一般財団法人環境イノベーション情報機構
首長に聞く!自治体首長に、地域の特徴や環境保全について語っていただきます。

No.005

Issued: 2019.10.21

第5回 愛知県犬山市・山田拓郎市長が語る、“犬山には日本がある”

聞き手:一般財団法人環境イノベーション情報機構 理事長 大塚柳太郎
ゲスト:山田拓郎(やまだたくろう)さん

  • 昭和48年4月1日、犬山市愛宕町生まれ。
  • 名古屋経済大学経済学部卒業。
  • 民間企業での勤務、愛知県議会議員秘書、犬山市議会議員などを経て、平成26年11月より犬山市長。現在2期目。
  • 好きな言葉は、「信なくば立たず」「義」。
目次
犬山市の特徴として3つのポイントがある
正直に、丁寧に、本気で向き合うという姿勢をずっと大事にしてきた
環境といっても非常にさまざまな観点があって、さまざまな課題を見据えて展開していくことを想定している
「クオリティを落とさずに儲かる省エネ」を展開
20年以上懸案事項になっていた問題を解決することが、何よりも、市民生活にとって重要
地域間の「キョウソウ」は、競って争う「競争」よりも、協力してともに新しい価値を創造する「共創」

犬山市の特徴として3つのポイントがある

大塚理事長(以下、大塚)― 本日は、EICネットの「首長に聞く!」にご登場いただきありがとうございます。
さっそくですが、犬山市の紹介からお願いしたいと思います。犬山市は、西北部に清流・木曽川が流れ東部には丘陵地帯が広がっており、日本最古で国宝になっている犬山城、360年余におよぶ歴史をもつ犬山祭、340年余の伝統を誇る鵜飼いなどの歴史文化とともに、明治村やリトルワールド、日本モンキーパークなどのエンターテインメント施設もあり、調和のとれた日本屈指の観光都市として知られます。市長の目から見た、市の特徴について、お話しいただけますでしょうか。

山田市長― 特徴として3つのポイントがあると思います。1つは、市全体が地域資源の宝庫という点。それから、2つ目が、交通アクセスが非常にいいという点。3つ目が、地域コミュニティと言ってもいいと思いますが、地域の人のつながりがとてもしっかりしていることです。
地域資源が市内全域で豊富というのは、先ほど大塚理事長におっしゃっていただいた通り、犬山城や犬山祭、明治村やリトルワールドなどももちろん、それ以外にも桃太郎神社や入鹿池、大縣神社など、市の全域にわたって、伝統文化を含めた地域資源にあふれていることですね。たとえば、入鹿池は17世紀初頭に、日本人あるいは日本文化の原点ともいえる水田を開墾するために台地に作られた大きな人工の池なのです。また、国宝の建築物は愛知県内に3つありますが、そのうちの犬山城と如庵という茶室の2つが犬山市内にあるのです。

大塚― 素晴らしいですね。

山田市長― 実は、文字通り世界に誇るものが3つございます。一つは世界無形文化遺産の犬山祭、もう一つは世界灌漑施設遺産になっている入鹿池、それから先ほどあげていただいたモンキーパークに併設されている日本モンキーセンターは、世界中で最も多くの種類のサルが飼育されている施設なのです。

大塚― 犬山祭は、山車の曳き回しが有名ですが、山車は「山」「鉾」「屋台」から成り、その起源は日本の山岳信仰ともつながる民間信仰を受け継いでいるのですね。犬山祭りや入鹿池が自然と調和的な伝統文化として、世界無形文化遺産あるいは世界灌漑施設遺産として認められていることは、犬山市の人びとに限らず日本として誇れるものですね。また、犬山市を流れる木曽川で行われている鵜飼いも、日本の伝統文化を強く感じますね。
ところで、先ほどおっしゃられた2番目、3番目の特徴についてもご説明ください。

