやさしくリサイクルしやすい製品を買ったり、なるべくごみを出さないように行動様式を変えたりすることが求められるようになってきました。そして、産業界でもなるべくリサイクルしやすい、あるいはごみを出さないような製品を作るなど、世の中全体で生活や産業のあり方自体を変えていかなければならない時代になったのです。研究としてもなかなか難しい状況になっているように思います。
そうした中で、2000年代以降には、リサイクルの問題とともに、地球温暖化の問題がすごくクローズアップされてきましたし、一方では、生物多様性の名古屋議定書が2010年に採択されるなど、自然共生の問題もクローズアップされてきました。循環型社会づくりは、リサイクルや廃棄物処理だけでなく、脱炭素や自然共生に向けた課題と同時に解決していかなくてはならない取り組みになったのです。最近では、SDGsが重視され始めたように、さらに広がって、社会経済的な側面にも配慮しないといけないようになってきたと理解しています。

大塚― ある意味では、向かうべき方向に向かっているようにも思いますが、実際に対策等について考える立場の大迫さんからすると、ターゲットを絞ったり順序立てて研究を進めるのが大変だと思います。

資源循環・廃棄物研究センターの研究概要イメージ(「第3期研究計画期間(2011-2015)」の表紙より)

資源循環・廃棄物研究センターの研究概要イメージ(「第3期研究計画期間(2011-2015)」の表紙より)


若い研究者たちが、問題の発掘・抽出を机上からではなく、現場で聞き取りをする中で整理していった

大塚― 今日主にお伺いする、循環型社会づくりの突破口としての高齢者のごみ出し支援の研究は、国立環境研究所としてはユニークな取り組みではないかと思います。現場でかじ取りをされている大迫さんは、この取り組みをどのようにとらえておられますか。

大迫さん― 高齢者のごみ出し支援の研究は、私たちにとってもとてもチャレンジングなテーマでした。われわれはいつも現場の問題に目を向けていこうというスタンスで臨んでいますが、現場で、少子高齢化が社会の中で顕在化してきた問題の一つということを肌で感じていました。
こうしたチャレンジングな研究を進めていくには、若い研究者たちからボトムアップでいろいろな提案をしてほしいという思いがあり、研究センターの中に、少額ですが自由に予算を使える「若手グループ研究制度」という制度を作りました。研究センターにはいろいろな分野の人たちがいるので、一人ではなくグループを作って、その中で刺激し合いながら、研究者同士のつながりの醸成も含めた枠組みにしたのです。

大塚― ボトムアップの発想を重視するのが鍵だったのですね。

大迫さん― その中で、これからの超高齢化社会の中でごみ問題にどう影響してくるのかを提案してきたグループがありました。つくば市に森の里団地という、かつて新興団地として開発されたかなり広い地域があるのですが、年数が経って住民は高齢化してきました。その団地の人たちに協力していただいて、80世帯くらいからごみを集めて、高齢者のごみの出し方が普通の家庭とどう違っているのか、1回当たりの量や組成について、ごみ袋をすべてあけて調査したのです。例えば、ごみの中に在宅医療の点滴器具が入っていたこともありました。そういうごみの中身の変化から、何か見いだせないかというわけです。
住民の方に協力していただいてアンケート調査も実施しました。その中で、年齢とともに、特に75歳を超えた後期高齢者の方たちが、ごみを出すことに対して、かなり身体的にしんどいという問題も出てきました。実は、森の里団地ではわずかな手数料を取って、高齢者世帯のごみを自治会の人たちが取りに行って、集積所まで出すという取り組みを実施しておられました。そうした「共助」というコミュニティ内で取り組まれている活動があることを知り、では全国的にこういった取り組みをどうやったら広げていけるのか、あるいは今現在はどういう実態になっているのか、全国の市町村にアンケート調査を実施したのです。

大塚― 先ほど大迫さんが、環境の研究は現場を見ることが大事だとおっしゃいましたが、この若手グループの方たちが、森の里団地でいろいろなことを理解したプロセスがそうなのですね。

大迫さん― そうです。若い研究者たちが、いろいろな問題の発掘・抽出を机上からするのではなく、実際に現場に行って聞き取りをする中で、どういうふうに研究を進めていくべきかも整理していったのです。本当に、若い人たちの肌で感じたことから出発した研究でした。

大塚― それから、今おっしゃられたように、調査結果をベースに全国展開まで広げていくことになったのですね。

大迫さん― そこに至るまでには2年くらいの研究が必要でした。
1年目は森の里団地の現場でさまざまな問題を抽出しました。それらは全体の中のある氷山の一角かもしれませんが、そこから全国の実態調査をすることを通して、行政において、あるいは地域レベルでもできることをできるだけ一般化して、全国に向けて今後の方向性を示せないかと取り組んだのです。