山田市長― 2つ目の交通アクセスについては、ご承知のように名古屋鉄道の犬山駅をハブ駅として、名古屋方面に行く路線が2つ、岐阜市や可児市に向かっていく路線が2つあり、交通の要衝になっています。道路も、国道41号線が通っていますので、都市部へのアクセスも非常にいいですね。
3つ目の人のつながりや地域コミュニティについては、犬山祭などのお祭りを筆頭に、地域行事が大変活発なことに表れているのですが、人のつながりが非常に密なのが犬山の特徴ではないかと思います。

大塚― 多くのことをコンパクトにお話しいただきました。地域コミュニティのことを強調されましたが、地域コミュニティがなんといってもこれからのキーワードだと思っており、今の市長の紹介は本当に素晴らしいと思います。


犬山城

犬山城

犬山祭(山車)

犬山祭(山車)

犬山祭(夜山車)

犬山祭(夜山車)

入鹿池

入鹿池

木曽川の鵜飼い

木曽川の鵜飼い

正直に、丁寧に、本気で向き合うという姿勢をずっと大事にしてきた

大塚― 少し視点を変えて、市長ご自身についてお伺いさせていただきます。
山田市長は犬山市のご出身で、名古屋経済大学を卒業されてから、民間企業での勤務、県議秘書などを経て、20歳代半ばだった平成11年4月から、犬山市議会議員を4期務められました。その後、平成26年11月より第7代犬山市長としての責を負われています。
いろいろなことを考えられ市長になることを決意されたと思いますが、市長として目指されていること、あるいはモットーについてお話しいただければと思います。

山田市長― 私は平成11年4月に市議会議員になりましたから、政治家になって、今年はちょうど20年の節目の年になるわけです。
私は政治家のモットーとして、「信頼」ということを一番大事にしてきたつもりです。政治も行政も、信頼が一番の基本だと思います。当たり前のようですが、その当たり前のことが当たり前にできることで、当たり前以上の仕事につながると思っています。正直に、丁寧に、本気で向き合うという姿勢をずっと大事にしてきました。
これを裏返して言うと、逃げない、隠さない、ごまかさないということだと思います。特にこれからの時代に、これらの当たり前のようなことが基本になりますから、私もしっかりと軸足を置いて、市政運営、また政治家としての自分の活動をやりとげていきたいと考えています。
市政に対する思いということでは、2つの側面を大事にしています。第一に、持続可能な街になるための基盤を作ることが、私の使命だと思っています。それに加えて第二に、新しい価値を創造する力が求められていると考えています。われわれの施策展開に関わりますが、市役所という組織そのものが、決められたことをルーティンワークでやっていくというよりも、新しい価値を生み出していくべきだということです。
ご承知のように今、情報化、グローバル化、そしてスピード化ということで非常に目まぐるしく変化する時代です。この数年間を見ても、変化の目まぐるしさがますます顕著になってきています。そうした中で、私たちは価値を創造して、その中で持続可能な街を実現しようとしているわけで、その基盤をしっかり作っていくのが私の使命だと思っています。

大塚― ありがとうございます。これからの地域社会を作り上げていく上で、大事にしなければならないことをストレートにお話しいただいたと思います。


環境といっても非常にさまざまな観点があって、さまざまな課題を見据えて展開していくことを想定している

大塚― 具体的な環境施策についてお伺いします。犬山市では、環境基本計画の改定作業を進めているとお聞きしていますが、市長が今おっしゃったように、持続可能性や創造性といったことを含めてお考えだろうと思います。また最近では、SDGsなど新しい概念も出てきておりますが、改定にあたってのビジョンについてお話しいただけないでしょうか。

山田市長― 犬山は自然が豊かなため、これまでの環境基本計画では自然環境に関することへのウェートが大きかったように思います。それはそれで良かったのですが、これからは、省エネやごみ、公害の問題、それと今ちょうどホットな議論になってきたプラスチック問題、また環境基本計画に直接関わらない部分もあるものの、空き家・空き地を含む住環境問題など、さまざまな課題に対応することが求められているのです。さらに、食品ロス問題のように、環境といっても非常にさまざまな観点からさまざまな課題が出てきていますので、これらを見据えて展開していくことを想定しています。
環境基本計画は、当然ですが、計画を作ることが目的ではなくて、あくまでも策定を一つの弾みにして展開していくことが目的ですので、そのためには人が大事だと私は考えています。具体的な展開を担う人たちです。犬山市でも、そうした担い手の方たちが固定化したり高齢化したりという側面があるものですから、幅広く人が関わり参加するという、人のネットワークを改めて再構築することが重要な時期になっていると思っています。先ほど申し上げた持続可能な街づくりという点でも、担い手の掘り起こしが重要なのです。
それからSDGsですが、ご承知のようにSDGsは環境だけでなく非常に多分野にわたるため、環境基本計画に加えて、子育てや福祉など市のさまざまな基本計画の中に、SDGsの理念を落とし込み、市をあげて取り組んでいこうと考えています。

大塚― 山田市長の一貫したお考えがよくわかります。ところで、環境基本計画つくりはどのような段階にあるのでしょうか。

山田市長― 昨年度に今までの達成状況などの検証を終え、今年度から具体的な改定作業に着手しています。先ほど申し上げたように、担い手が非常に重要なものですから、できるだけ市民の皆さんに改定のプロセスにご参加いただきながら、成文化につなげていく予定です。


環境基本計画タウンミーティング市長あいさつ風景

環境基本計画タウンミーティング市長あいさつ風景

「クオリティを落とさずに儲かる省エネ」を展開

大塚― 犬山市では環境にかかわるさまざまな施策を展開され、再生可能エネルギーの活用や施設のLED化なども積極的に進めておられています。その中で、市長のお考えに深くかかわるかと思いますが、持続可能な地域社会という視点に立った再生可能エネルギーの利用についてお話しいただけますか。

山田市長― 再生可能エネルギーの活用は、これからの日本のエネルギー政策を考える中でも特に重要ですから、地域としてもできるところからしっかりと進めていきたいと考えています。われわれも、環境省が行っている二酸化炭素排出削減の補助事業というインセンティブを得て、再生可能エネルギーの利用拡大を実施してきました。国の補助事業は、基礎自治体の施策展開を図る上で非常にありがたいと思っています。
再生可能エネルギーの利用に関連して、私が特に重要と考えていることがあります。それは、「がまんする節電」ではなく、生活のクオリティを落とさずにしっかりと省エネをする、しかも省エネをすることによって暮らしを豊かにすることです。犬山市では、「クオリティを落とさずに儲かる省エネ」を展開しています。

大塚― LEDの例などはまさにそうだと思います。

山田市長― そうですね。そうした中で、先ほどからの話とリンクしてくるのですが、結局、われわれ役所が積極的に取り組むのはもちろんですが、市民の方々にもパワーを発揮していただき、官民連携で取り組んでいくことが非常に重要だと思っています。省エネでも、犬山市では、省エネ講座を市民向けと業者向けに行っています。ちょっとした工夫をすることで、市民の皆さんにとっては家計の負担が少し軽くなりますし、企業の皆さんにとっても収益につながり、なおかつ環境にもやさしいという展開を実現していきたいのです。


20年以上懸案事項になっていた問題を解決することが、何よりも、市民生活にとって重要

大塚― ごみの問題は、プラスチックに限らず本当に大変で、地方自治体にとっては一番身近な問題だと思います。犬山市では2022年度の着工をめざして、新たな広域ごみ処理施設の建設計画を作っておられるとのことですが、計画の理念や内容についてお話しいただけますでしょうか。

山田市長― ごみ問題は、言うまでもなく、生活にものすごく密接に関わる問題です。犬山市でもごみの分別に関しては、各町内会さんにご協力をいただき、ごみの減量に取り組んでいるところです。ただ、可燃ごみを処理する場所、いわゆるごみ処理施設の整備で、20年以上も迷走を続けてきたのです。つまり、建設地をどこにするかが決まらなくて、大きな政治的な懸案事項になっていたのです。