大塚― 先ほど、センター内にいろいろな専門分野の方が集まっているとのことでしたが、そのグループには社会科学の研究者もおられたのですか。

大迫さん― そうですね。5〜6人くらいのチームでしたが、半分は社会科学の研究者たち、残り半分が工学系の研究者でした。社会科学の方々は、アンケート調査や聞き取り調査結果を整理して背景となる問題を理解し、制度・ルールの在り方と関連づけていきましたし、工学系の方々は、実際にごみを集めて組成調査などをして、データを積み上げながら実態を明らかにしていきました。違う分野の人たちが協力して、違う観点でのいろいろな気づきを相互に持ちながら進めていったという感じです。

高齢者のごみ出しを巡る課題(「高齢者ごみ出し支援ガイドブック」より)

高齢者のごみ出しを巡る課題(「高齢者ごみ出し支援ガイドブック」より)
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高齢者ごみ出し支援の概要(「高齢者ごみ出し支援ガイドブック」より)

高齢者ごみ出し支援の概要(「高齢者ごみ出し支援ガイドブック」より)
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時代のニーズに合った、ガイドブックという形で情報提供できたのは、研究所としては新しい試みだった

大塚― 全国展開につなげていった時の状況についてもご紹介ください。

大迫さん― 全国すべての市町村にアンケート調査を実施しました。すべて回収できたわけではありませんが、回収した自治体での取り組みをいろいろな項目について整理すると、今現在、ごみ出し支援を、行政が何らかの形で施策としてやっているところが2〜3割ありました。思っていたより多いという感覚もありましたが、実際に高齢者のごみ出しに問題意識を持っていますかという質問には、ほとんどの自治体が支援が必要という回答でしたから、それからすると2〜3割というのはまだまだ少ないといえます。

ごみ出しに困難を抱える高齢者が多くいると思うか(自治体類型別)(「高齢者ごみ出し支援ガイドブック」より)

ごみ出しに困難を抱える高齢者が多くいると思うか(自治体類型別)(「高齢者ごみ出し支援ガイドブック」より)
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高齢者ごみ出し支援制度を設けているか(自治体類型別)(「高齢者ごみ出し支援ガイドブック」より)

高齢者ごみ出し支援制度を設けているか(自治体類型別)(「高齢者ごみ出し支援ガイドブック」より)
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では、何が課題かというと、「やり方がわからない」「人員が不足している」「予算的に難しい」といった問題を抱えていることがわかってきました。だったら、先進的な事例をさらに詳しく調べ、一般化してまとめたものを、全国の自治体にガイドブックとして出すのがいいという結論になり、アンケート調査の後で、先進事例の聞き取り調査を行い、ガイドブックとしてまとめました。さらに自治体の事例集も作成し、それらをホームページでも公開し、広く普及することを目指して進めています。
多くの自治体から問い合わせをいただいています。また、マスコミにも取り上げていただき、反響も小さくありませんでした。時代のニーズに合ったテーマに対し、論文だけでなく、ガイドブックという形で情報提供できたのは、研究所としては新しい試みだったと思います。

高齢者ごみ出し支援ガイドブック(平成29年5月31日公開)

高齢者ごみ出し支援ガイドブック(平成29年5月31日公開)

高齢者ごみ出し支援事例集(平成29年8月30日公開)

高齢者ごみ出し支援事例集(平成29年8月30日公開)


大塚― いろいろなことがあったと思いますが、大迫さんが特にポイントだったと感じておられることをご紹介ください。

大迫さん― 1つは、先ほど申し上げたように、論文だけでなくガイドブックという形で広く社会に提供し、自治体の人たちの求めに応えられたことです。
もう1つは、地域コミュニティの活力や行政の役割に関することです。高齢者ごみ出し支援は、もともとの問題意識が少子高齢化に端を発していたとはいえ、それとともに、個人主義が進むことで住民同士のつながりが薄くなり地域コミュニティが衰退している中で、行政のコーディネーターとしての機能がどうあるべきかという問題を意識していたからです。