大塚― 他の地域でも、同じような問題が起きているケースがあるようですね。

山田市長― これは自慢して言うわけではないのですが、山田市政になって、何とかこの建設地を決定することができました。今のごみ処理施設は犬山市単独のものですが、新しい施設では、犬山市を含む近隣2市2町(江南市、大口町、扶桑町、犬山市)の広域処理を行い、建設地は江南市ということで合意を得たのです。20年以上も懸案になっていた問題を解決できたことが、何よりも、市民生活に大きな安心をもたらしたと思います。現在、用地取得や環境アセスなどの作業を行っており、令和4年に着工、令和7年に供用開始予定で進めています。
この機会に、ごみの処理方式や経費の検討とともに、ごみの分別のあり方なども改めて考えていくことが大事だと思っています。

大塚― いろいろなご苦労があり、今後もあろうかと思いますが、広域ごみ処理施設の一つのモデルケースとして、ぜひ他地域にも波及するようなシステムを作っていただきたいと思います。


地域間の「キョウソウ」は、競って争う「競争」よりも、協力してともに新しい価値を創造する「共創」

大塚― 最初にお話しいただいたように、犬山市は豊かな自然環境に恵まれていますが、今後の利活用について市長がお考えになっていることを紹介いただけますか。

山田市長― 1つの例をあげると、犬山の豊かな自然環境を活かそうと、里山地区の遊歩道の整備や木曽川の河川空間の活性化などに取り組んでいるところです。
その考え方として、自然を知る・親しむ、あるいは自然とともに生きる場にしたいということと、もう一方で、里山の遊歩道や河川空間のインフラ整備の側面だけでなく、そこに関わる人たちの活躍の場づくりが重要だと思っています。ですから、市民参加や担い手づくりに特に力を入れています。
自然に親しむということを大事にしながら、市民の方はもちろんですが観光の面も含めて、犬山の特徴である自然を活かした計画を進めています。特に力を入れたいのは、都会からも非常に近いですから、“都会に近い田舎”というイメージで、これからも住み続けたい、あるいは住んでみたい、訪れてみたいという気持ちにつながる展開にしていきたいと考えています。

大塚― 観光が盛んなことは、もともと犬山市の一つの特徴で、外国からの観光客たちも目ざとくなり犬山をよく訪問するとも聞いています。外国人に限るわけではありませんが、ほかの地域からのお客様に対し山田市長から一言お願いします。

山田市長― 最初にも申し上げたように、犬山は、市全体が地域資源の宝庫です。いわゆる歴史・伝統文化から、自然も含む資源が豊富にあるわけです。これはすなわち、「日本人とは何ぞや」、あるいは「日本とは何か」が、犬山の中に凝縮されているといえると思います。ですから、海外の人もそうですし、日本人にとってもそうですが、もう一度、日本や日本人を再認識する意味で、この犬山にある地域資源を見ていただきたいと願っています。
ぼくは「犬山には日本がある」というくらい魅力がギュッと凝縮されていると思っていますので、ぜひ日本を感じていただくためにも犬山にお出かけいただきたいのです。ぜひ、お出かけください!

大塚― 犬山市を訪れる方々へのメッセージをいただいてしまいましたが、最後に、他の地域の方々への発信を含めて山田市長からのメッセージをお願いしたいと思います。

山田市長― そうですね。今、地域間競争ということが言われる中で、基礎自治体の施策展開が重要になってきていると思っています。地域間の「キョウソウ」は、競って争う「競争」よりも、協力してともに新しい価値を創造する「共創」というのが、これからは非常に重要になると思います。お互いの持っているものを掛け合わすことによって新しい価値が生まれたり、あるいは政策も、自分のところの行政区の範囲の中だけで考えたりするのではなく、もう少しスケールメリットを出して施策展開をする方が、いろいろな意味で大きな効果が発揮できると思います。共創の考え方でわれわれが力を合わせれば、必ず、日本はこれからも持続していくと思いますし、大きな力を発揮できると思っています。

大塚― 山田市長から、これからの日本が進むべき方向の核になる部分についてお話しいただいたと思います。本日はどうもありがとうございました。


犬山市長の山田拓郎さん(左)と、一般財団法人環境イノベーション情報機構理事長の大塚柳太郎(右)。

犬山市長の山田拓郎さん(左)と、一般財団法人環境イノベーション情報機構理事長の大塚柳太郎(右)。