これからのごみ問題は、地域の協働によって解決し、循環型社会に向けてやっていかなくてはならない

大塚― 問題に具体的に取り組む中で、地域コミュニティの特徴がより深く見えてきたということでしょうか。

大迫さん― 自助・公助・共助と言いますが、これからのごみ問題は、地域の協働によって解決し、循環型社会に向けて進んでいかなくてはならないわけですから、やはり共助の力をもっと大きくすべきではないかと私は考えています。ごみ出し支援の研究を通じて、共助というか、地域のコミュニティのつながりを強固にしていく取り組みも、少しずつ出てきていると感じたことが1つの発見でした。
森の里団地と同様に、新潟市でも地域コミュニティが主体でごみ出し支援を行っていますが、新潟市ではその取り組みを行政が支えています。もともと地域のつながりを持っているところでは、共助による近所の人たちの支援活動に対し、行政が補助的・財政的な支援をする「コミュニティ支援型」が機能しているのです。
一方、「無縁化社会」で個人のプライバシーが重視され、近所に助けられることを嫌がる人たちも多くおられる場合には、収集員がごみ出しを支援する、行政による「直接支援型」もあります。大きく分類して2つのタイプが存在することも、私たちの発見でした。

大塚― 今おっしゃられた「公助」と「共助」については、地域ごとに、コミュニティの歴史も含めて特徴があるわけで、それを行政が十分理解するかということでもあるわけですね。

大迫さん― そうですね。私たちのもともとの仮説としての理想は、共助をどうやって促進するかだったわけですが、地域・地域の状況というか、各地域にいろいろな文脈があるので、現在では、どうしていくべきかとの問いへの答えは、それぞれの地域に存在しているということになると思います。
政令市などの大きな都市で、地縁関係が薄い場合には、やはり行政が直接支援していく方が適していると思います。一方で、新潟市のような豪雪地帯では、冬場に高齢者宅の屋根の雪降ろしを隣近所で助け合うという地域コミュニティのつながりがもともと強いのです。そうしたベースがあるから、それを活かして、共助という形の制度を取っていたのです。

ごみ出し支援における「直接支援型」と「コミュニティ支援型」(「高齢者ごみ出し支援ガイドブック」より)

ごみ出し支援における「直接支援型」と「コミュニティ支援型」(「高齢者ごみ出し支援ガイドブック」より)
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新潟市ごみ出し支援事業の事業イメージ(出典:新潟市)

新潟市ごみ出し支援事業の事業イメージ(出典:新潟市)
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大塚― 具体的な状況をよく理解することが大事なポイントになるのですね。

大迫さん― 「地域力」を促していくことは重要なのですが、そのきっかけをどう作っていくかが難しいところかと思います。
新潟市の場合には、もともと小学校の単位で地域コミュニティの協議会が作られ、その中で、ごみの減量化をがんばっている人や、高齢者対応の介護・福祉関係の活動をしている人たちが協力しながらいろいろな取り組みをしています。そのような母体になる協議会が作られ活動するには、行政側のコーディネート力が大事なポイントになると思います。
そのためには、行政の中に、地域でコーディネート力を発揮できる人材を育てなければならないと思いますね。

これまで環境の分野では扱ってこなかったような問題と同時に解決していくようなアプローチが必要

大塚― いろいろとお話を伺っていて感じるのですが、高齢者のごみ出し支援という具体的なテーマを追いかけていく中で、循環型社会あるいは持続可能な社会を作ろうという方向性も出てくるということでしょうか。

大迫さん― そうですね。循環型社会は、ダイオキシン問題のように、対症療法的に規制という手段を用いて対応できるものとは異なります。私たちの社会のありようを変えていく、ライフスタイルや私たちの価値観の転換に向けた取り組みだと思います。最近よくトランジション・マネジメント【3】という言葉が使われますが、トランジション・マネジメントをどう設計していくかが重要になると思います。
ごみ問題を取り上げても、人それぞれといいますか、個人があり、家庭があり、地域コミュニティがあります。その地域コミュニティも個人化・無縁化しているような場合など、個別の課題がたくさんあります。さらに、背景には高齢化の問題もありますし、自治体には財政難や人手不足の問題もあります。これらのさまざまな社会背景が、相互に関係しあっているのです。
高齢者のごみ出し支援問題は、福祉にも大きくかかわっており、福祉部門とも連携して解決していくことが必要になってくるわけです。これまで環境分野では扱ってこなかったような問題と同時に解決していくようなアプローチが必要になると考えています。
さらに、SDGsに見られるように、多様な価値があり、それぞれの課題で問題解決を目指す人たちがおられるので、相互に連携・協働してさまざまな問題の同時解決を目指すことが必要になると思います。

大塚― 今おっしゃったように、個人がいて、家庭があり、地域コミュニティがあり、そして行政があるということで、その連携には、ボトムアップとトップダウンの視点が影響しあうかと思いますが、大迫さんはどうお考えですか。

大迫さん― 私は、今後はボトムアップが大事になるだろうと思っています。トップダウンで進めると、個別のいろいろな課題が薄まってしまい、全体としての最適解を求める方向だけになってしまいます。国の政策のようにトップダウン的な判断が必要になることがあるとしても、これからは地域・地域が自らボトムアップの発想で、自分たちに合った解を見つけていくことが何といっても重要だと思います。
今まで、われわれ研究者、特にシステム工学分野などの研究者は、システム思考でいろいろなことを考えてきました。しかし、最近よく言われように、これからはデザイン思考で、地域ごとに、自分たちがいいと思う個別の解をボトムアップ的に追求していくようなアプローチが求められているのです。
繰り返しになりますが、行政や研究者が、システム思考で問題を要素に分解し、いろいろな関係性を理解してある程度問題を解決しても、具体的な課題の推進力は、地域のいろいろな主体が協力し自分たちでデザインし展開する取り組みから生まれてくると思うのです。

ごみ出し支援に係わる高齢者福祉分野の主体(「高齢者ごみ出し支援ガイドブック」より)

ごみ出し支援に係わる高齢者福祉分野の主体(「高齢者ごみ出し支援ガイドブック」より)
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科学的知見を生み出し、集積している研究所自身が、環境教育に対してどういう貢献ができるか

大塚― 最後になりますが、EICネットをご覧になっている皆さまに向け、大迫さんからの個人的なメッセージをいただきたいと思います。

大迫さん― 私が常日頃考えていることをお話しさせていただきます。少し使い古されて陳腐化してきている言葉かもしれませんが、「環境教育」を大事にしなければいけないと、私は強く思っています。
教育には“3つの教育”があるといわれています。1つ目がフォーマル教育といわれる学校教育。2つ目がインフォーマル教育で、これは家庭や地域コミュニティの中でのしつけも含めた教育を指します。そして3つ目がノンフォーマル教育といい、例えば、ごみ焼却施設の中にある環境学習の施設や、地球温暖化の情報提供をしている施設などを活用した教育です。これら3つの教育を、今後いかに連携させていくかが重要になると考えています。EICネットは、それらの三つの教育をつなぎ連携を支援することができると思います。正確でわかりやすい情報を発信して、環境教育にどのように価値を提供できるかは重要で、期待もしています。
もう1つは、私が勤務している国立環境研究所を含む研究所が何をどう発信していくかに関わっています。今日お話しした高齢者ごみ出し支援は、私が勤務しているセンターにおける若手グループ研究制度の中で行われているテーマの1つです。そしてもう1つの育てていきたいテーマが、実は環境教育なのです。
科学的な知見を生み出し、集積している研究所自身が、環境教育に対してどういう貢献ができるかを検討しています。例えば、防災教育にも関わりますが、災害廃棄物などをテーマにした研修ツールや研修プログラムの開発をしています。それらの成果物をできるだけ広く一般化して、アクティブラーニングのコンテンツを作り、発信していますが、情報を扱うEICネットなどと連携して提供していけたら、効果的な普及啓発効果も期待できると思っています。

大塚― 私自身も、環境に関する広い意味での教育の重要性を強く感じています。ごみ出し支援ももちろんですが、取り組まれている環境教育の研究の成果が出ることにも期待しています。今日は、具体的な研究活動の紹介から循環型社会へのアプローチなど、いろいろと示唆に富むお話をいただき、本当にありがとうございました。

国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター センター長の大迫政浩さん(右)と、一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長の大塚柳太郎(左)。

国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター センター長の大迫政浩さん(右)と、一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長の大塚柳太郎(左)。


注釈

【1】感覚公害
 ヒトの感覚を刺激して、不快感やうるささとして感受されるものの総称。具体的には、悪臭、騒音、振動などがあげられる。
【2】国立公衆衛生院
 国立公衆衛生院は、日本の公衆衛生の向上を目的とした旧厚生省所属の調査研究機関で2002(平成14)年に改組・廃止された。その多くの組織は他の機関とともに厚生労働省に属する保健医療科学院に移行している。一方、2001年の省庁再編の際に廃棄物行政が環境省に一元化され、旧国立公衆衛生院の廃棄物工学部の研究内容は国立環境研究所に新設された廃棄物研究部に移行した。
【3】トランジション・マネジメント(transition management)
 最近提唱され始めた考え方で、持続可能性を視野に入れた社会への転換を目指すにあたり、制度面・組織面などのさまざまなレベルでの移行管理を対象に、多様なボトムアップの発想を戦略的に利用する実践的な理論で、「1回の出来事として変化する」のではなく、「常に変化し続ける」ことを重視する点にも特徴がある。トランジションには、「推移」「変遷」「移行」「過渡期」などの意味がある。